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4.we cry down.―13


 聞かれたシオンはわざとらしく腕を胸の前で組んで「うーん」と唸った後、答える。

「まぁ私だって殺し屋じゃなかった時間もありますからね。趣味くらいありますよ」

「例えば?」

「私編み物とか好きでした。そりゃ殺し屋やってからは全く手を付ける事ないですけど」

「編み物好きな殺し屋って新しいな」

 少し笑った後、龍二は問い続ける。「他には?」

「そうですね、あと高校の時はよく友達とカラオケに通ってましたね。普通に女子高生していましたね」

「ほうほう、なるほど。他にもあるか?」

 シオンはこの三回目の問いで少し疑問を抱いた。どうして龍二はここまで自分の事を聞き出そうとするのか、と。だが、その答えは龍二の口からすぐに吐き出された。

「あぁ、聞きすぎたかな? ちょっと気になってな。シオンの事全然知らなかったし」

「そうですか。そうですね……後は買い物ですねー」

「じゃあ買い物一緒行こうか?」

 と、そこに朝御飯を持ってきた春風が割り込んできた。トレーに乗せられたそれは目玉焼きやらベーコンやら野菜やら、と朝御飯にしては色とりどりなモノだった。

 春風も食卓について、三人での会話が始まる。

「で、買い物。行く?」

「行きたい!」

 春風の提案にシオンは目を輝かせる。今にも飛び上がりそうな程喜んでいたのは見てわかった。今は春風も金の管理をしている。龍二が口を出す事ではない。

「龍二は来る?」

 春風は龍二に問う。が、龍二は首を横に振った。

「いや、いいわ。俺は家でゆっくりしとく」

「わかった。じゃあ、シオン。午後になってから行こうか」

「うん」

「っていうかさぁ」

 女二人の会話に今度は龍二が割り込む。何か、と言った具合に二人は龍二を見る。と、眉を顰めて少し怪訝な顔をした龍二が言った。

「シオンってなんで俺の事をフルネームで呼んだり敬語だったりするんだよ」

 不満だ、とでも言わんばかりの表情にシオンはそのまま返す様に眉を顰めた。

「不満ですか?」

 分かっているが故の再確認だった。

「不満だね。一人だけ仲間外れにされてる気分だ」

 わざとらしく頬を膨らませた後、前傾になってシオンの顔をいたずらな笑みで覗き込む龍二。突然迫られた事で驚いたのか、シオンはすぐに視線を流した。

「べ、別に意識してやったいるわけじゃ……」

 そう言って目玉焼きを頬張る。動揺でもしているのか、一口でそれを食べきってしまうシオンは顔を真っ赤にしていた。もしゃもしゃと変な咀嚼の音が聞こえていた気がした。

「ま。気が向いたら普通に接してくれよな。じゃないと俺寂しいぜ」

「なんか龍二キモイー」

 春風は目を細めて調子に乗る龍二を見た。

 龍二達が朝御飯を食べ終え、雑談に浸っていると数時間があっと言う間に過ぎ去った。気づけば朝の八時になっていた。が、昨日飲んでいた事もあってか中々野郎共は起きてこなかった、が、規則正しきミクは起きてきた。朝起きて一人だった事が不満なのか、少ししかめっ面でリビングへと登場し、すたすたと歩いてシオンの隣に座った。

 ミクが「おはよう」と眠そうに言うと、起きている皆と、何故か礼二が飛び起きて挨拶をした。礼二が起きた事で上に乗っていた平がソファーから転げ落ち、目覚め、イケメン飯島は上手いこと受身を取って華麗に立ち上がった。平と飯島が続けて「おはよう」と挨拶をした。

 これで、廊下で死んでいる前原と、日和、飯島の彼女結城以外は全員起床した事になった。

「前原は?」

 何も知らない飯島がリビングを見回しながら問う。

「廊下で死んでる」

 龍二が答えると、礼二、飯島、平と前原が廊下で寝ているという事実を知らない三人が廊下を覗きに行った。三人全員が廊下で突っ伏している前原を確認すると、その三人は戻ってきて並んでソファーに腰かけた。

 春風が「朝御飯食べる?」と問うと三人の返事が聞こえてきた。そうして春風は再びキッチンへと戻る。シオンも手伝うと言ってキッチンへと消えていった。ミクもシオンにべったりで、キッチンへと姿を消した。

「で、日和は?」

 礼二がニュース番組を映すテレビを見ながら問う。顔を向けやしないが、当然龍二に問うている。

「春風の部屋で寝てるんだろ。まだ起きてこないぞ」

「あとお前の彼女も起きてきていないな」

 龍二が言うと、礼二が「つーか一緒に寝なかったのか」と続けた。

「まぁ、一緒にだってそれこそデートと変わらずいつでも出来る事だろ。いっただろうが俺は夏休みを謳歌しにきたんだよ」

「何それ、聞いてねぇ」

「お前は早々に寝てたからな。平」

 龍二が呆れたように言う。そして、嘆息。そして、続ける。

「で、お前ら今日はどうすんだ?」

 龍二の問いに答えたのは飯島だった。

「どうしようかね。いてもいいのか?」

「当然。急ぐ用事もねぇからな」

「どうする? 平と神崎は」

 飯島が二人に振ると、礼二が両手を頭の後ろに持っていき、ソファーの背もたれに体重を預けて天井を仰ぎ見ながら呟く様に言った。

「俺も特に用事ないからな。お前らに任せるよ」

「じゃあ神崎は帰れ。俺は飯島と残る」

「平テメェ!」

 笑い声が響いた。

「俺も残るからな!」

 野郎共は今日も残る事がわかった。日和はまだわからないが、飯島が残るのであれば結城も恐らく残るだろう、居づらいと感じさせたつもりもない。

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