第58話連合艦隊の終焉②
呉での死闘が始まる
「ふぁあー眠いな。」
「ちゃんめえさますとけ。」
今日もいつもと同じように終わるはずであった。今までの空襲を最低限の損害で切り抜けてきた、呉材泊艦艇の士気は低くはなかった。
しかし、大半の艦艇に取って今日が命日になるとは、誰も思っていなかった。
いや、連合艦隊の終焉である。
「いいか?確実にビックターゲットを沈めるんだ。小物は放っておいていいからな。」
「了解!」
「しっかし、もう奴らには、反撃する力は残っていなんでしょう?」
「だからと言って、気をぬいてはいかん。確かに航空隊はかなり消耗しているらしいが、対空砲はなめてはいかん。下手をしたら、やられっるって話だからな。それに、24日の空襲じゃあ一隻も沈められていないらしいからな。」
「でも、ジャップの対空砲は精度があまり高くないとかって聞きましたが?」
「 それでも、25ミリの機銃弾をまともに食らえばかなりの威力になるからな。装甲が強化されているこいつでも、落ちなくてもかなりの大穴を開けられるって話だぞ。」
「でも、落ちないって事は大丈夫ってことでは無いのですか?」
「落ちなくても、乗員は死ぬかもしれないしな。忘れてないかとは思うが、俺らが載っているのは急降下爆撃機なんだ。他の奴らよりも危険なんだぞ。」
「そう言うもんなんですか?僕たちのVT信管はジャップの3倍の命中率だって聞きましたけど?」
「命中率がいくら低かったとしても、殺られる時には殺られんだ。そこんところは、分かってるよな?」
アメリカエレクトロニクス技術の結晶である、VT信管は日本機に対して大きな威力を発揮していた。
しかし、命中率が3倍と言っても1/6000の命中率が3倍になった所で、1/2000の命中率でしかない。確かに、VT信管の効果もあったろうが、根本的な部分ではボフォース40ミリ機関砲やエリコン20ミリ機銃を何百門とつけることによる、圧倒的な密度の弾幕によるところも大きい。
特に、戦艦には大量に装備され対空戦闘の主役となった。
アメリカの艦隊防空力が高いのには、VT信管があったということよりも、レーダーを使った艦隊全体での圧倒的な弾量を費やす弾幕射撃があったのである。
即ち、何十門という数の対空砲が統一操作の元で一機の航空機に向けられるのだからたまったものではない。それでも、完全に敵機を防ぎ得るものではなかったということは、何十機もの特攻機が攻撃を成功させており、さらには空母フランクリンが彗星もしくは銀河による急降下爆撃を受け、それによってによって沈没寸前にまで追い詰められたことからもわかる。
ただしその時は、神戸港第二次攻撃隊の準備にとりかかっていた頃であり、攻撃した機体も雲上から雲を突き抜けて攻撃してきた為、不意打ちのような形になったという事情もあるが、アメリカ艦隊の防空体制が完全ではなかったことを示す一例であろう。
そして、アメリカ海軍は、日本機による特攻とソ連による飽和ミサイル攻撃に対処するため、イージスシステムの開発に力を注ぐのである。
飽和ミサイル攻撃とは、海軍力において西側諸国に対し大きく劣るソ連が、一気に大量のミサイルを投入することによって艦隊防空力を飽和させて、攻撃を成功させるという戦術である。
しかし、イージスシステムをアメリカが開発したこと、ソ連が崩壊した事による冷戦終結により、第三次世界大戦が起こらなかったことにより、実際に行われることはなかった。
「まあそうですけど・・・大丈夫って思ってやったほうが良いんじゃないですか?」
「そうだな、楽観しすぎてもいけないが、悲観しすぎてもダメだったな。」
「そうですよ。」
「敵は来るのか?」
呉鎮守府長官室で金沢中将が呟いた。
「さあ・・・なんとも言えないのではないでしょうか?」
参謀長の橋本少将がいった。
「電寝室より東方より、大編隊が接近中とのことです!」
かなり慌ててきたであろう伝令が言った。
「なにっ、防空警報鳴らせ!畜生、航空隊は来れないか・・だが、大丈夫だ。」
軍港内に防空警報が鳴り響く。
「急げ!敵はもう来るぞ!」
戦艦榛名艦上では、総員第1種戦闘配備が発令され、各員が対空戦闘用意に追われていた。
前回の空襲により、被害を受けていたがまだ機銃や高角砲は生き残っており、米軍の攻撃隊を待ち構える為、仰角を上げていた。
「対空戦闘用意!」
艦長吉村眞武大佐が言った。
それに合わせて、1000人を超える乗員が持ち場へと移動していく。
「準備はいいか?」
「イエッサー!」
隊長の投げかけに隊員たちが、威勢のいい返事をする。
「カーニー参謀長、補給の飛行機はきそうか?」
「ハルゼー長官、まだ、サンディエゴを出港したばかりですので、まだ当分来ないかと。」
「ハワイに着けば、島伝いに飛んでこれるのだが・・」
第38任務部隊では若干の問題が起こっていた。パナマ運河が破壊されたために、航空機の補給が遅れていたのだ。
そのため、少しずつながらも第38任務部隊の戦闘力は落ちていたのだ。
なぜ、遅れているのか?それは至極簡単な話であった。
そう、パナマ運河が健在ならば東海岸から西海岸へ飛行機運搬船がパナマ運河を通っていき、そのまま、向かっていくのだが、現在はそれが無いためにこちらにいる船を派遣しなければいけなくなっていたのだ。
そこでまずは、護衛空母を補給に向かわせようと考えられたが、船団の護衛を蔑ろにすることは出来なかった。
そのため、鈍足の飛行機運搬船数隻を向かわせていたのだが、案の定鈍足であり向かわせた数も少ないために、1月前の補給が最後であったのだ。
第58話完
というわけで次から本格化します
いつから始まるんだろう?
感想待ってます




