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第八十四話 類稀な【気】

抗牟と宝蘭は、どうやって倒す事ができるのか?!


 第八十四話 類稀(たぐいまれ)な【気】




 横で宝蘭も戦いあぐねているようだ。 どうしても直接攻撃は嫌とみえる。 そこで抗牟が提案する。


『宝蘭! しばらくこちらの()()の相手をしてくれないか』

『どうして?』

『そっちの()()なら倒せそうだ。 その後で()()を一緒に倒そう』

『······わかったわ』


 少し悩んでいたようだが承諾してくれた。

 二人は同時にスイッチして攻撃を続ける。


 それを見た()達は余裕で声を上げた。

 

「ハハハハハ! 雷獣は俺様を倒すのを、諦めた様子だ、ハハハハハ!」

「なぁに! 七尾が俺様の強さに尻尾をまいたのだろうよ! 七つもある尻尾を巻くのはさぞかし苦労することだろうさ! ハハッハハハハハ!」



 勝手なことを言いながらスイッチした攻撃相手への手を緩めることはなく、一層激しく攻撃をしてくる。




 鵺王(ぬえおう)は雷獣といわれるが、属性は岩である。 茶頭の岩刀(がんとう)を見えない岩で食い止め、時にはそれを飛ばして攻撃する。 


 しかし、当然のことながら見えない岩だけでなく見える岩も出すことができる。 見える岩だと、それが邪魔して一瞬相手が見えなくなるので、使わなかった。


 抗牟は逆にそれを利用しようと考えた。


 ()()の攻撃を大岩で受けて砕け散る。 それを繰り返し、大岩の後ろに狒々(ひひ)の姿で隠れて近づき、砕け散る岩の欠片とともに喉元(のどもと)に近づき、できる限り長く伸ばした五本の鋭い爪を赤い印に深々と突き刺した。



「グウォォォォ~~~ッ!!」ズドド~ン!と、()()は崩れ落ちた。



「よし!!」


 抗牟は宝蘭の攻撃に加わる。


 ()()()()が遣られたことで怒りと(あせ)りで、攻撃が激しくなってきた。 


 宝蘭にも雷は効き目がないので、雷剣(らいけん)を嫌というほど飛ばしてくる。 こちらも雷剣を防ぎながらも攻撃を続ける。 



 抗牟が投げた大岩が外れて()()の上を(かす)めて通り過ぎた。 その瞬間、宝蘭が()()(つの)の間に立っていて、長い尻尾を()()(つの)を覆うように巻き付けた。


 抗牟が投げた大岩に、小さくなった宝蘭が隠れていたのだ。そして宝蘭の尻尾は絶縁体になっているので、()()は雷剣を出すことができなくなっていた。

 


 宝蘭は尻尾で黄頭の角に体を固定したまま長く伸ばした五本の爪を額の真ん中にある赤い印に深く突き刺した。



 ◇◇◇◇



 翔鬼は焦っていた。 


 どうにか六本の尾を()(くぐ)って背中に近づけることができても、赤い尾と黒い尾の二本の尾が邪魔しているせいで急所に剣を刺すことはおろか、背中の尾に攻撃する前に、また別の尾が攻撃してくるので、結局何もできない。


 その時、ズドドン!と、青い尾が八岐大蛇の背中に落ちてきた。 清宗坊が青頭を倒したのだ。

 背中に落ちてきた青い尾を押さえるように赤い尾が上から被さって急所を隠し、黒い尾は翔鬼の攻撃に加わった。


「翔鬼様」

「清宗坊、どうすればいい···急所に近づけない」

「······私などには···」


 その時、白い尾と茶の尾、黄の尾が次々に倒れた。 それらの尾を押さえるように赤い尾が覆いかぶさり、残る三本が翔鬼を攻撃しようと構えている。


「どうした翔鬼殿! 早くしないと倒した奴らがまた復活してしまうぞ」

「しかし······」


 何をどうすればいいのかがまるで思いつかない。 ただ体力を消耗するだけの無駄な攻撃に思えるのだ。




 その時、白狼が思念通話で叫ぶ。


『翔鬼!! 赤い印の所を刺すが、だめだ、刺さらない!』

『どういうことだ! ギン! もう一度急所に!』

『了解!』



 ギンは翔鬼の体から飛び出して行ったが、すぐに戻ってきた。


「急所がなくなっている!!」

「どういうことだ?!!」

「わからない。 急所の光がなくなっているんだ。 どこにも光っている場所がない!」

「なんだとぉ?!」



 急所が分からなければ倒せない。 一度倒した頭達が起き上がってきてしまうと、もう手の打ちようがなくなってしまう。



 翔鬼が考えている間にも八人衆は()と闘い、頭を倒した者たちは()と闘っている。 しかし、尾には急所はなく、攻撃はかすり傷程度にしかならず、とても倒す事も退ける事もできるようには思えない。




···類稀な【気】を持つ俺が何もできないのなら、打つ手はない···



···何のための[類稀な【気】]なんだ······八岐大蛇を倒すために特別な【気】を持つ俺が何のために呼ばれたんだ?···



···この【気】で何ができるのだろう······




 みんなは闘い続けている。 翔鬼が倒してくれるという希望を持って。 



 赤い尾以外がすべて倒れた。 白狼と白鈴が()()と闘い、他の者達が()()()に向かうが、家ほどもある太い尾の一振りでみんなが吹き飛ばされる。 


 みんなは既に満身創痍で、気力だけで闘っている。


 そのうち初めに倒れた()()()()が起き上がってきた。




···ダメだ!!···このままでは······




 その時、翔鬼はふと思いついた!


『ギン! 出来るか?』

『うん! 可能だ。 しかし、時間がかなり制限される。 少ししかもたない』

『カウントダウンしてくれ』

『了解!』 

『頼む!』


 体から出てきたギンが石魂刀と翔鬼に巻き付いてきて一体化すると、翔鬼の全身が金色に輝き始めた。



『みんな!! 尾は任せろ! 頭だけに集中してくれ!!』



 翔鬼はギンの【気】を(まと)って長く伸びた石魂刀を振り上げ、向かってくる太い尻尾に斬りかかる。



『5!』



 一番近くの()()()をスパン!!と中程から切り落とした。


 翔鬼の【気】を(まと)った石魂刀と、類稀な【気】で全身を覆った翔鬼の筋力の前では、太い尾も結界も敵ではなかった。



···いける!!···



『4!!』



 翔鬼に向かってくる三本の太い尾の間を(くぐ)り抜けながらスパンスパンスパンと、立て続けに斬り落とした。



『3!!』



 背中の急所に覆いかぶさっている尾に向かう。


 赤い尾は他の尾を押さえる事を諦めて翔鬼を叩き落とそうと向かってくるが、スパン!と、そのまま切り落とされて吹き飛んでいった。


 そして背中の急所に覆いかぶさっている尾を、スパンスパンと順に切り落としてゆき背中が(あら)わになった。



『2!!』



「「「きぃ~さぁ~まぁ~~っ!!」」」

 その時、復活した三体の頭が、八人衆に攻撃を受けているのには構わず背中側の翔鬼に向かって攻撃してきた。 炎を噴き、氷の刃を飛ばし、水の刃を飛ばしてくる。


 翔鬼は慌ててそれらを避けた。



『1!!』



 避けていると時間が無くなってしまうと思った時、八人衆が翔鬼の盾となり、()の攻撃を体で受け止めてくれた。


 八人衆が攻撃を代わりに受けてくれる。 既に満身創痍の彼等が傷ついてゆくが、気にしている暇はない。

 もう目の前の弱点に石魂刀を突き刺すだけなのだから。



『0!! 時間だ!!』

「終わりだぁ~~~~っ!!」



 翔鬼は石魂刀を光る急所にズズズッ!っと付け根まで刺し込み、直ぐに八岐大蛇の背中に突き立っている石魂刀から離れた。



 グウォォォォッッ~~~~~~~!!



 恐ろしい叫び声とともに、石魂刀を突き刺した場所からブシュ~~!!と何かが凄い勢いで噴き出してきた。

 その後から泥のような物がゴボゴボとあふれ出し、八岐大蛇を覆ってゆく。


 その泥は八岐大蛇全体を覆うと、固まりながら丸まっていき、最後に石魂刀の柄の上まで泥が被ってしまったかと思うと動きは止まった。






 全員が翔鬼の周りに集まってきた。



「翔鬼!! やったな!」

「翔鬼殿、お疲れさまでした」

「翔鬼様ぁ」

「やったな翔鬼殿!!···翔鬼殿??···わぁ!!翔鬼殿ぉ!!」

「翔鬼ぃ~~っ!!」




 翔鬼は気を失って地面に落ちていった。







翔鬼は全ての【気】を、使い果たしてしまった!

( ̄□ ̄;)!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] むむむ、気迫溢れる戦いの描写がお見事です。迫力がありました。 [気になる点] 残念。誤字は報告の通りです。 ただ、最後の「やった」はこれでいいんですか?分からないまま修正しましたけど。 […
2020/07/22 19:39 退会済み
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