第十五考 七曜神と神の信仰
金曜日、銀曜日、火曜日、地曜日、水曜日、風曜日、森曜日。
これが、現在ルドモンドで使われている曜日である。
対応する神々「七曜神」は以下の通りだ。
金の神 ドルーミ・イゴ
金、富、貨幣、公正、裁きを司る。
鉱物の金、富、貨幣を象徴する。
金色やゴールドで表される。
まっすぐな瞳の老婦人で、右手に硬貨の袋、左手に天秤を持っている。
富の繁栄を願う神だが、同時に起きる争いを憂い、公正と裁きを下す神でもある。
銀行や司法の場で礼拝されている。
銀の神 バッソ・カルロ
愛、恋、性愛、美、香りを司る。
愛の神で、民の恋路を応援する。美の神でもある。
銀色やシルバーで表される。
髪を巻いた美青年で、右手に銀器、左手に香油の壺を持っている。
彼の持つ銀器は、愛の証であり、恋の呪いであり、性愛の道具でもある。
結婚式や美容、ファッション店で礼拝されている。
火の神 ルーマ・リー・クレア
火、鍛治、陶工、歓迎、奮起、汗、運動を司る。
筋肉質な女性で、右手に火鉢、左手にろくろを持っている。
赤色、ルビーで表される。
燃えるような情熱を持ち、右手の火で鉄を打ち、左手の火で土を燃やす。
彼女の元へ来る客を歓迎し、汗を流させ奮起を促す。運動の神でもある。
鉱山や工場、運動場で崇拝されている。
地の神 マルク・コエン
土、家、農民、豊穣、貯蓄、守護を司る。
禿げ頭の農夫の老人で、両手に麦の穂を持ち、肩に鳥が留まっている。
黄色、琥珀で表される。
土地と家を守る守護神である。
彼の持つ麦は尽きることなく、民の飢えを満たす。
農家という立ち位置ゆえに大陸でもっとも信仰されている。
農家、軍や警察で礼拝されている。
水の神 イホラ・サシュ
水、平等、清浄、許し、便通を司る。
半分目を閉じ、水のドレスを纏っている。
青色、サファイアで表される。
水には性別がなく透明であり、全てに平等である。
川神であり、海や湖の神ではない。
心の醜さや体の老廃物を洗い流す、許しとお通じの神でもある。
食堂や酒場、病院で崇拝されている。
風の神 リンド・ロッド
風、旅、便り、情報、自由、運命を司る。
爽やかな細めの好青年で、右手に巻物、左手で帽子を押さえている。
緑色、エメラルドで表される。
手紙を運び、旅路の加護を願う。手紙は情報を表す。
帽子を押さえるのは、運命を風に左右されず、自らの意思で決める事を意味する。
交通や郵便、新聞社で礼拝されている。
森の神 ミフォ・エスタ
森、本、知性、沈黙、癒し、思索を司る。
目をつぶる髪の長い女性で、右手に羽根ペンを持ち、左手で本を読んでいる。
黄緑、ペリドットで表される。
森の木かげは沈黙と安らぎを与える。
勉学の神で、知性と思索を尊ぶ。学者やアルバの神でもある。
学校や役場、本屋で崇拝されている。
七曜神は、百柱近い神々の中から、皇族とアルバらが熟考し、性別や職業、役割などバランスを吟味されて選出された。そのため非常に親しみやすく、曜日の概念とともに、瞬く間に民族たちに広まった。
彼らは家業や仕事場に、対応する神の祭壇を飾った。ひとつの神にこだわる事なく、結婚式は銀の神、豊穣祭は地の神、入学式には森の神といった、祭りや日々の暮らしに応じた神々を、満遍なく信仰した。休日は「神々に休んでいただく」という名目のもと、職業に応じた曜日に休むようになり、生活の質も向上した。
こうして神の信仰は、皇族信仰とは切り離され、民族たちの暮らしの中へ根付いていった。これにより皇族への信仰心がグッと薄まっていく事になるのだが──この時はまだ誰も知り得ず、皇族は自分たちの神々が無事広まった事に安堵した。





