第60話連合艦隊の終焉④
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凄まじい轟音が、聴覚を支配するなか全力で目標を伝える。
「目標、直近右側のを狙え!」
その合図と共に、彼の指揮する3連装機銃が同じ目標を撃つために射撃を始める。
だが、一番最初の時と違い2機が若干の時間差を持ってきたため、対空射撃が分散してしまっていた。
あまり良くないと言える。これでは十分な弾幕を張れず、攻撃を許してしまう可能性が高かったのだ。榛名に何発も爆弾を食らっても沈まないだけの力はない残っていないのだ。
うまくやるやつもいるじゃねえか。
最後の奴は一人で突っ込んでいきやがったが、今度は二機が時間差を空けてうまい具合に突っ込んでるな。これなら、ジャップの対空射撃を避けられるな。
でも、降下角が浅すぎるな。これだと後ろの島に当たるんじゃねえか?
でも落とされはしないだろ。
彼はそんなことを考えながら、目標の戦艦が弱るのを待っていた。
「爆撃するときは一緒に突っ込まないか?」
「ああ、そうしよう。」
あの時の約束が生きているな。
うまい具合についてきてくれている。後は目標を絞るだけだな。
「なにっ。」
目の前で敵艦に一人突っ込んでいった奴が、敵艦の反撃で落とされてしまった。
それにしても、いい照準だったな。
「うーん、あの艦にするか。」
「奴の仇を取りましょう!」
「ああ、勇敢にも突っ込んでいったやつの仇を取るぞ!」
「よしっ、突っ込むぞ!」
後ろについてきている、同期の機体に無線で伝える。
「味方の敵討ちだな!」
あいつもしっかり、見てたようだな。それなら話が早い。
「降下開始!」
乗機の爆撃手と僚機に合図を送る。
あいつの機は、後ろ斜めにいるな。これなら、味方を屠った対空射撃を分散させられる。
そう考えつつ、操縦桿を操作し機体を降下させる。
「当たらんな。」
最初の機のように意表をつけなかったからか、うまい具合に分散させられているか、どっちかだが恐らく両方だろう。
「来やがった!」
敵のアイスキャンデーが機を包み込むように迫ってくる。でも、機に迫ってくるのはない。
照準が甘いな。機を包み込む様にくるがそれだけだ。機体に弾がかする音もしない。これなら、いける。
「1000」
「600で落とします。」
「分かった。」
なかなかつかんな。まあ、緩降下爆撃だから仕方ないか。
「800。」
そう言いつつ、当たりそうなのが飛んでくるが、ここで避けては当たらないから意地でも操縦桿を動かさないようにしないとな。
「700」
敵弾に捉えられることなく、彼の機は降下していく。
「しっかり狙え!敵機はそこまで来ているぞ!」
射撃指揮官の命令に応えたいのは山々だが、当たらないのは仕方ないだろう。
最初とは違い、左舷側全ての対空火器が狙っているわけじゃないんだから。
「600!」
「撃てー!」
その合図とともに、黒光りする爆弾が投下され、機体が軽くなり若干浮く。
それと同時に操縦桿を引き、機体を引き上げにかかる。
まあ、緩降下爆撃だからそこまで時間はかからないが。
「敵機投弾!」
見張り員からの絶叫が聞こえてくる。
「ちい、間に合わなかったか!」
そう射撃指揮官は絶叫したが、次の瞬間には冷静を取り戻していた。
「あれでは当たらんな。」
航空機の投下する爆弾は、それが丸に見えたら当たるもんなのだ。しかし、今敵機が落としていった爆弾は楕円形に見えて入る。
これなら、後ろにそれるだろう。
「目標を変更せよ。」
その合図とともに、接近してきたもう一機の急降下爆撃機に対空砲火が集中する。
「外したか!」
やらかしたな。撃つ直前に高角砲の爆風で、機体がぶれてしまったか。
ただ、敵は当たらないともう踏んでいるのか、一緒に突っ込んでいた同期の機に射撃を集中させてきた。
「いきなりかよ!」
そう愚痴ったのは、若干先に突っ込んでいったあいつが失敗し、曳光弾が全てこっちに来たからだ。
よく、幻覚でそう思ってしまう奴もいるが今は本当にそうだ。これでは、さいしょのやつのにのまいになっちまう!
そこまで考えた時だった、灼熱に焼けた機銃弾がキャノピーの防弾ガラスを突き破り、二人の頭部を次々にぶち抜きそのまま突き抜けたのだ。
それによって操縦者を失ったヘルダイバーは、江田島に突っ込んでいった。
「やったぞ!」
再び乗員から歓声が上がった。結局最初に放たれた爆弾は、後ろにそれ江田島の砂浜で爆発した。
榛名に被害はなかった。
まだ対空砲も全て生き残っている。
まだ戦艦榛名は生きているのだ。
しくじりやがったか。まあ仕方ないか。
でも、敵艦に損害をまだ与えられていないからな、今突っ込んでも殺られるだけだな。
そう考えつつ、機体を旋回させる。
最低でも味方が爆弾を1発当ててくれれば突っ込むのだが。
まだ、対空砲火は健在だ。
それに敵機はいないから、ぐるぐる旋回していても、落とされないだろう。
でも他の艦には、命中弾を出しているようだな。
すでに転覆している敵艦も見える。
全体的に見れば、今回の攻撃は上首尾に終わるだろうな。
「やられているな。」
呉鎮守府で、金沢長官は一人呟いた。
この攻撃で、呉在泊艦船は壊滅的な損害を被るだろう。
「連合艦隊の終焉だな。」
彼は諦めにも似た感情でいった。
空襲は、まだ続いている。
第60話完
というわけで、この章の主役艦は榛名です
まだ続きます
呉空襲が終われば、伊400の物語に戻ります
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ではまた




