29 対峙
ついにその日はやってきた。
ティムール王国に数日かけてアルフォンス一行がたどり着く。門の前では、アルフォンスが戻ってきたことに門番兵が大騒ぎで城内へ知らせを向かわせていた。
「到着したようです」
「来たか!至急応接室に通せ」
「よく戻ったな、アルフォンス」
アルフォンスの兄であり第一王子であるレンブランドはアルフォンスを快く出迎えた。その様子に一瞬拍子抜けするが、アルフォンスはすぐに厳しい表情でレンブランドを見た。
「もう命は狙わないのですか」
アルフォンスの言葉に、レンブランドが不思議な顔をする。
「命を狙う?なぜそうする必要がある。ただお前が逃げ回るから捕まえようとしていただけだ」
レンブランドの言葉に、シャルドが噛み付く。
「あらぬ罪を着せて釈明も聞かず、突然攻撃してきたかと思えば国の外れで我々を殺そうとしたんですよ、あなたの放った傭兵達は。それすらもあなたは知らず、全て商人のサイオスが仕組んだとでも」
シャルドの落ち着きながらもその声には怒りがこもっている。
「サイオス?なぜサイオスが出てくるんだ?」
レンブランドが訝しげな顔をする。その様子に、ラインハッシュとレンブランドを除くその場の一同が一斉にラインハッシュを見た。
「お前、まさかそれすらも嘘だったのか?どこまでが真実だ?」
シャルドは今度こそ怒りを隠そうとしない。ラインハッシュに問い詰めるが、ラインハッシュはどこ吹く風だ。
そして、一番納得のいかない顔をしているのは、誰であろうレンブランドだった。
「ライ、話が全く見えない。アルフォンスは釈明していたのか?ただ突然逃げ出したから捕まえるために追いかけていたとお前は言っていたはずだが」
レンブランドの問いに、ラインハッシュは今度こそレンブランドの顔をしっかりと見た。
「そうです、アルフォンス様は釈明なさっていました。ですがそんなことはどうでもいいんです。死んでくれさえすればよかったものを」
「どういうことだ!ラインハッシュ!!」
親しみと信頼を込めていつもは「ライ」と愛称で呼ぶレンブランドも、今回ばかりは名前を叫んだ。
「こういうことですよ」
パチン!と指を鳴らして、ラインハッシュは自分の髪色を本来の髪色に戻した。それはミレーヌ達が森の中で見た光景と一緒だった。
「な、一体、どう言うことだ。まさか……」
「そうです、俺にもあんた達と同じ、王家の血が流れてるんだよ」




