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【ルドモンド大陸誌】  作者: 宝鈴
第四章 民族について
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第十一考 民族目録

 現在ルドモンドには約200もの民族がいる。

 分類の中で最も多いのが哺乳類で、最も少ないのが両生類だが、彼らは爬虫類とまとめられがちなため、実質キメラ民族が一番少ない。分類別にいくつかピックアップしたので、紹介しよう。



──哺乳類──


巻鹿族(まきしかぞく)

 いわずと知れた、ルドモンドで最初に生み出された民族だ。鹿のようにスラリとした体躯の持ち主が多い。動物の鹿と違い、性別問わず立派な鹿角をつけている。アルバや権力者にも多く、特に古代から続くアルバ家系のエクセルシア一族は、数々の呪文を発明した大陸で最も有名な一族である。草食。


森栗鼠族(もりりすぞく)

 ふさふさな前髪にモフモフな尻尾を持つ。ドワーフのようなずんぐりした体躯が多い。巻鹿族の次に生み出された民族である。草木と自然を愛し、美しい庭があったら森栗鼠族の家だと思っていい。ちょこまかした動きを生かして意外と軍や警察でも活躍している。雑食。


芝兎族(しばうさぞく)

 可愛らしい兎の耳に、たくましい太股と足腰を持つ。俊敏で身体能力が非常に高い。性格は愛嬌があり親切だが、自立心が非常に強く、心の中ではあまり他人を信用しないフシがある。芝兎族の兄弟を題材にした魔術師の絵本シリーズがある。草食。


星白犀族(ほししろさいぞく)

 色白で、鼻穴の上に大きな犀の角が2本ある。力が非常に強く、心優しい。耳は意外と可動域が広く、歩くだけでぴょこぴょこ動く。第10代皇帝が、砂漠で夜に瞑想を続けて生み出した民族とされる。信仰心が強く、神職に多く就いている。草食。


土栗鼠族(つちりすぞく)

 小さな耳に小さな尻尾を持つ。名前の通り土を好み、山や土木関係の仕事に就いている事が多い。生真面目で何事にも粘り強く当たる。乾燥地帯であるシュタット州に多く住んでいるが、山とあればフットワークが軽いので人口範囲は広い。雑食。


砂鼠族(すなねずぞく)

 鼠の丸い耳に、しなやかで細長い尻尾を持つ。ルドモンド民族の中でもひときわ家族愛が強く、一家総出でバリバリと働く。家族愛が強すぎて兄弟がなかなか結婚しないため、多産のわりに人口はあまり増えないようだ。雑食。


円猫族(まるねこぞく)

 猫の耳に尻尾を持つ。顔が丸く小柄な人物が多い。性格はしたたかで、ちゃっかりしている。金にがめついが、その後の金銭管理はいい加減である。フットワークが軽く、だいたい大陸のどこにでもいる。気づけばあなたの後ろにもいる。肉食。


桃白豚族(とうはくとんぞく)

 ツヤツヤとしたピンク色の肌を持ち、綺麗好き。たとえ貧しくとも、身に着ける衣類はなるべく高級なものを選択する。オシャレすぎる農民はだいたい桃白豚族だと思っていい。髪のセットと尻尾のカールに命を懸ける。あまり深くは考えず、信念のままに猛進する。雑食。


崖牛族(がけうしぞく)

 保守的な思考の持ち主で、不便でも昔の暮らしを有難がったり、古い物をなかなか捨てることができない。非常に正義漢が強く、見ず知らずの他人まで必死で守ろうとするため、警察官に多い民族だ。泳ぐのが苦手なので軍部にはあまりいない、泳ぎは泉牛族の分野だと思っている。草食。


青羆熊族(あおひぐまぞく)

 ルドモンドで最も大柄で身長が高い民族のひとつ。内向的で、人と長時間仕事することを疎むが、短時間の触れ合いは嫌いではない。そのため一国一城の店を持つことを好み、飲食業に多い。大きな手を器用に動かし、繊細な料理を作る。雑食。


金熊族(きんぐまぞく)

 だいたい金とつく民族は王様志向が強い。金熊族も例外ではなく、シュタット州を支配し王様然としている一族がいる。青羆熊族よりひとまわり背が低く、見た目はずんぐりしている。性格は豪快で豪奢なものを好む。金髪が多い。雑食。


蟻食族(ありくいぞく)

 人差し指と中指が肥大していて、大きな曲がり爪を持つ。緊張したり集中すると長い舌をチロチロ出す癖がある。アリクイの仲間はこの蟻食族しかおらず、どこか孤独を感じている。顔立ちが似ているせいか洞穴熊族と仲がいい。市場では食糧の調達がなかなか大変なため、一族で専用蟻塚を養殖している。蟻食。


黒輪猿族(くろわざるぞく)

 陽気な性格で、人前に立つことを好む。しなやかで長い縞模様の尻尾と身体を活かし、ダンサーを生業とすることが多い。家族愛が強いが女系社会のため、男は孤立しがちである。黒輪猿族の少年は吟遊詩人として旅人になる夢をよく見る。飲み会には必ず中心にいる。雑食。


森狐族(もりきつねぞく)

 夜行性。森と名づいている民族は比較的早くに生まれた民族である。堂々とした尻尾と耳を持つ。好奇心が強く、情報通が多い。家族愛はあるが、同時に旅と自由を愛するゆえ、離れていても信じる心が強い。燃えるような赤髪が多いが、たまに黒髪の人間もいる。肉食。


洞穴熊族(ほらあなぐまぞく)

 夜行性。白と黒のツートンカラーを好む。静寂と安定を好み、じっくりと本を読んで思索にふけるので学者に多い民族だ。ただしアルバにはあまりいない。神経質で時間に厳しい一方で、カッとなると自暴自棄になる面も持つ。雑食。



──鳥類──


円梟族(えんふくろうぞく)

 夜行性。鳥好きな第12代皇帝が生み出した、鳥族の中では最も古くからある民族のひとつ。温厚でずんぐりとしており、のんびりコツコツと努力する。手が翼になっており、どうみても不便な見た目だが、意外と器用に動かせる。肉食。


灰兎梟族(はいみみづくぞく)

 夜行性。マイペースで何を考えているか分からないとよく言われる。しかし身体機能は高く、中でも反応速度はかなりのものだ。耳のような羽角を持つが、自分では動かせない。円梟族と違い新しくできた鳥類民族のため、背中に翼が生えている。肉食。


蒼鷹族(あおたかぞく)

 きりりとした鋭い瞳と、背中に煌めく青い大きな翼を持つ。鳥類の中で、もっとも強靭な民族のひとつ。崖が多いルオーヌ州に多く住んでいる。昔、怪物によって一族まるごと亡くした過去があるため、常に武器を隠し持ち、危険に備えて鍛えている。肉食。



──爬虫類・両生類──


金鰐族(きんわにぞく)

 金色の鱗の立派な太い尻尾を持つ。金銭面に鋭く、リーダーシップも強いが、強欲な傾向がある。実業家や政治家に多いが、家族同士でもいがみ合うので、家系があまり長続きしない。食事をすると涙を流す。肉食。


火蜥蜴族(ひとかげぞく)

 沼地であるリオザ州を支配している一族のひとつ。背が高く、しなやかで強靭な見た目をしている。他の民族よりマナ多量保有者が発生しやすいが、珍しくないためかあまりアルバになりたがらない。現代でも尻尾を切る私刑法がある。雑食。


蟇蛙族(がまがえるぞく)

 夜行性。ずんぐりした民族で頑固で偏屈な性格が多い。孤独を好むのであまり結婚しないが、卵を大量に産むのでなんとか人口が保たれている。真面目に勉学に取り組むので、両生類・爬虫類民族の中では学者やアルバになる率は高い。昆虫食。



──キメラ──


羊猿族(ようえんぞく)

 第13代皇帝によってルドモンドで初めて作られたキメラ民族である。羊の頭角に猿の尻尾を持つ。その成り立ちから、最も叡智に近い民族とされ、アルバ家系にも何家族か名を連ねる。性格は猿の面が強く、通常の羊族よりも喧嘩っぱやい。一方嗜好品は羊寄りの草食だ。


猫狼族(ねころうぞく)

 猫の耳に狼の尻尾を持つキメラ民族である。第13代皇帝が2番目に作り上げた。キメラを2族も作ったのは100代以上続く皇帝の中で、結局彼ひとりだけに終わった。猫のようなしなやかさと狼の強靭さを持つ。性格はかなり喧嘩っぱやい。肉食。

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