■第33話 幕間
お待たせしました!
大聖堂の外では、エオルスさんと三メイド(なぜか完全武装ver)が待機していた。
エオルスさんが私たちを発見するなり飛び付き、皇帝陛下がその突進を滑らかに躱し、それでも嬉しそうに安堵の号泣をするエオルスさんを三メイドが回収、ホウゼンさんの待つ馬車に乗って、クレープ屋さんに立ち寄ってから帰路に就いた。
こうして皇帝陛下が帰って来ない事件も無事に幕を閉じて、その夜。
私は月明かりの射し込む寝室で、平和に寝支度を進めている。
シスター服を着て帝都を馬車で走り回り、ポメコと大聖堂を駆け抜けて、聖王様に謁見。そんな長い一日もようやく終わりである。
疲れ果てていたけれど、忘れずにしっかりと寝室の鍵を掛け、扉の前には椅子を置いた。重たかったけれどテーブルも運んでおいた。寝る前にするべきではない重労働だったけれど安眠のためだから仕方ない。あの人は夜這いをすると言ったら本当にしかねないので、策を講じるに越したことはないのだ。
椅子とテーブルで固められ、どうやっても開かなくなった扉を前に、よしこれで大丈夫だと達成感を噛み締めていたら、「模様替えは終わりましたか?」と、背後から爽やかに声を掛けられた。
振り向く。もちろん皇帝陛下である。
「……。え、なぜいるんですか。どうやって部屋に入ったんですか」
「普通に窓からですけど」
皇帝が普通に窓から侵入するんじゃない。
「何の御用でしょうか」と言う前に、ひょいと流れるように抱き上げられた。いわゆるお姫様抱っこの形である。
「ベッドに運ばれるか、枕投げ会場に運ばれるか、選んでください」
にこやかに二択を提示されたけれど運ばれる以外の選択肢がなかった。
「……。前者の場合、安眠の保証は」
「できかねます」
「……。後者の場合、投げるものは」
「ちゃんと枕にしておきました」
「……。……。後者でお願いします……」
「かしこまりました。皆が大広間でリーニャを待っていますよ」
お城の皆さん、準備完了らしい。どんだけしたいんだ枕投げ。
と、枕投げ会場に運ばれることを選んだはずなのに、なぜか皇帝陛下は扉と反対方向にすたすたと歩き出した。
「って、え、どこに向かってるんですか?」
「だってリーニャが扉を塞ぐから。入ってきたところから出るしかないでしょう」
「窓!」
「ちゃんと掴まっていてくださいね」
そういうわけで私は窓から脱出するという無駄な恐怖体験をし、やっぱり皇帝陛下は傍にいてもいなくても心臓に悪いのだなと早々に身に染みる羽目になった。
それでもずっと傍にいたいと願ってしまうのだから、私も相当、恋に浮かれているらしい。
連載をお待ちくださった皆様、ありがとうございます!
次話、最終回です。
追伸:
やっと更新した回が短めですみません……。代わりと言ってはあれですが、新作の短編も合わせて投稿しました。
「初夜のベッドに花を撒く係VS式当日に花嫁を攫いに来た魔族」という、ツッコミ気質ヒロイン&別に執念深いとか全然そんなことないヒーローによる明るく健全なラブコメです。
こちらを読んだりエアポメコ2号を撫でたりして、最終話をお待ちいただけますと幸いです。




