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最終話 帰還

最終話です。

最後までお楽しみいただけると幸いです(*^_^*)


 最終話  帰還



 酒呑童子邸での宴会は、みんなが本当に楽しそうに騒いで盛り上がっている。


 一通り翔鬼への鬼達の挨拶回りも終わって一段落した頃、どうしても気になった。

 三大鬼神が座っているのに、やはり慶臥(けいが)の姿はなかったのだ。


「なぁ、堂刹。 慶臥の姿が見えないが···」

「あっ···忘れていた。 あいつなら、自分の薬草園に戻った。 お前に挨拶したがっていたが、いつまでも起きてこないから(しび)れを切らしてここを出て行ったんだ」

「そうか···」


「くれぐれもお前によろしく伝えてくれと、何度も念押しされていたのを忘れていた」

「八岐大蛇を倒しても慶臥に影響はなかったんだな?」

「いや···()()()姿()は失った」

「えっ?」

「黄鬼の姿になったのだが、元に戻れたと喜んでいたし、不滅病(ふめつびょう)も発病しなかったようだ」


「そうか······それは良かった······うん···よかった」



 一番良い結末のように思えた。 最後に会う事は出来なかったが、なんだか本当にうれしい。



···ワンランク下の鬼の姿になったとしても、元の自分の方が嬉しいのか······



···そうだ······元の姿といえば、鎌鼬(かまいたち)達も本来と違う姿になって久しい······



「なぁ、翔斬刀(しょうざんとう)白癒羽(はくゆう)。 もう元に戻ってもいいのじゃないか?」

「······もう用済みでしょうか?···」



···要らない物のように言われると···困ったな···



「君達をみんなに紹介したいんだ。 俺と白狼がこの妖界で生きていられたのは君達のおかげだから」

「···もったいないお言葉···」

「それに倒蹴(とうしゅう)にも早く君達を逢わせてあげたいし」

「「ありがとうございます」」


「じゃあ、名前を呼ぶぞ」

「「はい、お願いします」」

斬切(ざんせつ)癒医(ゆい)ちゃん」

「「はい」」



 翔斬刀は腰から離れ、中から【翔斬刀】の文字が出てきてフワッと消えた途端、両手に石魂刀の鞘を捧げ持った鎌鼬(かまいたち)の姿が現れた。

 同じく白狼の翼の一対が離れ、中から【白癒羽】の文字が出てきてフワッと消えた途端、一回り小さな鎌鼬が現れた。


 翔鬼は差し出された石魂刀の鞘を受け取った。



「二人とも、本当にありがとう」


 翔鬼が頭を下げ、白狼も一緒に頭を下げる。


「「とんでもございません」」


 翔鬼は恐縮している彼等の肩をポンポンと叩いた。 





 前の方の数人の鬼達が、突然現れた鎌鼬達に驚いていてざわついていたのだが、翔鬼が立ち上がって手を挙げると、会場がシンと静まり返る。



「みんな聞いてくれ! 彼等が俺と白狼が妖界に来たばかりの時から力になってくれていた鎌鼬の斬刀(ざんせつ)癒医(ゆい)ちゃんだ。 この町の北の町に彼等三兄弟の長男の倒蹴(とうしゅう)が住んでいる」


「「「鎌鼬三兄弟?!······」」」


 どよめきが起きた。 鎌鼬三兄弟とは誰もが知るほど有名なのだそうだ。




「斬切は俺の刀として、癒医ちゃんは白狼の翼として。 皆の傷の手当ても彼女がしてくれていた」


「これはこれは···我々もお世話になりもうした」


 ぬらりひょん達、宝蘭までもが頭を下げたので、ちょっと驚いた。



「これからも末永く、彼等の事をよろしく頼む」

「「「ウオッス!!」」




 斬切と癒医の為の(ぜん)も用意されて、彼等も嬉しそうに久しぶりの食事を楽しんだ。





「そうだ、ぬらりひょん。 この(さや)を保管しておいてくれ」


 翔鬼はぬらりひょんに石魂刀の鞘を差し出す。


「大切に保管させていただきまする」と、石魂刀の鞘を押し頂いた。


 

 ◇◇◇◇



 みんなでよく飲み、よく食い、よく騒いだ。


 もちろん翔鬼は酒は飲んでいない。 また翌朝まで寝てしまうと困るので、美味しい桃ジュースやリンゴジュースを飲んでいる。




 みんなが酔いつぶれて静かになってきた。


「なぁ堂刹」

「なんだ?」

「海の妖怪の魁皇(かいおう)だが···八岐大蛇を倒したら、皆を連れて海の中にある磯の碕町(いそのさきまち)に遊びに行くと約束したんだ······一緒に行ってくれるか?」


 堂刹の顔がいつになく明るく子供のような満面の笑みになった。


「おう!! もちろんだ!! 行くぞ! すぐに行こう!! 今すぐに行こう!!」


 こうなると苦笑するしかない。


「わかったから、少し待て」


 清宗坊や抗牟(こうむ)達、海に行っていない者達にも確認すると、二つ返事で承諾してくれた。


「白鈴とぬらりひょんも、もちろん行くよな?」

無論(むろん)でござります。 約束したものを(たが)える訳にはいきませんですからのう」

「もちろん行くわ」

「よし! 決まり!」



 ◇◇◇◇



 ということで、翔鬼と八人衆は海の中にいた。

 

 前回海に行かなかった者達は当然、海の中は初めてで、小学生の遠足のようにはしゃいでいる。

 


 もちろん磯の碕町に着くと、大歓迎を受けた。


 陸の者達は初めての海の町に感激し、海の者達は珍しい陸の妖怪達に驚いていた。 他の海の町からも見たこともない海の妖怪達が翔鬼達を見るために集まり、それは大変な騒ぎだった。



 中でも魁皇と堂刹は意気投合し、この機に[江の坂町]と[磯の碕町]を姉妹都市にしよう!と(勝手に)決めた。 


 お互いの町の行き来が自由にできるようにして、それぞれの特産品などの輸出入も自由に行えるようにしようと(これまた勝手に)取り決めた。



 実は堂刹と魁皇が酒の勢いで言い出して勝手に決めた事だが、冷静なぬらりひょんが磯の碕町の主な者達と細かい取り決めを行ない、正式な姉妹都市となったのだ。





 翔鬼達が陸に戻る時には、数人の人魚(にんぎょ)魚人(ぎょじん)が一緒に陸に来た。

 

 姉妹都市の細かい取り決めはもちろん、江の坂町以外にも中の津村や周辺の町の見学と商談をして回っていた。



 長い妖怪の歴史でも陸の妖怪と海の妖怪の交流は初めての事らしい。


 これからもどんどん広がっていくだろうとぬらりひょんが嬉しそうに言っていた。




 ◇◇◇◇◇◇◇◇




 昼の季節に入った頃に海の妖怪が戻ってゆき、町に静けさが戻った。




「そろそろ北の国に戻りますわ」


 宝蘭が少し残念そうに言いだした。


 最近では素直になって、よく笑い、いつも楽しそうにしているように見えた。 しかし自分が統治する国をいつまでも留守にするわけにはいかないという事だ。


 そして抗牟も戻るという。


「一度、千の里町に戻ろうと思います。

 そのままそこに棲みつくかどうかは分かりませんが、八岐大蛇を倒した報告もしたいですし、家を用意してくれていると言っていましたので、とりあえず···」

「そうだな。 宝蘭も自分の国をいつまでもほったらかしにしておく訳にもいかないだろうし、千の里町のみんなも、抗牟の戻りを待っているだろうからな」



 そうして二人は他の八人衆に見送られて、西と北に分かれて飛んで行った。





「じゃあ、俺達もそろそろ帰るわ」


 翔鬼がそう言うと、全員が黙り込んだ。


 多分二度と会う事はないだろう。 だが、引き留めることもできない。


 いつかはこの時が来るのは分かっていたのだが、いざ耳にすると誰も言葉が出てこなかった。




 全員で翔鬼·····いや、翔太(しょうた)の家の近くまで飛んで行った。




 今までは幽鬼を気にして高く飛ぶことは殆どなかったのだが、今はそんな事を気にする必要はない。



 高い空の上からの緑豊かな日本の眺めは美しい。


 八岐大蛇が眠る富士山は、相変わらず壮大で存在感を主張している。


 幽鬼が作った枯れ木の道も今では殆どわからない。 こんなに美しい一面緑の日本を空からゆっくりと見ることは二度とないだろう。



 翔鬼はこの美しい光景を目に焼き付けた。



 ◇◇◇◇



 家のすぐ近くに舞い降りた。


 初めて結界(カーテン)(くぐ)った辺りに結界があるのが見えた。 その前まで行く。


 結界を通した先に自分の家が建っているのが見えた。




「みんな。 今までありがとう」

「お礼を言わないといけないのは私達の方よ。 元気でね」


 白鈴は翔鬼と白狼にハグをした。



「誠にありがとうございました」と清宗坊が頭を深く下げる。



「翔鬼様······俺の事を忘れるなよ」


 敬之丞(たかのじょう)はボンと大きな姿になって翔鬼に抱きつく。 デカい首にギュッと抱き着いて、頭を撫でてあげた。



 今度はぬらりひょんが手を差し出した。 翔鬼と白狼は手を伸ばして握手をする。


「誠にありがとうございりました。 色々と勉強になりもうした」

「うん······あっ! 勉強といえば知識の本! 今までありがとう! 玄武(げんぶ)

《はい···こちらこそありがとうございました》


 翔鬼の体から分厚い本が出てきたかと思ったら、フッと消えてしまった。



「堂刹、楽しかったぞ。 みんなによろしく言っておいてくれ」

「もちろんだ」


 堂刹は肩ほどの身長の翔鬼を引き寄せ、抱きしめた。 そして白狼と握手をする。


「白狼、こいつを頼んだぞ」

「任せろ」



挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)




 全員との挨拶を終えて、翔鬼と白狼は頷きあった。


「じゃぁ、行こうか、()()

「おう! そうだな()()

「おう!」


 二人の体から【翔鬼】と【白狼】という言葉が出てきてフッと消えた。 すると翔鬼と白狼の姿が小さくなってゆき、人間の子供と白い犬の姿になった。



「じゃあ、みんな元気で!!」



 翔太はシロの(たてがみ)を握って、二人で一緒に結界(カーテン)(くぐ)っていった。




 ◇◇◇◇◇◇◇◇



 結界(カーテン)を潜るとジージーとうるさいセミの鳴き声が突然耳に飛び込んできて、()だるような真夏の日差しがジリジリと肌を焼く。




 携帯の電源を入れると、友達からのラインが幾つか入っていたが、案の定母親からはラインも電話も入っていなかった。


「見てみろよ白狼···じゃなくてシロ。 やっぱり母さんからの連絡は入ってなかった。 流石(さすが)()()()()な母さんだな」


 シロはじっと翔太の顔を見上げる。



「そうか···もう話すことはできないんだった」


 何とも言えない寂しさに襲われ、大きな溜め息をついた時の事だった。


「じゃあ、俺とは話せるか?」

「えっ??!!」


 どこからか声がした。 しかし白狼の声ではない。


 聞き覚えのある声だ。


「もしかして?!」

「俺だよ翔鬼様」



「!!!」



 翔太の肩に小さな土蜘蛛が乗っていた。



挿絵(By みてみん)


  


      END






長い間ありがとうございました!!

(*^▽^)/★*☆♪


妖怪は初めてで、文章で補えない所を拙いイラストで補わせてもらいました。

イラストを描くのも初めてで、下手くそな絵が、お目障りでなければ幸いです(;^_^A


今は考えていませんが、せっかくチビ敬が人間界に来たので、番外編や続編が書ければいいなと、思っています。 その時はよろしくお願い致します!


感想、レビュー、評価等をいただけると幸いです

( 〃▽〃)


本当にありがとうございましたm(_ _)m



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― 新着の感想 ―
[良い点] 長い間、お疲れ様でした! 読んでいてとても楽しい小説でした。翔太とシロにもお疲れ様と言いたいです。 [気になる点] 残念!Σ( ̄□ ̄;) 見逃したかったのですが。「勿論」は「もちろん」、「…
2020/07/24 19:30 退会済み
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