表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
航空機搭載潜水艦伊400最後の出撃  作者: 飛龍 信濃
オーストラリア通商破壊作戦
36/112

第35話雷撃

どんどん時間が進むのが遅くなる・・・

「後800!」

副長渡辺大尉が叫ぶ。

「よし変われっ。」

「了解しました艦長。」

艦長日下中佐が潜望鏡を覗き込む。

「ようし、発射管室準備はいいか?」

「いつでも大丈夫です!命令あれば撃てます。」

水雷長の横川大尉が言った。

「後700!」

「そろそろですね。」

「そうだな野島兵長。」

水雷科にとってこの瞬間が一番緊張する場面である。また脚光を浴びる時でもある。それだけに、失敗出来ないという緊張感が彼らを包んでいる。

「後600!雷撃迄100、機関速度1ノット!」

「速度1ノットよーそろー!」

機関長中川中尉が叫ぶように伝声管越しに了承の旨を伝える。それと同時に、艦が減速を始める。

「雷撃用意!後ちょっとだ。10、9、8・・・1番、2番撃えっー」

「1番、2番撃えっー」

「発射!」

放たれた魚雷は、30ノットという速度でマンハッタン号に接近していった。


「これば終われば、バカンスを楽しめますよ艦長!」

「そうだが副長、油断してはいけないと言ったのは、君ではなかったかね?」

「油断はして無いつもりですよ。ちょっと世間話程度のつもりだったんですよ。」

「そうだったか。スマンスマン。」

「無事につけますね。」

「ああ。時期に戦争は終わる。だから、やられてはいけない。しかし、気を抜いてるからな微妙だろう。」

その時だった。右舷見張り員が、咄嗟に叫んだ。

「正体不明の物体、接近中!」

「面舵一杯!右舷機逆転」

艦長が叫んだが、もう手遅れだった。

艦長の号令で、航海員が舵輪を思い切り回し、さらにスクリューを逆回転させ、艦首が回り始めたと思った時だった、艦中央にまず命中し右舷側に艦が傾斜し始めた。

緊急警報が鳴り響き、緊急灯が赤く点滅する。

「落ち着け!左舷に避難しろ!」

間に乗っていた乗員は、60人程度だったため将棋倒しになることはなかった。

「何なんだいきなり!」

最上甲板にいた者は一発目の時は、衝撃で転倒したり壁に叩きつけられただけだった。

「逃げろ沈没するぞ!」

悲鳴と怒号が交差している時だった。

艦首にもう一発の魚雷が命中し、艦首を吹き飛ばし、一気に浸水が増加した。

それにより、艦首を失ったマンハッタン号は、一気に前かがみに傾斜していく。

それの一撃によって、右舷側にいた乗員は吹き飛ばされてしまった。さらに艦の傾斜が速まったために艦内深層部、主に機関室からの脱出が困難になってしまった。

さらに止めを刺すように搭載していた弾薬に火が回り艦を一瞬にして、消しとばし消滅させたのだ。

恐るべきは酸素魚雷の威力である。

その後誘爆に寄って、乗員は全員戦死というアメリカ商船隊に残る惨劇となり、長く語り継がれることになる。

その話の最後には必ず、「どんなに自分に有利だとしても、油断はしていけない。」という一節が言われるようになった。


その頃伊400の艦内では、その戦果に湧いていた。

「命中!よしやったぞ。」

「しかし炸裂音が、一つしか聞こえませんが?」

副長が呟いた時だった。

ズガーンという音共に衝撃波が、激しく艦を揺さぶった。

「よっし全弾命中だ!」

「やった!」

「万歳!」

「天皇陛下万歳!」

「皇軍は健在だ!」

艦内が歓声に湧いた。

「何だと!」

艦長が叫ぶと同時に、これまでに増した轟音と爆裂波が、水中を通じて艦に激突した。

「何だ!」

悲鳴をあげたのは、発射管室で戦果を待ち浴びていた、野島兵長であった。彼は、衝撃によって感が揺れた際に隔壁に激突してしまったのである。

「大丈夫か!」

咄嗟に横川大尉が叫んだ。

「大丈夫であります!」

野島兵長は気丈に答えたが、顔と腕から出血しており、すぐに手当てをした方がいいことがすぐにわかった。

「衛生兵、野島兵長が負傷した。こっちに来てくれ!」

「分かりました!直ぐに軍医と向かいます!」

そう伝声管越しに言い終わると同時に軍医長とともに発射管室に向かった。

「大丈夫か!?」

野島兵長の意識が霞んできたため、横川大尉が彼の意識を保とうと、体を揺すりながら叫んだ。」

「大・・・丈夫で・・あります。」

どこか強く打ってしまったのか、答える声は弱々しく、途切れ途切れなものだった。

「お待たせしました!」

衛生兵が軍医と長とともに到着した。

「頼む。」

衛生兵が体を動かし、軍医が診察する。

そして、しばらく経った時だった。

今まで喋っていなかった、軍医長が一言簡潔に言った。

「傷は深くありません。意識が朦朧としているのは、ただの脳震盪でしょう。大したことはありません。安静にしていれば、すぐに治りますよ。」

「よかった。」

横川大尉が安心しましたと、声音に含ませて言った。

何故なら、今野島兵長に大事があると、自身の片腕を失うと同時に、伊400初の戦死者となっていたかもしれなかったからである。

そして、熟練の乗員を隔壁に激突させるほどの揺れを生じさせたのは、先に起こったマンハッタン号の誘爆である。

10000トンもの弾薬が一気に誘爆したその轟音は、プリスベーンの街まで聞こえ、火柱はさらに遠くからでも見えたという。よく伊400が無事であったと思わせるほどの規模だったのだ。

野島兵長が隔壁に叩きつけられてしまったのも頷ける。むしろ被害がそれだけだったのは幸運だったろう。まだ伊400がついている証明でもあった。

第35話完

遂に魚雷を撃ちました

もう37話上がってます

ストックあるっていいですね

感想待ってます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ