第48話伊400は何処にありや?全世界が知らんと欲す
わかる人には分かる
それにしても、アメリカ軍の徹底的な索敵はまだ続いていた。 ソロモン沖とマリアナ沖で。しかし何時になっても、伊400を見つける事は出来なかった。
当然だろう。伊400は、オーストラリアを大きく回るように、タスマニア島沖に向かっていたからである。
伊400の目的地は、シンガポール。緒戦で日本軍が占領した、イギリス領である。シンガポールは東洋のジブラルタルと呼ばれていた。しかし、シンガポールの水源を日本軍が抑えたことと、圧倒的な進撃速度によって陥落していた。この南方地帯は、今の所本土よりも安全という不思議な地域になっていた。
そして、伊400は燃料、食料補給そして、傷ついた艦体の修理のために、最大の安全地帯であるシンガポールに向かっていたのだ。
そして、連合艦隊司令部を始めとした日本海軍どころか、誰も伊400の行方を知らなかった。完全なる沈黙のおかげである。
しかし、その為に連合艦隊司令部を始めとする日本海軍全体の、作戦指導に当たる者たちは伊400の行方を懸命に知ろうとしていた。
しかし、伊400が無線を発信しないものだから、見つけられるはずがなかった。だから、一部の者の間ではもう伊400は沈んでいるのでは、と言うような者が出てきていた。
しかし、連合艦隊司令長官である小沢治三郎中将は、まだ伊400は沈んでいないと考えていた。その根拠としては、パナマ攻撃成功の報告すら行わなかったのだから、今も無事であろうと言うことである。
何度も言っているかも知れないが、安否確認が最も困難な艦艇は潜水艦なのである。
その一つめの理由が、潜行している時に撃沈されると無電を発することが出来ないと言うことである。潜水艦は基本的に敵を発見すると即座に急速潜行に入るため、無電を放つ暇がなくさらに言えば下手に無電を発せば、敵に見つかってしまうのだ。ならば、このような危険は犯さないのが艦長というものだった。
もう一つにして最大の理由が、基本的に単独航行という事にある。水上艦艇は基本的に、最低でも2隻で行動することが多い為、どちらかが無電を放てばすぐに分かる。また、よっぽどのことがない限り無電を放つ暇さえなく沈む事が少ない為、たとえ単独航行だあったとしても、最低限の無電を発することが出来るのだ。
「伊400は一体どこにいるんだ?」
「長官、その事は一回置いといてください。まだまだ処理しないといけない書類があるんですから。」
「しかしな草加参謀長、パナマ攻撃成功の件で感状を出すにも、伊400が帰還しないと出来ないんだ。しかも、この時期一番の戦力は伊400そうではないかね?」
「確かに米軍にとって一番脅威的なのは、認めますが、大局を見失わないでくださいよ。」
「何を言ってるんだ?もう負けは決定事項のようなものではないか。本土決戦などという悪夢を遂行しようとは思ってはいないのだ。後は、いかに終わらせるかを考えねばいけないだろう?」
「そうですよ、だからこそ信用を失わないように書類を処理してください。」
「そうともいうかもしれんが・・・」
「とりあえず、処理してしまってください。終われば、時間が許す限り考えてよろしいですから。」
ここまで言われてやらないのはまずいと思い、とりあえず溜まっている書類を片付けることにした。
「わかった、やるよ。」
参謀長は、頭が固いのが玉に瑕だな。と彼は思った。しかし、本人の前でそれを言うわけにもいかないので、自分の心にしまっておこうと彼は考えた。
「それにしても、長官。」
「なんだ?」
「何故、陸軍の連中は本土決戦で勝てば何とかなると思っているのでしょうか?」
「そりゃあ、アメリカという国の力を知らないからだろう。それに、本土決戦ならば人海戦術でどうにかできるとでも思ってるんだろう。」
「女子供までつぎ込んでの、人海戦術ですか。そんなので勝てば、苦労しませんよ。」
「しかも、M4に互角で対抗できる戦車がないと来ている。何がどうなれば、勝てるというのだ?」
「確かに、戦車をどうにかしない限りただただしゃにむに、突っ込んできますしね。」
「しかも聞いた話じゃ、マレー半島等で鹵獲したM3スチュワートが最強だとかという話もあったからな。」
「軽戦車に負ける中戦車とは・・」
「海軍でいうと、重巡に打ち負ける戦艦と言ったところか。もはや、陸軍に防衛戦を期待することは無理だな。」
「ですね。と言うより終わりました?」
「あ、ああもうすぐ終わるぞ。」
「そうですか。」
それからしばらく、無言の沈黙があった。
「終わったぞ。」
疲れ切ったというように小沢中将は言った。
「終わりましたか。」
「所で、伊400だがな今どこにいるのだろうな?」
「分かるはずがないでしょう。まあ、無事であることを祈ることはできますが。」
「伊400がどこにいるか。それは乗員しか知らないという事か。」
「全世界が知らないという事ですね。」
「言ってしまえば、そうなるな。」
「全く、人騒がせな艦ですね。」
「別に問題は無かろう?」
第48話完
タイトルはギャグでしたが、本文は真面目な話でした
中身がギャグ回は存在しない・・
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