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Veil lady ~転生美少女は、異世界にえっちな衣装を広めたい~  作者: 緑茶わいん
第五章

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えっちの伝道者 アヴィナ -4-

 学園の代替わりもあって、俺ことアヴィナ・フェニリードは中心人物の一人として大きな注目を集めるようになった。


 王族妃教育を受けるため、週に何日かは城に呼ばれる俺。

 当然、授業等での顔見せも少なくなるのだが……その点は王家も考慮してくれて、年度初めの時期は城行きの日数を少なめにしてくれた。


 王弟テオドールと婚約が決まったこと、メイドの数が増えたため家への報告に誰かを送りやすくなったことなどから、公爵家の屋敷に戻る日数も減らせる。

 うさぎのスノウにも友達、あるいは恋人?が増えたのも大きい。

 ちなみにテオドールのペットということになったその子は「君が名前を付けるといい」と王弟殿下が面倒くさがったため、俺が「ブランシュ」という名前をつけた。

 ……白いのでついそれっぽい名前をつけたくなるのだ。


 さて。

 セレスティナと共に推し進める新しいファッションの宣伝は順調。

 昔ながらの流行を好む者からの反発もあるものの──なにもみんながみんな同じ服装をしないといけないわけじゃない。

 反対派にこっちから戦いを挑んだりはせず、穏便に、同好の士を見つけては布教活動にいそしんでいる。

 春になってだんだん温かくなってきたし、もう少し涼しげな格好もそろそろ用意したいところ。

 かといって、貴族令嬢には肌を見せる格好の受けが悪いので、今は我慢が必要か? ううむ。


 と、そんなある日のこと。


「お願いいたします! 私を踏んでください、セレスティナ様!」

「……アヴィナ様。これ、どう思われまして?」


 俺とセレスティナは成り行き上、一緒にお茶をしたりする機会が増えた。

 その場には他のお洒落仲間も同席することが多いのだが。

 今回はそこに一人の男子生徒が呼ばれた。

 呼ばれたというか、セレスティナに大事な話があるというので「じゃあお茶の席で聞こう」と彼につきつけたのだ。

 こちらの要望は受け入れられ、こうしてやってきた彼は──床に跪いてそう口にしたのだが。


「セレスティナさま、さすがに『これ』はひどいと思います。傍若無人な悪役令嬢と判断されても仕方ありません」

「これは失礼。ですが、令嬢に向かって『踏んでください』などと頼み込んでくる側にも問題があるでしょう?」

「それに関しては全面的に仰る通りかと」


 とりあえず顔を上げてもらって理由を尋ねると、彼はうっとりと心酔するような表情でセレスティナを見上げて、


「セレスティナ様こそが私にとって理想の主なのです」

「あら、もしかして売り込みですの? でしたら能力なりコネクションを主張していたく方が効果的でしてよ」

「いえ、セレスティナさま。この場合、おそらく『主』とは『ご主人様』という意味です」

「アヴィナ様の仰る通りです。私の望みはセレスティナ様のお好きなようにこき使って頂く事。よって、その忠誠心を示すためにこのような形を取りました」

「……正気ですの?」


 だから言い方きついって。

 とはいえ、向こうの主張もだいぶ「うわぁ」と言いたくなる感じのものだ。

 というか同席した令嬢の中にはもろに「……まあ」と軽蔑の眼差しをしている者もいる。


「なんと申しますか。女性へ傅き、奉仕することに喜びを覚える男性というのもいるのです。……その度合いが強いと、このように」

「どうか犬とお呼びください」

「正気ですの?」

「真顔で罵るのは止めて差し上げましょう。喜ばれるだけですので」


 恍惚とした変態──もとい、男子は「さすが、アヴィナ様はよくおわかりで」と笑顔を浮かべた。


「アヴィナ様? 『瑠璃宮』時代はもしかして、こういった奇特な方々を日常的に相手になさっていたんですの?」

「いえ、まあ。男性の趣味というのは人それぞれですので。こういった方々ばかりというわけではありませんけれど」


 俺は年齢的に、親子ほど年の離れた相手が多かったので、そういうロリコ──幼女趣味の方々の中には「小悪魔的な少女にからかわれたい」という願望を持つ者も少なくはなかった。


「では、こういう方にはどう対処したらいいのかしら?」

「飼う気があるのでしたら、適度にいじめてこき使って差し上げれば良いかと。不要であれば『迷惑だ』ときっぱり告げて差し上げるのが一番です」

「では、迷惑ですわ。消えなさい」


 その男子はものすごく残念そうに、でも「さすがセレスティナ様、切れ味が鋭い」とどこか満足そうに去って行った。

 ……はあ。


「最近、殿方からも同棲からも声をかけていただく機会も増えたのですけれど、どういうわけかあの手の方が多くて困りますわ」

「それは、セレスティナさまの衣装が挑戦的だからでしょう」

「……その割に、アヴィナ様には『踏んでください』などという方は来ないではありませんの」


 ジト目でこっちを見てくるセレスティナに、俺は「人には向き不向きがありますので」と微笑んだ。


「あの手の男性はえてして、気の強い女性を好むのです。睨みつけられたり、露骨に嫌悪されたり、それこそ踏みつけられたりですね」

「アヴィナ様もそうすればいいではありませんの」

「おそらく、わたしがやると『ごめんなさい』と泣いて謝られる方が多いでしょうね」

「……ああ、神々しさが裏目に出ているんですのね」


 神から見放されたような心持ちになってしまうと、さすがにSMプレイを楽しむどころの騒ぎではなくなる。

 あと俺はなまじそういう素養があるだけにプロを相手にする感覚になるだろうし。

 ガチの人にとっては素人から引き出される反応のほうが美味しかったりする。


「そうです。わたしの場合、跪いて感謝されるほうが多いですね」

「なにもしていないのに感謝されるというのも、それはそれでわけがわかりませんわね」


 とはいえ、そういう現場に同席したこともあるセレスティナは「ありえない」とは言わない。


「生まれてきてくれてありがとう、ということでしたら、わたくしにも感謝していただきたいですわ」

「そういうところが好まれているのではないでしょうか」


 セレスティナはもう一回俺をジト目で見てから「こほん」と息を吐き出して。


「アヴィナ様はそういう『信者』の方を放置していますわよね?」

「ええ、まあ。やめてください、と言うような事柄でもありませんので」


 もちろん、本気で神の教えを学びたいとかいう場合は相談に乗っているが。

 俺を前に祈りを捧げ始めるような輩はどうしていいかわからないというか、ほどほどにして欲しいとは思うものの、それ以上どうにもならないというか。




     ◇    ◇    ◇




「なんだか、学園生徒の『奇跡』適性が上昇傾向にあるのよね」

「それは、明らかにアヴィナ様の影響では?」


 寮の自室にて呟いた俺に、エレナが淡々と応じた。


「と申しますか──他者の奇跡の適性などというものが、わかるものなのですか?」

「ええ。慣れてきたせいかしら、なんとなく、ある程度わかるようになってきたの」


 それに基づくと、エレナが指摘した通り、俺を「信仰」している者を中心に、徐々に奇跡適性が上がっているのがわかる。


「適性が上がるって言ってもほんの少しずつだけれど」

「しかし、それはアヴィナ様が真に『信仰対象』になったということなのでは?」

「そうなんでしょうね」


 俺は人を超えて神になった。

 神になったということは、人の身で奇跡を直接行使できるということ。

 さらに言えば、俺を信仰することが間接的に「大元の一柱」への信仰へも繋がるということ。

 信心深い人間は、奇跡を行使しやすくなる。

 神様だって自分のことが好きな人間にはちょっとした贔屓をしてくれるものなのだ。


「ふふん。ようやく周りの方々も、アヴィナ様の真の素晴らしさがわかってきたようね」

「その割にはメアリィ、あなたが奇跡の力に目覚めた話は聞かないのだけれど」

「ああ、メアリィはわたしを信仰していると言うより、わたしを溺愛しているせいじゃないかしら」


 下着がなくなったと思ったら洗って返されたり、なんか着替えの際に深呼吸が多かったりを思い出しながら告げると、メアリィが泣きそうになって。


「事実ですけれど、ひどいですアヴィナ様! 事実ですけれど!」


 いや、事実なんかい。

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