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4.we cry down.―14


 暫くして、日和と結城が一緒に二階から降りてきた。二人共まだまだ眠そうだが、体調不良ではなさそうなので暫く待てば普段の調子も取り戻すだろう。

 全員揃って確認を取ると、日和も結城も残ると言う。話しをすると、日和と結城はシオンと春風の買い物について行くという。ミクも当然だ。

 そのまま話しは流れ龍二が金を気にしない性格だという事もあって、シオン達の買い物で更に花火やら何やらを買い足し、皆もう一泊してゆくとの事。結城は一応親に連絡を取り、了承を得た上で泊まる事となった。日和は言わずもがな、だ。

 皆で昼ごはんを食べ終えると、シオン達、女性陣は買い物へと出かけた。女の子だけで出かけさせる事には少しだけ心配があったが、シオン、春風と、実働役の殺し屋が二人もいるし、ナンバーも、あの不良共ももういない。心配はいらないだろう。

 そして場に残ったのは当然、野郎共だけである。

「さて、色が失われたモノクロな世界に変貌しました」

 礼二が遠い目をしながらそんな事を呟きだした。前原が「何言ってんだお前」とツッコミを入れるが礼二はフフフと笑うだけで反応を見せやしなかった。

「まぁ、確かに野郎臭いな。この部屋」

「俺の家が臭うみたいに言うな。飯島。掃除はしてる」

「春風ちゃんがだろ?」

「おう、当然」

「…………、」

 飯島はやれやれ、と首を振った。

 暫く雑談をしていると、平が口を開く。

「そういえば、さ」

「なんだよ?」

 礼二が首を傾げた。皆も平に視線をやる。

「この前商店街に出来たなんか怪しい雰囲気の雑貨屋知ってるか?」

「雑貨屋? 知らねぇな。夏祭りの時は見かけなかったぞ」

 龍二が夏休みの時に通った商店街の記憶を辿りながら考えるが、新規オープンの店を見た記憶はない、とそう言う。

「あー、そういえばそんなのあったなぁ。まだ入った事ないけど」

 飯島が言う。「それで、そこがどうかしたのか?」

 答えは早かった。

「そこにめっちゃ美人の店員がいるんだ!」

 声が大きい。この防音の館にそれは響いた。

「よし、暇だし、シオン達もまだまだ帰ってこないだろうし行こうぜ」

 龍二が提案すると、全員が頷いた。二日目という事もあり、二泊三日が決まっているという事もあり、道中でそれぞれは一旦自宅に服等を取りに行く。

 昼の二時を回った頃に、再び全員が集まって、商店街へと到着した。

 その雑貨屋は商店街の外れにあるようで、入口から暫く歩いて野郎共五人は雑貨屋へと到着した。

 商店街の一番端にあったそれは、雑貨屋、という言葉がぴったりな雰囲気を醸し出していて、一部の人間が見れば、入りづらいとも思いそうな程異質な装いをしていた。黒のペンキで塗られた木のデザインの壁が目立つ。看板は入口上部に備えられていて、『街の雑貨屋 Viore』と手書きなのか、そういうフォントなのか、特徴的な文字で書かれていた。

「ヴィオレって……、なんとなくシャンプーを連想するな」

 飯島が言う。が、言葉とは裏腹に目は輝いていた。何せ目の前にあるのは雑貨屋だ。少年の心が踊らない訳が無い。

「まぁ、入ろうぜ」

 前原の言葉に背中を押されるように全員はその中に足を入れた。店内は外から見た装いよりも広く感じた。テニスコート一面は入るのではないかと思うような広さだった。壁に沿うようにと、適当な位置に、棚が並べられていて、それぞれに面白そうな商品が並べられている。興味をそそられる場所だった。

「おぉ、イロイロあるんだな」

 龍二はそんな事を呟きながら店内を回る。最初は美人の定員がいるから、という事だったが、今日は休みなのかレジカウンターには店主と思われる三十代程のおじさんが一人肘を突いて本を読んでいた。r店内には龍二達以外にも数人の客がいた。新規オープンしてから数日が経過している事もあって、目新しさで来ている客はいなそうだった。カップルが二組、それと家族連れが一組。それに個人客や龍二達のような客がそれなりに、と言った所だ。店内自体は広いが棚や商品の陳列の御蔭で客が入れるスペースは少ない。この数のお客でもそれなりに混み合っているように龍二は感じた。

 暫くモノを物色して、レジカウンターの前を通った時、不意に、龍二に声がかけられた。

「ちょっと」

「ん?」

 声の主を辿ると龍二はレジカウンターの向こうで暇そうにしているおっさんを視界に入れる事となった。

「何か?」

 手に持っていたカエルのトップが付いたペンダントを商品棚に戻して、おっさん店主と向かい合う。首をかしげているあたり、龍二は呼び止められた理由がわからない。知人かとも思ったが、見た記憶がない。何か怒られるような事をしたつもりもない。もしかしたらペンダントを触ったのがまずかったかとも思ったが、周りにはもっと商品に指紋を付けているバカップルもいる。

 そんな龍二の不安を知りえない店主は龍二を小さな動作の手招きで呼び寄せると、訝しげに一度顔を覗き込んで、言った。

「……神代龍二君、だっけ?」




    39




 シオンのテンションは絶賛上昇中だった。地元から少し外れた所にあるショッピングモールきた春風一同。こうやって普通の生活をしている、というだけでシオンのテンションは上がり、留まらない。龍二の仲間になってから極普通、という生活は増えたが、ここまで、一般人と一緒に、一般人らしく生活出来ている事が楽しいのだろう。誰だって、普段出来ない事ができれば楽しいだろう。

 ミクも楽しそうだ。いや、全員が楽しそうだった。

 皆それぞれ買い物をして、手にはいくつかのカミバッグが掛けられている。女性の買い物、とあってか、その紙パックは色とりどりで見てて目が痛くなるようだった。

「皆もう買い物はいいの?」

 春風が問うと、それぞれが適当に答えた。

「じゃあ、そろそろ晩御飯の食材買いに行こうか」

 そうして女性陣五人はショッピングセンターの地下にある、新鮮食材のコーナーへと向かう。

「今日は何作るの? 私も手伝いたいかも」

 結城が言う。

「今日は……まぁでも、昨日作りすぎたし、昨日の残りモノもあるからねぇ。簡単なのでいいよね。何が食べたい?」

 春風が問うと、真っ先に日和が声を上げた。

「イタリアンのフルコースで」

「それは簡単じゃないよね?」

 気づけばミクが日和の裾を掴み、上目遣いでそう言う。ミクに言われておされた日和は「そうですよね……」とすぐに引っ込んだ。

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