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航空機搭載潜水艦伊400最後の出撃  作者: 飛龍 信濃
呉空襲 連合艦隊の終焉
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第69話連合艦隊の終焉13

だんだん、被害が積み重なっていきます

「撃ち続けるんだ!奴らに榛名をやらせるな!」

敵のヘルダイバーが、迫ってくる。その数3機。

榛名の激減した左舷側の対空砲火では、防げるものではなかった。

いや、全開だったとしてもこの時代の対空火器では防ぎきれなかったろう。

むしろ序盤で敵が、単機もしくは2機で時間差を置いて、五月雨方式に突っ込んできたため対空砲火を1機に集中させることが出来た。

しかし、今は3機が殆ど同時に迫ってきており、しかも対空火器が激減しているのだ。

これでは、いくら熟練した乗員でも防ぎ得ないであろう。

そうこうしている間にも、敵は迫って来る。

「ここでやられるわけにはいかないだろ!」

「分かってまっせ。ただ機銃の数が減りすぎですよ。しかも中央部が集中的にやられてるので、カバーする事も難しいんです!」


「一番乗りだぜ!」

そう叫び、突っ込んで行く。

敵の対空砲火にさっき迄の迫力がない。やはり、だいぶダメージが溜まってるみたいだな。

「そんなんでやられるかよ!」

機の周囲を散発的に、アイスキャンデーが飛んでくる。

アイスキャンデーとは、曳光弾の事である。

だが落とされる。という恐怖を感じるほどのものでは無かった。


「畜生。」

射撃指揮官が冷たい汗を流しながら言った。


「1000」

今のとこ全くと言っていいほど、敵弾は当たっていない。

「このままなら、いけるぞ!」

「800」

あと少しである。


榛名艦上では、応急班員の対比が急がれていた。

彼らをやられてしまうと、艦の復旧措置がかなり遅くなってしまうし、慣れてない乗員がやっても上手くいかないであろうからだ。

「急げ!もうすぐ投下しちまうぞ!」

「分かってるよ!」

「対空砲は何やってるんだ!」

「あいつらがしっかりやってくれていれば、良かったのに。」

敵機を落とせない、機銃群への不満が噴出してくる。

だが、今は逃げる事が先決である。

「お前らも逃げろ!」

射撃指揮官が、弾着位置付近の機銃員に言った。

「まだやれます!」

「もう落とせない。それに落としたとしても、敵機が突っ込んでくるかもしれん。今逃げないと、生き延びられないぞ!」

「覚悟はできてます!」

「お前らを無駄死にさせるわけにはいかないんだ!分かってくれ!」

「分かりました・・」


「投下!」

無事に、投下高度にたどり着けたぜ 。

投下と同時に浮き上がろうとする機体を、押さえ込みながら、反対弦に抜けていく。


「爆弾投下!」

その見張り員が言い終わる前に、着弾の瞬間が来た。

激しい振動とともに、榛名の艦体がきしむ。

その場にいた、機銃員や射撃指揮官、応急班員が吹き飛ばされ、海の藻屑になった。

さらに、爆弾は再びタービン室で炸裂し、タービンの残骸を吹き飛ばした。

その爆圧によって、弦側に大穴が開いた。

それにより、榛名への浸水が一気に加速した。

しかし、隔壁自体は生き残っていたため最終的に注排水の甲斐あり、7度程度の傾斜で収まり、着底することはなかった。

運がいいことに、爆圧は全て弦側に開いた穴から外に逃げていたのだ。

さらに、もう1発が命中した。

もう1機は外したため、今回の攻撃で受けた榛名の損害は、500キロ爆弾2発であった。

もう1発の爆弾は、若干後方にずれ第3砲塔に命中していた。

しかし、36センチ砲弾の直撃に耐えうるように作られていたため、水平爆撃はともかく、緩降下爆撃では貫通できなかった。

そのため、表面が焼け焦げているものの、被害はなかった。

それが功を奏して、榛名は浮かんでいた。

「急げ!転覆するぞ!」

「注水用意!」

艦長が叫んだ。

右舷側に注水することによって、乾弦は低くなるが、傾斜を治そうということである。

傾斜を止められれば、転覆することはない。


「畜生!」

迂闊だったぜ、右舷側にも対空火器があったのを失念していたぜ。


「撃てー!」

衝撃が収まるのを待たずに、射撃指揮官が叫んだ。

その合図とともに、右舷側に備え付けられている、12、7センチ高角砲、25ミリ3連装機銃が撃ち始める。

さっき迄の左舷側とは比べ物にならないくらいの、弾幕である。

完全に弦側が真っ赤に染まるほどの、発砲炎が甲板を包む。


「我ながら、油断したぜ。」

そう言った瞬間、彼の意識は永遠に消し飛んだ。

だが、彼の機体に射弾が集中したため、他の2機は逃げ切っていた。


これで榛名は、ヘルダイバー4機にヘルキャット1機を撃ち落としたことになる。

この時期の戦果としては、十二分に大きい物だろう。

「注水急げ!」

榛名の傾斜が、少し大きくなってきた。

「このままでは、転覆してしまうぞ!」

艦長が叫び声を上げる。

タービン室の半分の高さまで、既に浸水が進んでおり、隔壁からも若干の漏水があった。

だが殆どタービン室にしか、浸水してなかったため傾斜の速度は、そこまで速くなかった。

だが、注排水や穴を塞ぐといった作業をしなければ、いずれは転覆してしまうのは、誰もが知っていた。

そうさせないために、乗員は奮闘していた。

まだ、浸水を食い止められてはいないが、沈没は避けられるだろう。

そう思い始めた時だった。

第69話完

追い詰められた榛名

まだ続きます

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