第十四考 宗教と曜日の関係
皇暦以前、ルドモンドには人間が信仰している神様がいた。
各地域で姿や名前は違うものの、神々は自然や事象、祭りや仕事などに対応し、人間たちは神の祭壇を作り、日々の暮らしの合間に崇めた。しかし災厄で多くの人間が消失すると同時に、神々も失われた。
皇族たちは、かつて一族が信仰していた神を忘れぬよう丁重に扱った。また、わずかに生き残っていた人間──現在の貴族からも、どんな神様を祀っていたか蒐集し、その神々も共に祀り始めた。このように、皇族と貴族たちは熱心に神を信仰した。
だが、民族は無頓着だった。
多くの民族にとって、信仰の対象は神ではなく、皇帝だったのだ。神を信仰していた民族も中にはいたが、ごくわずかだった。やがて一部の皇族信者により「皇帝同神論」が唱えられるようになる。ついに過激派も現れ、人間神の信仰は異端だとして破壊活動を始めてしまった。
時は皇暦2700年代、破壊活動は皇族の耳にも入り、内容を知って仰天した。皇族たちの理想と完全に真逆の行動だったからだ。それまで、神と宗教について民衆への啓蒙活動をあまり行ってこなかった。皇族たちは反省し、アルバとともに対策を考えた。
当時、街道と港が整備され、大陸外からの輸出入が本格的に始まっていた。輸入された物の一つに「曜日」の概念があった。それまで季節と星座の動きから、年や月の概念はあったが、その区切りや明確な日数については曖昧だった。
輸入された「曜日」は向こうの神々の名前がついていたが、各地で勃発し始めた「皇帝同神論」を収めるべく、アルバらは、これをルドモンド独自の神に変更し、導入することを提言した。皇族も貴族も率先して賛同し──この選定にかなり揉めるのだが──何度も話し合いを積み重ね、曜日に対応した「七曜神」が誕生した。





