第七十三話 住民救出大作戦
やっと目が覚めた翔鬼を待っていたのは!!
第七十三話 住民救出大作戦
「ふわぁぁぁ~~~」
翔鬼は大きく伸びをした。
『みんなおはよう!』
全員に思念通話で目が覚めた事を知らせた。
『翔鬼! やっと起きたのね。 貴方が寝ている間に大変のことがあったのよ···』白鈴
『翔鬼殿。 御目覚めですか? お休みの間に幽鬼が···』ぬらりひょん
『やっと起きたか! 町の皆が待っているぞ! 山のように石にされて···』堂刹
『翔鬼殿、御目覚めですか。 ギン殿が素晴らしい働きをされて···』抗牟
『御目覚めですか。 お休みの間に幽鬼が襲ってきまして···』清宗坊
『人間ってこんなに長く寝るのね···それにしても···』宝蘭
『翔鬼様ぁ~!! 俺、頑張ったぞ!!···』敬之丞
七人が一斉に話しかけてきた。 幽鬼が攻めてきたっていう事が聞こえた気がしたが、同時に話すので何を言っているのか分からない。
『待ってくれ!! 何かがあったようなのは分かった。 白狼から話しを聞くから待ってくれ』
そう言って思念通話を閉じた。
「白狼、何があったんだ? 幽鬼が町に入り込んだみたいだが」
既に白狼は翔鬼の枕元に座っている。
「そうだ、幽鬼の大群が押し寄せた」
「大群? もしかして刀持ちの例の大群か?」
白狼は頷く。
「翔鬼を起こそうにも防御結界があって起きてくれないので、ギンを呼び出した」
「あぁ、俺の気龍だから俺の結界から出れたのか」
「よく気が付いたな。 そうだ、翔鬼の防御結界があってギンは出ることが出来なかった」
「えっ?!」
布団の上に胡坐をかいて座っている翔鬼は、横に座る白狼を驚いた顔で見上げる。
「ギンが出る事が出来なくて困っていたら、翔鬼の防御結界に私の角を刺してみるようにと言ってきた。 それで試してみると、結界に穴が開いてそこからギンが出る事が出来たんだ」
「そんな使い方もあるのか···」
「結界から出るのに手間取ったが、残った幽鬼はギンが倒してくれたから問題はなかった。 しかし石にされた住民は数知れず···大勢の者達が、翔鬼が起きるのを首を長くして待っている」
「わぁ···考えるだけで恐ろしい···」
「あぁ、そうだ···町に入ろうとする幽鬼を敬之丞達土蜘蛛の三人が食い止めてくれて、半分くらいの幽鬼を締め出してくれたお陰で何とか持ちこたえる事が出来たんだ。 後で褒めてやってくれ」
「そうか! 土蜘蛛達には世話になりっぱなしだな」
「しかしその時に、影之丞が石にされた」
「えっ?!」
「彼も助けてやってくれ」
「もちろんだ。 任せておけ」
翔鬼が立ち上がると、翔斬刀が飛んできて、翔鬼の腰に鞘の帯が巻き付いた。
その時「翔鬼様、入ってもよろしいでしょうか」と、金治の声がした。
「入れ」
「失礼します」と、入って来た金治は二つの湯飲みと急須が乗った盆を持っていた。
湯飲みにお茶を注ぎ、翔鬼達に差し出す。
「門の所で皆さまが御待ちです」
「みんなも? 石になっている者を助けるのに一緒に行くのか?」
「そのようです。 よろしくお願いいたします」
翔鬼はお茶をグッと飲み干してから門に向かった。
◇◇◇◇◇
門の前で清宗坊と白鈴と抗牟そして宝蘭が待っていた。
「やぁ! 色々待たせたな」
清宗坊と抗牟は丁寧に頭を下げ、白鈴は駆け寄ってきた。
宝蘭はと言えば······多分、北の国で一番偉かったので、他の者に自分から挨拶をするという習慣がなかったのだろう······と、翔鬼は考える事にした。
「今、準備しているからもう少し待ってね」と、白鈴が言う。
「何の準備?」
「翔鬼が石になった者を助けに行く準備よ」
どうして準備がいるのかと首をひねっていると、清宗坊が「恐れながら···」と、話しに入って来た。
「幽鬼の襲撃の話しは聞かれたと思いますが、江の坂町で石にされてしまった者の数は少なく見ても八千···」
「ゲッ!···」
···思った以上に多い···
「少しでも翔鬼様の負担を減らすために、どのような道順がいいのかを綿密に打ち合わせを致しもうした。 移動経路は私がご案内いたしまする。
石にされた者には必ず一人の妖怪が手を挙げて居場所を知らせ、それを見逃さないように白鈴様達が私に知らせてくれる手筈になっておりもうす。
それと今回の幽鬼は凶暴性が増しておりもうして、石になりかけた者を追いうちのように刀で斬りつけておりました。 ですので、白狼様に順次回復をしていただく事になっておるのでござりまする。
それと、多くの野次馬が取り囲むと思われます故、鬼達が人員整理をしてくれる手筈になっておりまする」
「確かに元に戻す数は多いが、そこまで大層にしないといけないものか?」
「杞憂であればいいのですが、念のためでござりまする」
その時「失礼します」と、門から入ってくる者がいた。
慶臥だ!
当然の事ながら、堂刹にボコボコにされたケガは治っていて、折れていた角も元通りになっている。
慶臥は翔鬼を見て90度にお辞儀をした。
「準備が整いましたのでよろしくお願いします」それだけ言うと先に出て行った。
「じゃぁ、行くか」
翔鬼は先頭で門をくぐった。
翔鬼が門から出るなり「「「わぁぁぁぁ~~!!」」」と、大歓声が起きた。
···わぉ···凄い野次馬···
路地の周りには鬼達が一定間隔で立っていて、四天王達がテキパキと指示している。 周りの野次馬も思った以上に多くて、鬼達がいなければゆっくりと歩くことも出来なかっただろう。
「翔鬼様、こちらからお願いしまする」
直ぐ先に手を挙げている小鬼がいた。 その横にある石に手を触れる。
···当然呪文はパス! 何千回も言えないし···
次々に石になった者に触れていく。 そして後ろから順に歓声が聞こえてきた。 元に戻ったのだろう。
白鈴と抗牟、宝蘭が路地の奥の方や建物の中から石になった者の横で手を挙げる妖怪を見つけては清宗坊に知らせに来る。
しかしこれも鬼達が人員整理をしてくれていなかったら、手を挙げている者を見つけるのも困難だったかもしれない。
四天王の指揮の元、警察か軍隊のように鬼達の統率が取れている。
溢れるような野次馬を整理し、予め打ち合わせされていたのだろう、道を曲がるときには鬼達が先回りして野次馬を道から省いていく。
治安を乱しているのは鬼達だと思った事を申し訳なく思った。
壊れた建物の前に来た。 火事があったようだ。
建物の中と外で三人の妖怪が手を挙げて翔鬼を待っている。
翔鬼が触ろうとすると清宗坊に「少し待ってくだされ」と、止められた。
手を挙げている妖怪達は早く戻してほしそうな縋るような目でこちらを見ている。
「なぜ待たなければならない?」
「この家の者達は大ケガをしている可能性がありまする。 故に白狼様が来られてから戻してやって頂きたいのでござりまする」
振り返ると白狼はかなり後ろの方だ。 何をしているのかと思っていたら、これも清宗坊が教えてくれた。
「今回の幽鬼は石にする者にわざわざ斬りつけております」
そう言えばそんな事を言っていた。
「戦ってみると、幽鬼は鬼神並みに数段強くなっておりました。 ただ、我らも強くなっております故、我々が戦う分には大丈夫だったのですが、普通の妖怪達にしてみれば斬りつけてくる幽鬼には抵抗できかねたと思いまする。
そのため、石にされた者の殆どがケガをしております故、白狼殿が治療してくださっておるのでござりまする」
···わぁ···触るだけの俺より大変そうだ···白狼がというより、白癒羽が···
やっと白狼が追い付いたので石に触る。
直ぐにザワザワし始めたかと思うと、血が噴き出してきた。 白癒羽が慌てて薬を塗っていく。
周りの者もその状態を見て、わぁ!キャァ!騒ぐので、鬼神達に一喝されていた。
三人とも結構なケガの状況だったが、生きてさえいれば白癒羽が治療してくれる。
三人の治療が終わり、立ち上がった時には大歓声が起こった。
先は長い( ̄0 ̄;)




