パーティーに招待されました(1/2)
翌日。目が覚めると、フローランさんはすでに寝室を出ていた。
わたしものっそりとベッドから這い出す。
昨日の夜と同じで、何とかアドバイザーさんたちにたっぷりと時間をかけて身支度を手伝ってもらい、食卓についた。
ご飯が出てくるのを待っていると、ナデジュちゃんが入室してくる。
「おはよう、義姉様」
「おはよう、ナデジュちゃん」
朝の挨拶をしている間に、朝食を載せたワゴンがやって来た。わあぁ! トーストだ! しかも、卵とバターに浸して焼いたやつ! かかってるハチミツも美味しそう!
何より、今回はちゃんとわたしの分もある! 涙が出るほど感激しながら、出された分を片っ端から胃に詰め込んでいった。
「若奥様、招待状が届いておりますよ」
使用人がやって来て、わたしに銀の盆を差し出す。その上に山のように乗っている手紙を見て、トーストを喉に詰まらせそうになった。
「こ……これ、全部わたし宛て!?」
慌ててミルクで口の中のものを飲み下しながら尋ねる。使用人は「はい」と頷いた。
「意識を失っておられた期間の分も入っております」
それにしたって、たったの二日間でしょう? そんな短期間でここまで招待状って溜るものなの?
手紙を全て受け取り、中身を一つ一つ確認していく。劇場を貸し切って行われる音楽会、騎士団のお偉いさんも出席する馬上槍試合……なんだかすごそうな集まりばかりだ。
「わたしのところには、いつもこんなに色んな招待が来てたの?」
「うん。それで、義姉様は大抵のところには出席してたよ」
ええ!? 嘘!? わたし、インドア派なのに!
でも、五年後のわたしは違うのかしら? だから部屋に本がなかったの? 一人で静かに読書するよりも、華やかなパーティーでワイワイ騒ぐ方が好きってこと?
「招待、受けた方がいいかしら……?」
浮いちゃったりしない? 「大食い大会と間違えたの? ここはデブの来るところじゃないのよ!」とか言われちゃうんじゃないの?
……いや、今のわたしはナイスバディーだったわ。それに加えて、誰もが羨む美貌の持ち主なんだもの! もっと自信を持たないと!
「義姉様はいつも兄様と一緒に出てたよ」
ナデジュちゃんが教えてくれる。
「一人じゃないから安心して。それでも心配っていうなら、アタシもついていってあげてもいいけど」
「本当に!?」
ナデジュちゃん! とってもいい子! わたしのトースト、ちょっぴり分けてあげる!
味方がいるなら、慣れないパーティーでも楽しめそうだ。
それに、今のわたしにはありがたいことに夫もいる。それってつまり、ダンスの相手が見つからなくて壁際にポツンと取り残されなくてもいいってことだ。
「義姉様、確か今夜もどこかの夜会に招待されてなかったっけ」
ナデジュちゃんが考え込むような顔になる。
「病み上がりだし、別に出席しなくてもいいと思うけど……どうする?」
「……出るわ」
二十二歳のわたしがいつもしていたようなことに挑戦すれば、その内記憶も戻るかもしれない。
大丈夫! 今のわたしは最高にキラキラしてるのよ! パーティーぐらいへっちゃらだわ!
「ナデジュちゃん、着ていくドレスを選ぶの手伝って!」
わたしは席を立つ。
「どうせなら、会場で一番目立ってやるわ!」
「……頑張ってね」
ナデジュちゃんが何やら意味ありげな笑みを浮かべる。
でも、わたしはそんな反応を特に気にせず、早速今夜に向けての準備を始めることにしたのだった。




