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6.the battle of glory/killer cell project―1


 その通りです、とエッツァは言って、続けて説明した。

「ギデオン、いや、グローリーが何を考えているのか、推測でしかモノは語れませんが、恐らく、協会という組織の解体をして、『殺し屋のマナーを消し去り、表の世界に進出させつつ、グローリーが権力を保持したままの殺し屋の世界を作ろう』としているのではないか、と思います」

 その言葉には、シーアが目を見開いて反応を見せたが、龍二もシオンも反応は見せなかった。同じ推測をしていたのだろう、恐らく。龍二は腕を組んで僅かにうつむきがちでいる。シオンは黙って龍二に視線をやった。

 殺し屋を表の世界に出す。これは、容易く推測できた。今の現状から、グローリーの事を考えずとも推測できる事だった。マナーの崩壊。そもそも、殺し屋のそのマナーは表の世界に知られない様にするための、暗黙の了解の様なモノだった。が、それが崩壊している。と、いう事は、表の世界に出たがっている、という事。これは簡単だった。

 そして、グローリーが権力を握ろうとしている事。

 協会の存在は、マナーの象徴の様なモノだ。協会はマナーを守らせる代わりに、仕事を与え、後片付けの面倒まで見てきた。そのトップがグローリーだとしても、その全てがグローリーの意図を汲み取って動いているわけではない。そもそもkiller cell計画は、グローリーを含めた上層部の一部の人間しか把握していない。そんな組織だ。協会というマナーを解体して、新たに、自分が権力者であるまま、その世界を作り直す。

 そしてkiller cell計画。これは『強大な力』だ。この力があれば、表の世界へと進出した殺し屋が、その『表の世界ごと』支配する事ができるかもしれない。グローリーは、それを、そこまでを、狙っているのかもしれない。

「面倒な事になりそうだ」

 龍二は呟いた。

 たった今、龍二に、killer cell計画を止める理由ができ、そして、浩二の行動と龍二の目指す行動が重なった瞬間だった。




    60




「どういう事だ……それは」

 浩二は、浩二でも、浩二が、驚愕していた。浩二が拠点としている数あるホテルや家、の一部。今回のその場所は龍二の自宅からもそれなりに離れているホテルの一室だった。

 そこにいるのは、備え付けの丸いテーブルセットで向かい合う、浩二と荒木の姿だった。

 荒木は頷いた。

「間違いない。『俺達の知っているギデオンは』もういない」

「じゃあ今のクロコダイルは誰が仕切ってるってんだよ」

 浩二が僅かに苛立ちながら問うと、荒木は真実を率直に告げる。

「クロコダイルのトップギデオンは、グローリー・リッカだ」

「アホ言え。殺すぞ」

 その瞬間だった。浩二の腕は荒木の方へと突き出されていて、その手に銃が握られていた。銃口は、荒木の額とキスしている状況で、荒木が視線を眼前に集めてみると、浩二の銃を握る手の人差し指がトリガーに触れているのが確認出来た。

 銃を突きつけられているということは、武装した相手に囲まれているのも同然。荒木は一瞬で逃げせない状況であると気付いた。故に、無抵抗に両手を顔の横に上げた。

「言っただろ。変な事をしたらすぐに殺すってな。今の発言はそれほどおかしい」

 浩二の顔は真顔。だが、どこか恐ろしい雰囲気をまとっていた。一般人であれば、見ただけで、どれだけ体格差があろうが、どれだけハンデがあろうが、逃げ出してしまいたくなるような、そんな恐ろしさが、彼から溢れていた。これが、プロの殺気だった。本当に殺すぞ、という意図だ。

「ちょ、ちょっと待て。俺は嘘はつかない」

 荒木が口だけを動かし、言う。それ以外は全く動かさない。一瞬でも、抵抗の素振りや、それと取れる素振りを見せれば、荒木は殺されるだろう。自覚があった。今は、浩二の下っ端以下でしかないのだ、と。

 話せ、と浩二は姿勢を全く崩さずに言う。そして、口以外を全く動かさずに、荒木は語った。

 その内容は、エッツァが龍二に説明したそれと、同内容のモノだった。クロコダイルを、協会を潰そうとする野良は、まだいるという事だ。

 浩二は話しを聞き終えてもまだ、黙っていた。そのまま数十秒が経過して、やっと口を開いた。

「……そんな気はしてたさ」

 浩二も思う事は同じだった。ギデオンについての情報は今、初めてきいたのだが、マナーの崩壊から、表の世界に出たがっている、という事はとっくに予測していた。

 そこで、浩二は銃を下ろし、腰の後ろにしまいこんだ。

「もっと詳しく、知ってる事は全部教えろ」

「わかった」

 荒木はどうやったのか、様々な情報を個人で手に入れていたらしい。事前に整理しておいた情報を頭の中の引き出しから全部取り出しながら、荒木は知り得る事全てをぶちまけるかの様に、浩二に話した。

 今こそこんな扱いを受けているが、荒木は浩二と同じ目的を持ったいわば同士である。実力差は言わずもがな圧倒的だ。だから、今はへりくだっている。が、いずれ、浩二に認められ、同じとまではいかなくてもそれなりの立場として扱われ、目的を達成できる事になれば、と思っていた。

 浩二はクロコダイルも、協会も潰そうとしていた。二人の意見が割る事もないだろう。

 全てを聞いた上で、浩二は言う。

「結局やる事は変わらねぇな。頭を潰す。グローリーを、な」

 そう言う浩二に、荒木が補足する様に話す。

「ただ、制限が付いた。killer cell計画が完成したら最後、それに、殺し屋が完全に表に出てしまえば……、最悪だ」

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