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Veil lady ~転生美少女は、異世界にえっちな衣装を広めたい~  作者: 緑茶わいん
第五章

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将来の王弟妃 アヴィナ -3-

 9月の終わりに近づいたある日、フェニリード公爵家に王城からの馬車団が到着した。

 一番豪華な馬車から降りてきた王弟テオドールは手袋越しに俺の右手へキスをすると「準備は整っているか?」と尋ねてくる。


「はい。万端整えております」


 ほとんどの荷物はすでに公爵家の馬車へ詰み終えており、残りも使用人たちによって城の馬車に急ピッチで詰め込まれる。

 その間に俺たちは家族に挨拶である。


「公爵夫人。しばらくアヴィナを預からせてもらう」

「行ってまいります、お養母さま」

「ええ。しっかりと式を見届けてきてちょうだい」


 式、というのは他でもない、義兄フラムヴェイルと『北の聖女』アナスタシアの結婚式である。

 本格的に寒い季節になってしまうとあれこれ大変になるということで、その直前に執り行われることになった。

 当の義兄はといえば、次期当主が決定してから数か月、父親である現公爵から教育を受けた後、公爵領へ移動して向こうの親族から様々な教えを受けている。

 アナスタシアもこの数か月の間に2、3度短い来訪をして、ドレスのための採寸等をこなしているらしい。


「お姉様、お兄様の晴れ姿を後で教えてくださいね?」

「もちろん。……と、言っても、アルエットも後で見られるのよ?」

「でも、一度目と二度目では違うではありませんか」


 義妹が言った通り、実は義兄は二度、結婚式を挙げることになった。

 なんでと言えば、公爵領が遠いからである。

 次期公爵の結婚式となればそうそうたるメンバーが終結することになるものの、それが北の外れとなると移動だけでも大変になる。

 では都で開催しては? という話にもなるのだが、これはこれで、地域性を大事にする公爵領としてはあまりうまくない。


 そこで、領地で身内と領民のための式を挙げた後、都でもお披露目という形で二度目の式を挙げることにしたのだ。


 もともと貴族の結婚式って日本で言う披露宴がメインなところがある。

 ……いや、日本でもそうだったような気もしないでもないが、ともかく、酒と食事が出て祝いの場があれば特に問題はない。

 というわけで、都での式はパーティ形式でぱーっとやる予定。

 一応、正式な結婚式という扱いになる公爵領での式には、王と王妃の名代として王弟テオドール、それからその婚約者である俺が出席することになった。


 二回チャンスがあるのであれば、まだ幼いアルエットや、少し前に次男を出産した養母は無理に移動しなくても良い。

 公爵である父と共に俺たちだけで向かうことになった。


 なお、養母はこの件について「男の子はある程度放っておいても勝手に育つものね」と言っていた。

 照れ隠しというか、本当は両方見たいのを我慢するためだと思うものの、まあ、息子の礼服姿より娘のドレス姿のほうがテンション上がるのも事実かもしれない。




    ◇    ◇    ◇




「わたしたちが共に移動する機会も多くなりましたね」

「仕方あるまい。有事の際、最も君を守れる人間はこの私だ」

「ええ、信頼しております、テオドールさま」


 揺れる馬車の中で微笑みを返すと、王弟殿下は若干ジト目になって、


「国王陛下と君が無茶な計画を立てるから、私が守る羽目になるのだが?」

「その点については大変申し訳ありません」


 今回、公爵領での式を挙げた後、俺とテオドールはフラムヴェイルとアナスタシアを連れて転移で都まで戻ってくる手筈になっている。

 他の者たちは後からゆっくり、都での式に間に合わなくてもOK。

 この手順を取るのは時短の意味のほかに、アナスタシアを各地の転移経由地点、つまり神殿を覚えさせ、ついでに紹介する意味もある。

 そうしておけばのちのち、アナスタシアとフラムヴェイルだけで短期間に都と領地を行ったり来たりできるようになる。


 この際、護衛やメイドも置き去りになるので、守りはテオドールとフラムヴェイル任せである。


「魔力は十分に用意できているのか?」

「神の石の聖印に余剰魔力を日々、蓄積しております。都までの転移を繰り返してもおそらく、余りが出るかと」


 魔力で奇跡が行使できるとこういうことができるので便利である。

 神の石に魔力を溜める効力があるというのも驚きだが──もともと『神』から発生した力なのだからむしろ必然と言うべきか。


「それにしても、国王陛下の名代とは、わたしたち便利に使われていますね?」

「どうせ君は出席するのだから、我々を指名するのが順当ではあるだろう」


 フラムヴェイルの義妹であり、アナスタシアと同格の聖女でもある俺。

 不死鳥を信奉する公爵領の民としてはもちろん来て欲しいと願うだろうし、王家としてもこんなアピールチャンスを逃す手はない。


「おそらく、これからもこうした機会は多いぞ」

「そうですね。これからもよろしくお願いいたします、テオドールさま」




    ◇    ◇    ◇




「ようこそいらっしゃいました。お久しぶりです、アヴィナ様」

「ご無沙汰しております、アナスタシアさま。なんだか一段とお綺麗になられましたか?」

「まあ。この歳になってそんなことを言っていただけるなんて、とても嬉しいです」


 俺たちが北の公爵邸へ到着すると、すでに花嫁は到着していた。

 俺の手を握って再会の喜びを表してくれるアナスタシアに、俺も笑顔をもって返す。

 なお、初めて会ったカミーユはダブル聖女の衝撃でふるふる震えていた。


「やあ、アヴィナ。テオドール様もごきげんよう」

「ミハイル殿下もお久しぶりでございます」

「遠方よりはるばる、我が国での婚儀に参加してくださり、心より御礼を申し上げます」

「我らが聖女の結婚式で、出ないわけにはいかないさ。……ところで、我が未来の花嫁は一緒じゃないのかい?」

「ああ、ルクレツィア殿下は別の馬車でしたので──」


 言ったところで「私はこちらです」と声。


「ごきげんよう、ミハイル様。お元気そうでなによりです」

「はは、君も変わらず美しいね。式が楽しみだよ」

「まあ、お上手ですこと」


 お互いに似たタイプだと言うだけあって、終始和やかに──少なくとも和やかに見える雰囲気で話す二人。

 確かにこれはなかなかにお似合いかもしれない。


「ああ、アヴィナ。テオドール殿下、わざわざお越しくださりありがとうございます」

「お義兄さま、花嫁のドレスはもう出来上がっているのですか?」

「出来ているよ。……それにしても、会うなりそれは少し薄情じゃないか?」

「お義兄さまとはこれからも定期的に顔を合わせられそうですもの」


 義兄とアナスタシアが話し合い、それから養母の意見も取り入れつつ完成したというドレスは、期待したほどの露出はなかった。

 いや、俺の期待に沿った場合、下手すると全裸になるが。


「もっと聖女らしさを取り入れてもいいと思うのですけれど」

「ふふっ。それも楽しそうですけれど、これはあくまでも『公爵家の結婚式』ですので。聖女として参加するわけではない以上、羽目を外しすぎるわけにはまいりません」

「なるほど、さすがはアナスタシアさま」


 TPOを弁えている、と感心していると、義兄と将来の夫が揃って俺を見て、


「少しはアナスタシア様を見習ってくれないか、アヴィナ」

「どうせ君は、自分の式では派手な事を企んでいるのだろう?」

「お二人ともひどいです。……確かに、わたしの式では好きなようにやらせていただくつもりですけれど」

「フラムヴェイル様? もうすぐ式なのですから、私のことは呼び捨てにしていただけませんか?」

「え。ええ、そうですね。式が済みましたら必ず」


 こっちに火の手が向かってきたかと思ったら、妙な方向に飛び火。

 俺はなんだかんだテオドールに手綱を取られているものの、義兄夫妻は女性側に主導権がありそうである。

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