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6.the battle of glory/killer cell project―20


 そうだ。三人の影。神代龍二、春風桃、そしてシオンの三人の影だった。

 龍二達の道中は何の問題も道のりだった。それは、浩二が暴れに暴れ、大勢のクローンを殺し、あっと言う間にグローリーの下へとたどり着いたからである。当然、龍二達もある程度の数のクローンと戦ったが、何の問題もなかった。施設内という事もあり、地の利で数押しされる事もなく、基本的に少数対少数の戦闘をこなせたため、窮地という窮地もなかった。

 つまり、彼らは戦う力をまだまだ残した状態で、ここにいるという事。

 龍二の表情はいかつい。往来の敵を目の前にしているような、険しく、恐ろしい表情だった。視界の端で浩二を確認した。あの、浩二が圧されている状況なのだと分かる。

 龍二は神代家の、伝説の殺し屋だ。誰もが認めるソレだ。だが、浩二には、勝てない。勝てやしない。なぜならば師だからだ。師が死ぬまで、弟子が師の上に立つ事はない。いや、死のうが上には立てやしない。現存する者の中で。最強、という格付けがされるだけだ。

 浩二が一対一――いや、二対一で、ここまで押されてしまう程の相手。それが、白目を向き、バケモノの様な形相、様子で壁に打ち付けられていた、金髪の血まみれ白人。それが、グローリー・リッカだった。

「大丈夫か、親父」

 春風とシオンが先に龍二の脇を抜けて、浩二の下へと寄った。二人で肩を貸し、立ち上がらせた。

 そして、連れ出す。

「おい、龍二、」

 言いかけるが、

「大丈夫だ。俺だってただで負けやしない」

 そうして、浩二は春風とシオンに連れられ、部屋の外へと出された。龍二は浩二が右手を負傷した事も見て気づいている。一緒に戦えばそれこそ心強いが、そこまで無理をさせる事は出来ないと思った。

 部屋には龍二一人が残った。春風とシオンも戻ってはこない。龍二が指示を出していた。当然だった。浩二を任せておいた。戻ってこないようにだ。

 龍二の視線の先で、グローリーが動いた。今、扉の角に腹部を貫かれて壁に貼り付けにされていた彼だが。、扉が自重でグローリーから落ちると、グローリーも自由を得た。

 死んでもおかしくないと龍二だって思った。だが、死なないのだろうな、という推測も出来た。

 見れば分かる。鮮血が塗れている。その出処をたどれば、風穴が開いている事が分かる。弾痕。時間もまだ全然経っていない弾痕が確認出来る。衣服の焼け具合が血のせいでわからないが、血の垂れ流し具合や僅かに確認出来る傷の状態、そして何より今の状況を見れば、分かる。

「おい。バケモノ。主人公様のおでましだぞ。くそったれ」

 龍二の右手にはナイフ。銃は敢えて使わないのか。

 グローリーは壁から落ちても、ここまでの傷を負っても、態勢を崩しやしなかった。腹に穴を開けているというのに、銃弾を複数受けているというのに、まだ死なないどころか、動きにダメージの影響が見えない。

 バケモノグローリーの白目が、龍二を捉えた。恐ろしく、冷酷な表情をしている龍二を、だ。

 龍二は右手をナイフを持ったまま、二回程挑発するようにグローリーに向け、曲げて、来いよ、とただそう呟いた。

 その龍二の挑発を合図にするかの如く、グローリーは移動を始めた。そして、始めたその瞬間とほぼ同時、グローリーの移動は完了していた。

 龍二のすぐ眼前。既に腕は伸びていた。

 野獣のようだった。獲物を屠り、捉え、捕食する野獣。人間では有り得ない驚異的な身体能力を保有し、どれだけの傷を負ってもなお、立ち上がり動く。

 だが、龍二は分かっていた。それに、動きが安直過ぎた。気配を消し、相手に忍び寄る事を得意とする龍二のその経験から、誘導は容易かった。

 グローリーの手は、龍二の顔を横切っていた。そして、龍二の右手は、グローリーの首元、逆手に持ったナイフの刃の切先が、根元深くまで、グローリーの喉元に埋まっていた。

「オォオオラッ!!」

 雄叫びと共に、龍二が右手を振り切ると、グローリーの喉が横一線に裂けた。動脈の通る喉元、有り得ない量の鮮血が吹き出す。

 龍二は確かな感触を得ていた。骨を断ち切る、その感触を。

 龍二がナイフを戻したと同時、グローリーの首が、もげる。皮一枚、肉が僅かに繋がっていた状態。傾き方を見れば分かる。これは、致命傷だ、と。

 だが、グローリーの体はまだ立っていた。首が取れかけ、顔が変な方向に向いていようが、リットル単位での鮮血を噴水の様に吹き出していようが、まだ、屹立していた。

 不気味だった。だが、龍二の表情には現れなかった。

 龍二は右手のナイフを落とす。床にそのままだ。カーペットが衝撃と音を吸収し、落ちた余韻は部屋には響かなかった。

 そして、龍二は、『左手』で、その首の切断面を掴み、右手でぶら下がる頭を鷲掴みにして――引きちぎる。

「ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

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