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第54話シンガポールにて②

前回の続きです

「こちらが、発射管室になります。」

伊400艦長日下中佐が、艦の視察に来ている福留中将と朝倉少将に言った。今彼らは、艦首部にある発射管室にいる。

「なるほど、さすがに広いですね。」

「これが潜水艦の中ですか・・」

「我が艦は、九五式魚雷通称酸素魚雷を20本搭載できます。」

「航空機を載せているのに、そんなに魚雷を積んでいるのですか。」

感嘆したように言ったのは、朝倉少将である。

「それにしても、なぜ艦内容積がこんなに大きいのかね。聞いた話だと、狭苦しいところという印象を持っていたのだが。」

「たぶん、広く感じるのは伊400型だけだと思いますよ。」

「どうしてだ?確かに排水量が大きいから、全長が長いのは分かるが幅は、この位どの艦でもあるんじゃ無いのか?」

「それは、本艦が眼鏡型船殻という構造をしているからですよ。」

「眼鏡型とは?」

「中将簡単に言いますと、通常の潜水艦は内殻が1本しか無いのが基本なのです。」

「そうだな。そのことは知ってる。」

「本艦は、その内殻を2本眼鏡型に接合しているんですよ。」

「何のためにそうなっているのだ?」

「艦の高さを抑えつつ、幅を広げるためです。なので、浮上航行中の安定性はかなり高いと思います。あくまで潜水艦というくくりの中ですが。」

「なるほど、だから潜水艦にも関わらずこんなにも艦内容積が取れているのか。」

「この後の予定は?」

朝倉少将が聞いた。

「修理が終わって、乗員が慣れたら日本に戻ります。母港の大湊に。」

「そうか。ここに残るという選択肢もあるが?」

「遠慮しときます。まだ終わりが決まったわけでは無いですし、やれる事があるので。」

「そうか。」

幾分残念そうに言った。

彼はこの潜水艦が沈められることがあってはいけないと思ったのだ。その日本の技術を絶やさず、後世に残すために。

しかし、艦長の意向によってそれは無理そうだと分かったのである。

「でも、本艦はついている艦なので大丈夫だと思いますよ。」

それを聞いて彼は、そうなってもらいたいものだなと思った。

「ちなみに同型艦は何隻あるのかね?」

「今の所、伊401が竣工就役しており、伊402もそろそろ竣工のみこみです。」

「と言うことは、3隻で9機の機体を運用できるということだな。」

「はい。他にも晴嵐を2機搭載できる、伊13型が2隻竣工しています。」

「なかなか心強いな。」

「しかし、ろくに燃料が無いので、活躍出来るかは未知数です。しかも出撃出来るかもわかりませんし。」

「それは残念だが、伊400は立派な戦果を挙げたではないか。それはほこれる事だと思うぞ。」

「ありがとうございます。」

「他には、何がありますかね。」

「電測室がありますが。」

「では、そこに連れて行ってくれ。電探というのを見たいのでな。」

「福留中将は、見たことなかったのですか?」

日下艦長がびっくりしたとそのままに言った。

「見たことは見たが、細かく見るのが初めてなんだ。」

「分かりました。電側室はこちらです。」

そう言って、今までいた発射管室を出て、電測室に向かった。

「やはり、広々としてますね。」

「ほかの艦に較べたらですけどね。」

艦長が苦笑いしながら言った。

「こちらです。」

「そんなに広くないんだな。」

「やはり、主機室、電池室、発射管室に容積をどうしても大きく取られてしまいますので。それにそこまで広くなくても、装置は置けますので問題はありません。」

「そう言うものなのか。しかしどうやってこれは見るのだ?」

「ええと、それは私にはわかりませんし担当の者がいませんので、お教えすることができません。」

「残念だが仕方あるまい。」

「すいません。」

「では、そろそろ退散するとしよう。何か要望でもあるか?」

「ひとつ言わせて貰えば、資材を優先的に回してもらいたいのですが。」

「それなら大丈夫だ。ここには内地と違って、まだ物資に余裕があるからな。まあ、口添えはしておくぞ。それでいいか?」

「ありがとうございます。長官と参謀長が退艦されるぞ。失礼のないようにしろ。」

「了解!」

「では、失礼させてもらうぞ。」

「では、修理が終わりましたら、もう一度お呼びします。」

「分かった。楽しみにしてるぞ。」

「では。」

「参謀長行くぞ。」

「分かりました。」

そうして2人は、司令部に戻っていった。

「ふう・・」

「艦長どうされましたか?溜息なんてつかれて。」

「ああ、入港していきなりこうなるとは思わなかったからな。」

「それでは私も失礼させていただきます。」

セレター港港湾部部長佐伯中佐が言った。

「分かった。ではまた明日。」

そうして、佐伯中佐も退艦し自分の部署に戻っていった。

「総員に告ぐ、明日から入渠修理が始まる。今日は息抜きのために、宴会を行う。勿論無礼講だぞ。」

艦長が言い終わる前にはすでに歓声が上がっていた。

「粋な計らいですね飛行長。」

「まあ、明日からまた忙しくなるからな。まあこれまでよりはのんびりできるだろうがな。」

「そうでないと困りますよ。」

「こっちの体が持たないか。確かにここの所、緊張の連続だったからな。丁度いいタイミングだろう。」

「では行きますか。」

「行くか。」

こうして、入港初日の夜はあっという間に過ぎていったのである。

第54話完

伊400の凄さがこの辺に出てます

終わりが見えないわけではないけれど、終わらない・・・

感想待ってます

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