第68話連合艦隊の終焉12
榛名に徐々に損害が、累積されていきます
「くそ!」
おれとしたことが、右舷にも対空火器がある事を忘れていたぜ。
ガンガン、機体に機銃弾が立て続けに当たる。
彼のヘルダイバーは榛名に完全に腹を見せてしまっていた。
「上手くいったか!」
吉村艦長が、いや艦橋中が喜びに湧いた。
「やりましたね!策は成功しました!」
「だが、次からは使えないがな。」
ここで彼らの言う策とは、単純に榛名の損傷がある程度のなるまでは、右舷側の対空砲を一切撃たず、ある程度の損害を与えた敵に対し、奇襲的に射撃を浴びせると言うことである。
ただし、もう使えない策でもある。敵が見ているからだ。それによって、油断しなくなるからだ。
順調に敵機に、有効弾が当たっている。
「もうダメか?」
俺はもうダメだと思った。
もう機体からは、火が吹いていて昇降舵と言うより、垂直安定板いわゆる尾翼全てが吹き飛ばされていた。
まだ補助翼、フラップ、垂直尾翼は残っているが、まともな操縦は出来ないだろう。
「まだ止めるなよ!」
射撃指揮官が言った。
「いいか?トドメを刺すまで打ち続けるぞ!」
機銃長が言った。
「分かってます。」
「よし。」
「もう終わったな。」
たった今、左翼の半分から先端までの部分が吹き飛ばされた。
もう帰還は絶対に無理だ。
ではどうしよう。
「いけ!」
ヘルダイバーの翼が飛び散ったのは、榛名艦上からでも望見出来た。
だから、いっきに乗員のボルテージはマックスになっていた。
「やったぞ!」
まさにその時だった。
「はっ?」
そう言ったのを最後に、彼の意識は暗転し二度と戻ることはなかった。
ヘルダイバーの機体を、高角砲弾が突き抜けたのだ。
そのことによって、彼らの機体は圧縮され、彼らの肉体は、一瞬でミンチになっていた。
そして機体が耐えきれなくなり、爆発した。完全に消滅したと言っていいだろう。
「しゃっあー!」
敵機を撃墜したことで、乗員の士気は上がっていたが、今度の被害は無視できるものではなかった。
まず、若干艦尾側に被弾したため後部側12、7センチ高角砲1基と、25ミリ3連装機銃が2基破壊されたのである。
さらに、この爆弾は最上甲板の水平装甲を軽々と突き抜け、機関室で炸裂した。
これによって、後部側タービンが破壊され、さらにそこから外板が外側への圧力にさらされ、鋲が緩みさっき迄とは比べものにならない浸水が起こったのだ。
「なんなんだ!」
彼は、丁度被害にあった機関室の機関員である。
彼の周囲は、一瞬で暗闇と化していた。
さらに、火災でも起こったのだろうか?煙が充満し始めていた。
脱出しなければ、死んでしまう!
「もうダメだ!」
彼は悲鳴を発しながら、タラップを登ろうとした。
しかし、恐怖からくる焦りによって上手く登れず、落っこちてしまった。
「痛!」
彼は悲鳴をあげ、痛みでその場を暫く動けなかった。
しかし、彼がそうあたふたしている間に、副長率いる応急班が到着し、作業を始めていた。
「排水急げ!」
「破壊孔を塞げ!」
「やばいな。右舷側に注水しろ。」
「はっ。」
「それと並行して、防水作業は続けろ。」
副長が、最適な命令を下す。
「いいか、ここで着底させるわけには行かない!少なくとも今日は耐え切るんだ!」
艦長の決意を込めた声が、艦内に響き渡る。
「野郎ども、艦長の期待に負けるんじゃねえぞ!」
「分かってますよ。」
「あいつが狙い目だな。」
激しく黒煙をあげ、身悶えている榛名を見た攻撃未了の、ヘルダイバーが一斉に狙いを榛名に向けた。
榛名にとっては、良い迷惑でしかなかったが、彼らは戦果を上げるのに必死だったのだ。
「 あいつを沈めに行くぞ!」
「あいつにトドメをさしてやる!」
ヘルダイバーの無線はこのような声で、満たされ混線していた。
「敵機3来ます!」
見張り員の絶望的な声とともに、報告が入る。
「撃方始め!」
「一緒に行くぞ!」
たまたま、同時に攻撃を仕掛けようとしていた、3機のヘルダイバーは、同時に攻撃を仕掛ける事で、対空砲火を分散させるのを狙った。
これは、正解だった。
「弾幕薄いぞ!」
射撃指揮官が叫ぶが、こればっかりはどうにもならない。
ここまでの損害の蓄積によって、すでに12、7センチくらい連装高角砲1基、25ミリ3連装機銃5基さらに15、2センチ砲3基が破壊されており、特に高角砲と機銃の被害が堪えていた。
何故なら、不運にも着弾が中央部に集中した為、中央部の高角砲、機銃群が破壊され、中央部にぽっかりと火網の穴ができていたのだ。
「もっと、中央に射弾を集中させろ!」
「言われましても・・ここまで減ってしまっては、効果的な弾幕は張れませんよ。」
「不可能を可能にするのが、帝国海軍人の役目だろう!」
いつもは、精神論に批判的な射撃指揮官であったが、血が頭に登って興奮しているのか、精神論で物事を話していた。
「無理な物は無理ですよ!」
「やって出来ないものはない!良いからやるんだ!」
そうこう言っている間に、敵機が迫ってくる。
「さっき迄と比べ物にならないくらい、弾幕薄いぞ!」
「行ける!」
彼らは、自信に満ちた声を発しながら、榛名に突っ込んでいった。
第68話完
連合艦隊の終焉も長くなってきました
これだったら、外伝か何かで違う小説にしても良かったんじゃないかと思っているこの頃です
これだけですでに3万字を費やしています
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