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6.the battle of glory/killer cell project―21

 だが、人間の体はそう脆くない。

「おぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 だが、人間の体は意外と脆い。

 龍二の雄叫びが部屋に響き渡る中、肉が、皮膚が、何かが、ちぎれる耳障りな音が、その雄叫びを引き裂く様にして、汚く響いていた。




 越えた瞬間だ。




    67




 killer cell計画。最強の殺し屋、神代家のクローンを最強の兵士として生み出すという計画。最強の殺し屋が故、殺し屋の細胞。

 生産ラインを潰され、主導者を殺され、そして――停止した。

 その計画。

 殺し屋をまとめていた協会は解体されざるを得なかった。今まで、グローリーの独壇場だったのだ。そのグローリーを失って、稼働出来るはずがなかった。

 今まで、協会に所属し、規律を守っていた殺し屋団体は、困惑した。今まで習うべき規律があったというのに、それが失われた。首輪を失った飼い犬のようだった。仕事はある。ツテだってある。だが、どうして良いかわからなくなっていた。

 一方で野良の殺し屋は、より仕事を熟す様になってきていた。今まで、一般人から見た警察の様に、邪魔ばかりしてきた協会という規律が消滅したのだ。本当の意味で、フリーになったのだ。仕事のしやすさが上がった以外にない。

 掃除屋を用意する云々ではない。そんな事務的な話ではない。

 今まで仕事がやりやすかった人間と、やりにくかった人間の立場が逆転した。

 その事実、そして、誰が、そうしたかを殺し屋の世界の住人は知っている。


 神代龍二。


 またあいつか。また神代家か、と思う人間も大勢いた。

 そして、彼を恨む者、彼に感謝をする者どちらもいた。それが皮肉にも、今まで的だったそれは変わらず、今まで同じ立場ながら敵だった者が味方につく、という状況に、つまり通常通りになったというわけだ。

 勢力が完全に二分された状態へとなり、勢力抗争が起こりそうな不安定な状態に陥っていた。

 だが、皮肉にも、野良の勢力には、頭となる人物がいる。彼が、この状況を作ったのだ。今更、頭とならないわけがなかった。

 未だに規律を守るべきだと叫ぶ者も大勢いる。その全てが、協会所属の人間だったモノだ。ほとんどが、ではない、全てが、だ。

 だが、野良はそうはいかない。元々反協会態勢な者共が野良なのだ。敵対せざるをえない。

 だが、その頭も、規律は守らずとも、マナーを破るつもりはない。そのため、野良勢力の中では更に勢力が二分していたのだった。




 神代勢力。




 そう呼ばれていたその団体は、圧倒的力で数の差を埋め、表の世界に出る事のない殺しの世界を蹂躙していた。

 神代勢力だけで、その他の勢力連中を全て、葬る事も出来るだろうという推測も良く建てられていた。

「俺達で協会勢力と反対勢力を潰す。それが終わってやっと、やっと」

 龍二は『皆』の前に立って、話ていた。その『皆』は全員、龍二の言葉に耳を傾けていた。

「俺は、殺しから足を洗う」

 溜息。そして、

「後はお前らの好きにしろ。俺が認めた、俺についてくる連中だ。この殺しの世界っつー裏の世界で、生きて、表の世界には手を出さない。それでいいんだ。今まで通りでな」

 龍二は既に、協会のような態勢を作り上げていた。だが、それは似て非なるモノ。掃除屋の手配をして、仕事の依頼を積み上げ、回し。だが、団体ではない。組織ではない。

 それぞれが個々が、マナーを守れるという態勢を作り上げている。

「とっとと卒業させろって事だ。『俺等』みたいな頭一つ抜けた瘤を消して、いい意味でも悪い意味でも均衡している元の状態に戻ればいいんだ」

 皆は、それでもまだ、黙って聞いていた。

 そして、その静寂の中に、龍二の溜息が響く。




「まぁ、なんだ。俺は面倒な事が嫌いなんだよ。足を踏み入れておいてなんだが、俺は殺しの世界に面倒臭さを感じてるって事。だってよ、俺は、」


 そうだ、神代龍二はまだ、そして、これから暫くの間も、


「ただの学生なんだからな」








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