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航空機搭載潜水艦伊400最後の出撃  作者: 飛龍 信濃
呉空襲 連合艦隊の終焉
68/112

第67話連合艦隊の終焉11

榛名の死闘です

「敵機接近!」

見張りの声が響く。

だが榛名が、回避運動を行うことは無い。何故か、停泊状態にあり、燃料もないからである。

「対空戦闘用意。」

吉村艦長の冷静な声が、艦橋内に響き伝声管を伝って艦内各所に広がっている。

榛名は今までに、ロケット弾2発と500キロ爆弾1発を食らっており、25ミリ3連装機銃3基と15、2センチ砲3門が破壊されていた。

そして、機関室と舵機室に若干の浸水があったが、停泊しているため沈没の危険はない。

「敵もしつこいな。」

射撃指揮官が愚痴るように言う。

「確かに、散発的に来られるのが一番神経に効きますからね。」

機銃長が言った。

そんな彼らに再び、敵機が襲いかかろうとしている。


「もう少し進んだら、降下に移るぞ。」

「了解。」

俺らの機は、一番敵の抵抗が弱まった時に突っ込むことにしていた。

だから、目の前で友軍が攻撃を成功させたから、もうやられないだろう。しかも場所によっては、撃沈出来るかもしれない。

かなり美味しい状況だと言える。


「いいか、敵をできる限り引き付けるんだ。敵を油断させるためにな。」

「どこまで引きつければいいでしょうか?」

「目安としては、1500-1000ぐらいだな。」

「なるほど・・そんなもんですね。」

こうして、榛名艦上では襲い来る敵機を向かい打つ準備が進んでいた。

「艦長。浸水は早めにくいとめないと正確な射撃が、出来なくなってしまいますが、どうします?」

「大丈夫だ、もう敵の攻撃は下火になってる。ここは耐えるときだ。」

「分かりました。」

しかしその判断が、報われることはなかった。


「降下開始!」

俺はその叫び声とともに、機体を前に倒し、降下させていく。


「撃方始め!」

急降下に移り、敵機の高度が1600程度になったのを見た射撃指揮官が叫んだ。

それと同時に、榛名の左舷が今までのように真っ赤に染まる。

凄まじい轟音が、艦上を駆け巡る。


「何!」

俺は思わずそう叫んでいた。

まさかこいつにここまでの力が、残っていたとは。想像もしていなかった。

しかし、ここで辞めるわけにはいかない。男のプライドが許さない。むしろ、ここから生還すれば英雄扱いになるだろう。

いや、そこまで甘くないな。さっきのやつも生還してたし。

まだ機を狙ってる奴もいるからな。

あいつを撃沈出来ればいいが、出来なかったら、他の奴が引導を渡すことになるんだろうな。

だが、奴に一撃を見舞ったという事実に変わりはない。

今は、彼奴に爆弾を当てることだけを考えるんだ。

「ちぃい!」

高角砲弾の炸裂で機体が振るえる。

その為、照準がずれる。


「いいぞ!もっと撃ちまくれ!」

「分かってらあ!」

射撃指揮官が叫び、機銃長が機銃員を激励する。

「いいか、ここが踏ん張りどころだ!」

吉村艦長が、総員に対し叫ぶ。

榛名がこの攻撃を切り抜けるには、ここで耐えなければいかん。

ここさえ耐えられれば、浮いていられる。その判断があった

「あいつを落とせ!」

乗員から、機銃員に対し檄が飛ぶ。今までだって、落としてきたんだという思いがあった。

「あいつはあいつでうまいな。」

吉村艦長が、絶妙に機体を操っている、相手を感嘆したように言った。


「もう少しで、たどり着けるぞ!」

「いい感じです。」

俺は、敵の火網に絡めとられないように、機体を少しずつロールさせていた。

もちろん、攻撃に支障が出ない範囲で。

「900」

「500で落とします!」

「低くないか?」

「確実に当てるには、そのくらい行かないと、無理です!」

「わかった!」

敵に接近するほどやられ易くなるが、確実に当てるためなら仕方ない。

要は、ギリギリまで近づく。ただこれだけのことである。


「敵をよく狙え!当たってないぞ!」

射撃指揮官が、なかなか目標を捉えられない部下に対し、苛立ちと不甲斐なさが混在するような、感情と声音で言った。

「分かってますけど!中央部がやられちまったから、どうしても弱くなっちまうんですよ!」

「それをどうにかしろと言っているんだ!」

それをどうにかする為に、機銃座がより中央寄りに旋回する。


「やばいな。」

敵の射撃の密度が高くなってきた。

これだといつやられても、おかしくない。

だが、もう後100も降れば爆撃し離脱するんだ。逃げ切れるだろう。

「500。」

「投下!」

500キロもの重量物が投下され、機体が軽くなり浮き上がろうとする。


「敵、投下!」

見張り員の叫びが、艦橋へ伝声管を伝って届けられる。

「衝撃に備えろ。」

艦長の口から、再びこの言葉が出た。

「また当たるか!」

射撃指揮官が忌々しげに、叫んだ。

しばらく、時間が静止したように感じた。


「いったか!」

思わず叫んでいた。

今まで耐えてた甲斐があったものだぜ!

「やりましたよ!」


その刹那、榛名を激しい衝撃が襲った。

「あいつを逃がすな!」

砲撃長の怒りのこもった、声が響き渡る。

その声を起点に、まだ攻撃を受けていなかった、右舷側高角砲、機銃群が一斉に撃ち始めた。

今までの鬱憤を一気に晴らすように撃ちまくっていく。

第67話完

まだまだ続く呉空襲編!

だんだん追い詰められていく、榛名の運命やいかに!

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