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28 作戦会議

 翌朝、応接室にて今後についての話し合いが行われた。


「ラインハッシュはおそらくティムール王国へ帰っているでしょうね。我々がもし生きていたとしても、レンブランド様の元へ来ると確信しているんでしょう」

「……行くしかないだろうな」

 シャルドの言葉に、アルフォンスが苦々しい顔で言う。


「私もお供させてください」

 ミレーヌの言葉に、一同が一斉にミレーヌを見つめる。


「これ以上君を危険な目に合わせたくはない。だが、俺達がティムール王国へ行っている間にまた君の身に何か起こってしまうことだけは避けたい」

「だめだ、行かせるわけにはいかない」

「お兄様!」


連れて行きたいアルフォンス、一緒に行きたいミレーヌ、それを阻止したいクリス。


無言のにらみ合いが続いたが、最初に口を開いたのはクリスだった。


「行かせない、と言っても無駄なのだろうな。どうしても行きたいのか?自分の身が危ないかもしれないのに?」

クリスの問いに、ミレーヌは大きくしっかりと首肯く。 


「ミレーヌが行くことによってある意味二国間を揺るがすかもしれない大事件になる可能性もある。その自覚はあるのかい?ミレーヌ」

優しく、だが真剣な口調で諭すようにクリスは言った。

「それについては全てこちらの責任だ。そちらの国にこれ以上迷惑はかけない。絶対に」


 クリスとアルフォンスの会話に、ミレーヌはより一層身の引き締まる思いがした。




(今朝になってアルフォンス様とミレーヌ様の様子がちょっとおかしいな。ミレーヌ様が若干照れ気味でよそよそしいけれど、アルフォンス様はいつも以上にミレーヌ様にデレデレな感じがする)


 シャルドはこんな時でさえも二人の様子をじっと観察してにやけていた。


 あの女性嫌いのアルフォンス様がたった一人の女性に心を揺らしているのだ、幼少の頃からずっと側で支え見守り続けてきた人間としてはやはり嬉しく思わざるを得ない。


「アルフォンス様、昨夜はお楽しみだったんですか?こんな時に憎いお方ですね」

 シャルドが小声で言うと、アルフォンスは一瞬慌てて、すぐに冷ややかな目を向けた。


「ばか、こんな大変な時にそんなことするか。ただ、ちょっと思うことがあってだな」

「へぇ、キスのひとつやふたつでもした感じですか」

 シャルドの言葉にアルフォンスがまた慌てる。


(本当にわかりやすいなこの方は)

 アルフォンスを見つめるシャルドの瞳はとても優しく温かいものだった。




 一日経ってもアルフォンス達と戦ったはずの仲間達から連絡がない。


「殺し損ねたか……」

 ぽつり、と呟くと、ラインハッシュはすぐさまレンブランドの元へ向かう。


「アルフォンスが見つかった?」

「はい、隣国にて随分と逃げ回っていたようですが、どうやら諦めてこちらに戻ってくる様子です」

 シャルドの言葉にレンブランドは安堵する。


「ようやくか。長かったな」

レンブランドはホッとした様子をみせるが、ラインハッシュはその顔を薄ら笑いで見ていた。






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