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Veil lady ~転生美少女は、異世界にえっちな衣装を広めたい~  作者: 緑茶わいん
第五章

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えっちの伝道者 アヴィナ -2-

「機会を与えて貰えるのは嬉しいけど、僕を悪だくみに巻き込まないでくれないかな?」

「悪だくみとは人聞きの悪い。これはれっきとした趣味の集いですよ、ねえセレスティナさま?」

「ええ、その通りですわ」

「セレスティナ嬢……。アヴィナの悪癖にお付き合いいただかずとも良いのですよ?」

「あら、わたくしとアヴィナ様はお友達ですもの。お互いに楽しんでいるのですわ、ねえアヴィナ様?」

「はい、もちろんです」


 呼び出された義兄フラムヴェイルは「あ、これだめだ」という顔で額に手をやった。


「……まあ、いいとしよう。それで、どんな衣装を作るつもりなんだい?」

「今回はセレスティナさまの衣装ですので穏便ですよ。というか、お義兄さまもなかなかにやる気ではありませんか」

「……それはまあ。絵の用意をして来いと言われれば、これくらいはね」


 準備万端整えた義兄は若干気まずそうに目を逸らした。


「こほん。さて、フラムヴェイル様。アヴィナ様とお話していたのですけれど、わたくしも制服を部品ごとに分けられるようにしたいんですの」

「アヴィナと同じ仕様ということなら、実家に絵が残っていると思いますが」

「それではつまらないでしょう? ですから、わたくしなりのアレンジを加えますわ。例えば──これですわね」


 と、セレスティナが手にしたのは黒く光沢ある素材の手袋。


「ふむ。防水素材ですか。アヴィナと公爵領で作ったものとは別ですね?」

「ええ、片面の防水加工のみであればそう手間はかかりませんもの」


 そう言いきれるのも設備やノウハウがしっかりしているアーバーグ家ならではだが。


「こちらは手首よりも少し長いくらいのもので、着脱用にスリットを入れ、金具で留められるようにしております」

「これでしたら着脱で詰まることはありませんね」

「ええ。あの独特の着心地は両面加工でないと味わえませんけれど、普段使いには裏地が布のほうが手軽でしょう?」

「光沢は片面加工でも変わりませんものね」

「……ああ、本当にセレスティナ嬢までアヴィナに毒されてしまったようで」


 さっきから失礼じゃないかこの義兄。

 まあ、完全に俺が悪いので文句は言えないが。


「それから、アヴィナ様に教えていただいて革製品にもあらためて目を向けましたの。……例えばこうした革手袋なのですけれど」

「形状は女性用に合わせてありますが、騎士が用いるような実用品ですね?」

「ええ、そうですわ」


 侯爵家のメイドが持ってきたのは良く言えば機能美のある、悪く言えば武骨な手袋。


「わたくし、お洒落とは自由なのだと気づきましたの。こうして手袋だけに野性味のある品を選ぶのも、趣が変わって良いのではないかしら」

「……なるほど? 私はつい、既存の価値観で考えてしまいますが……」

「あら、フラムヴェイル様。それでは新しい服飾など生み出せないのではなくて?」


 これにはフランも感銘を受けたのか、目を開いて「仰る通りかもしれません」と頷いた。


「食わず嫌いをしているだけでは服飾画で大成するなど不可能。……アヴィナの趣味にももう少し好意的な目を向けてみるべきかもしれません」

「わかってくださいましたか、お義兄さま」

「ああ。君の纏う衣装はどれこれも破廉恥だとは思うけどね」


 いいんだよ破廉恥で、それを求めているんだから……って、これは口に出さないが。


「ですが、実用品ですと裏地が荒く、女性の肌では怪我をしてしまうのでは?」

「そこはきちんと整えていただいていますわ。荒く見えるのは外見だけ、ですわね」

「セレスティナさま、革製品でしたらチョーカーはいかがでしょう?」

「チョーカー……首輪ですの? 奴隷を連想するのでさすがにどうかと思うのですけれど」

「ですので、こちらは『実用から離れた』形にするのです。奴隷用と見分けのつくお洒落な意匠であれば問題ないでしょう?」

「なるほど! 布のチョーカーはお洒落で用いられていますものね」


 細く華奢な造りにして小さな宝石なんかも散りばめれば、どう見ても奴隷のそれじゃないだろう。


「革手袋は、剣を握る程度ならともかく細かい作業には向かないが……使用人が常につくご令嬢方であればそれほど問題はありませんね」

「ええ。邪魔になれば脱いでメイドに預ければいいのです」


 戦いに赴く騎士にも小姓がついたりはするとはいえ、自分のことはある程度自分でする関係上、荷物はできるだけ減らす。こういうところは令嬢ならではの利点である。

 実用ではなく、あくまでも格好良さだけを求めて物を増やすという考え方だ。


「見た目だけであれば、装飾過多な宝剣を下げて歩くのはいかがでしょう?」

「あら、いいですわね。剣を振るうのは体型に悪影響ですし、忌避されるのは仕方ありませんけれど、女性騎士の凛々しさに憧れるものはありますもの」

「むう。二人の会話を聞いていると、この国の貴族令嬢同士のそれとは思えないな。良くも悪くも、既存の観念から脱却しようとする想いが強すぎる」

「それくらいでいいのですよ、お義兄さま。こうして様々なものを試して、より良いものを残していけば良いのですから」


 上位の貴族令嬢が珍しい装いをすれば、下の位の貴族令嬢が真似をする。

 そうして流行が生まれるわけだが、ここでも取捨選択が起こるだろう。


「そうだね。そういうことなら……僕は、形状について意見をだしながら、片っ端から絵にしていけばいいわけだ」

「お願いいたしますわ。わたくし、絵画は多少嗜んだ程度ですもの」

「わたしも絵心はありませんし……絵具がドレスにつくのは避けたいですものね」


 豪華なドレスを着ていると「汚れても良い服に着替える」のに時間を食ってしまうのが難点である。


「いいですわね。こういう話ならいくらでもできそうですわ」

「時間の許す限りお相手いたしますよ、セレスティナさま」

「二人とも元気だな。……まあ、僕はいくらでもというわけにはいかないけれど、できる限り力になるよ」


 自分の糧にもなるからと、フランは積極的に俺たちのアイデアを絵にしてくれて。

 俺たちはそれを買い取るという形で義兄の労力に報いた。

 大した額ではないものの、フランが服飾画家として自分で稼いだ貴重な金ではある。


「では、これらを片っ端から試作させますわね」


 依頼された工房の忙しさはあまり考えたくないものの──セレスティナとしてもそこまで大急ぎではなかったこともあって、衣装の試作品は順々に出来上がって。

 早いものは年度替わりを待つことなく、学園内でお披露目された。

 第一王子の婚約者でもある侯爵令嬢の新しいファッション──しかも、俺のお墨付きまであるということで、これに注目してくる生徒は少数ながらいた。


 従来の伝統的なファッションに不満を持っていたものの、自分で新しい流行を作れるほどの勢いはない者たち。

 そういう令嬢がこぞって、俺とセレスティナのところに集まってきたのだ。


「お願いいたします。私たちも、お二人の趣向に参加させてくださいませ」


 先進的お洒落同盟(仮)の結成である。

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