第六十三話 最後の八人衆
酒呑童子邸で集まった。
第六十三話 最後の八人衆
「ところで、堂刹と清宗坊は進化しなかったのか?」
「ハハハハハ、余達はぬらりひょんを含め、最終形態だから形は変わらん。 ぬらりひょんは若返ったがぬらりひょんに変わりはない。 ただし、見た目は変わらんが、【気】が充実して二段階ほど強くなったぞ。 翔鬼のおかげだ。 ところで何があった?」
翔鬼は茨木童子との出来事の話しをした。
「ほぉ···チビ敬がいなければ、危なかったな」
堂刹が翔鬼の手の上に降りてきたチビ敬を見て「ありがとうよ」と言うと「だから! チビ敬は俺だって!」と、敬之丞が堂刹の前に出てきた。
「ハハハハハ! そうだったな。 ありがとう」
素直に礼を言われて、敬之丞はなにげに嬉しそうに「分かればいいんだよ」とブツブツ言いながら元居た席に戻った。
「堂刹は茨木童子を知っているのか?」
「もちろんだ。 しかし、お互いの考え方を相容れる事が出来ず、東の国と西の国に分かれて久しい」
「じゃあ、八岐大蛇から生まれたというのは本当か?」
堂刹の動きが一瞬止まった。
「普通は聞きにくい事をサラッと聞く奴だな。 答えはそうだ。 だが奴を倒したいと一番願っているのは余だろうな」
「どうしてだ?」
「あんな化け物と一緒にされるのが嫌でたまらない。 余は余だ。 あんな奴から分かれ出たと思うだけで虫酸が走る」
翔鬼はこっそり【心開】と唱え、視心術が出来るように堂刹の閉塞術を解いていた。 疑うのは心が痛むが背に腹は代えられない。
思った通り堂刹の言葉には偽りはない。 それどころか思った以上に毛嫌いしているのが伝わってきた。
「そうか···言いにくい事を言わせて悪かったな」
「いや、大事な事だ。 いつかは聞かれるだろうと思っていたが、いざ話してみるとスッキリしたぞ。 ハハハハハハ!」
···やっぱりいい奴だ···
「ところで清宗坊の収穫はあったのか?」
「はい」
清宗坊はわざわざ居住まいを正して話す。
「七尾狐に勾玉が付いていました」
「そうか! やったな」
「一緒にこちらまで来てもらおうと思ったのですが、私の言葉は信用できないと断られました。 翔鬼様を連れて来いと···申し訳ありません」
「謝る事はない。 もちろん呼ばれたからには行かないとな。 では道案内に清宗坊と···白狼も来るよな」
「もちろんだ」
「白鈴はどうする?」
「今回は休むわ」
「じゃあ三人で···」
「私も御供を···」
「俺も一緒に···」
「余も行くぞ···」
「えっ?」
抗牟と敬之丞と堂刹が同時に行くと言い出した。
···抗牟と敬之丞はまだ分かるけど、このおっさん!···
「堂刹はダメだろう? 今度は遠いし」
「えぇぇ~~」
堂刹はのけぞり、そのまま後ろに倒れ込んでしまった。
···ガキか!···
「それと敬之丞は訓練が終わってないだろう?」
「えぇぇ~~っ!」
飛び上がって翔鬼の前に来る。
「いいじゃないか! もうすぐ訓練は終わるって厳之丞が言っていたぞ!」
「やっぱり終わっていないんじゃないか。
だ·め·だ!」
「意地悪!」
元の席に戻りなぜか後ろ向きに座った。
···こいつはやっぱりガキだ···
「抗牟も来るのか?」
「もしかしたら北の七尾狐なら、知り合いかもしれません。 以前はまだ勾玉は付いていませんでしたので確かではありませんが···清宗坊殿、白い七尾狐ですよね、彼女の名前は?」
「確かに白い七尾狐でしたが、名前は教えてもらえませんでした。 すみません」
いやいやと、抗牟は笑う。
「私が知る七尾狐なら、妖力は申し分ないのですが、ちょっと偏屈なので説得には骨が折れるかもしれません」
「本人に間違いなさそうです」
清宗坊は苦笑いした。
「じゃぁ、四人で決まり。 一度家に戻ってから行こう。 あっ···与作、今回は本当に助かった。 ありがとうな」
「とんでもございません」
「与作も清宗坊の家に行くのか?」
「はい」
「そうだ、清宗坊。 抗牟もお前んちに住んでもらってもいいよな?」
「もちろんでございます」
「よっしゃ! じゃあ、一度帰るか」
名残惜しそうにしている堂刹を置いて、大天狗邸に戻った。
◇◇◇◇◇◇◇◇
部屋に戻り魂手箱に石魂刀を入れようと思ったのだが、50㎝四方の大きさの魂手箱に150㎝近くある長刀が入るわけがない。
金治を呼んだ。
「何用でしょうか?」
「この刀が入るくらいの大きな魂手箱を用意してもらいたいのだが」
「えっ?···あぁ···」
金治は驚いていたが、納得したようにニッコリと笑う。
「翔鬼様、そのままお入れ頂いても大丈夫です」
···えっ?···もしかしてまた妖界の新常識か?···
とりあえず蓋を開けて刀を差し込むと、そのままスルスルと中に入っていった。
「わぁ···入った···ありがとう」
結界になっているようだ。 引っ越しする時に魂手箱一つあれば、大きな家具や沢山の荷物を運ぶ必要がなさそうだ。
···人間界にも欲しい一品です···by翔太···
「いつでもどうぞ。 あっ、清宗坊様から夕食を作るように仰せつかりました。
召し上がってから御出掛けされるのがよろしいかと。
出来ましたらお呼びいたします」
それだけ言うと金治は戻って行った。
久しぶりに縁側にゴロンと寝転がる。 その横に白狼が来て同じく寝転がった。
既に夜の季節に入っているようで、夕焼けがキレイだ。
<夜の季節···17時頃から23時頃>
本当に色々あった。
妖界に来て、鎌鼬達に会い、四神のおかげで鬼神になり、清宗坊に会って江の坂町に住む事になった。
白狼と白鈴を始め、清宗坊、堂刹、ぬらりひょん、敬之丞と仲間になり、今は抗牟も仲間になり、勾玉仲間が七人になった。
白狼の夢事件、二度の幽鬼の襲撃、餓者髑髏や餓鬼の偽堂刹に茨木童子。
茨木童子のおかげで五本角になれたし、石魂刀も見つけた。
後は七尾狐を仲間にすれば、ラスボスとの対決を残すだけだ。
初めて八岐大蛇と俺が戦うと言われた時は、ちょっパニクったが、今は不思議と落ち着いている。
自分も強くなったし、頼もしい仲間がいる。
何度も修羅場を潜り抜けてきた。 絶対大丈夫だ!!
八岐大蛇を倒して人間界に戻るぞ!!
···って、八岐大蛇を倒せば本当に家に戻れるのか? 戻れる保証はあるのかな?···
「お食事の準備が整いました」
金治が呼びに来た。
「おう!!、 白狼、行くぞ!」
最後の八人衆は仲間になってくれるのでしょうか?( ゜ε゜;)




