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26 目的

「ま、待ってください!」

 ミレーヌが大声で叫ぶ。その声に、アルフォンス達はもちろんのことラインハッシュとその仲間達さえも驚いた。


「どうして、どうしてこのようなことをなさったのですか?あなたの本当の目的は一体なんなのでしょう」

 ミレーヌはラインハッシュに問いかける。


「そうですね、死ぬ前に真相を聞かせてあげてもいいでしょう。この姿を見れば見当はつくんじゃないですか」

 パチン!と指を鳴らすと、途端にラインハッシュの髪の毛の色が変わっていく。髪の毛が赤みがかったブロンドから綺麗な薄いブロンドに変化したが、髪の毛全体の3分の1くらいが薄い青みかかった美しい白色をしている。


「まさか……そんな」

 その髪色を見て、アルフォンスとシャルドは驚愕した。髪の毛の一部にティムール王国の王家の血筋の者にしか受け継がれない髪色が混ざっているからだ。


「そうだよ、俺は王家の血を引いている。王が容易く手をつけあっけなく見捨てた女から生まれた子供だよ」



 レンブランドとアルフォンスの父、王には王妃の他に妾が数人いたと噂される。なぜ噂なのかというと、妾は全員不審死を遂げているからだ。度重なる不審死により、王妃が裏で手を回しているのではないかという噂や、王がいらなくなった妾を密かに処分しているのではないかなどとよくない噂が王宮内に広がり始める。

 噂が大きくなるにつれ、王も面倒なことになったと思ったのかそれ以降は妾をつくらなくなったという。


「俺はその妾のうちの最後の一人の子供だ。俺の母親は王を愛していたらしいが、王はただの火遊びだったんだろう。王か王妃か知らないが、母親は俺を産んだらあっさり殺された。俺は男だったからという理由で生かされ、秘密裏にレンブランドの側近として役立つように育てられたよ。王宮内にバレないように髪色を変えさせられてね」


 ラインハッシュの言葉に、信じられないという顔をして見つめるミレーヌ達。


「俺はずっとずっと復讐する機会を窺っていた。いつだってレンブランドにとって欠かせない良い側近だっただろ?俺がレンブランドや王、そしてお前達の信頼を勝ち取るためにどんな気持ちで今まで過ごしてきたか、想像もできないだろうよ」


 ラインハッシュは水面下で自分を支持する人間を集めていた。レンブランドとアルフォンスが同時に失脚すれば、時期王としての後継は必然的にラインハッシュになる。髪色に王家の者としての証が刻まれているのだ、王家がそれを拒むことはできない。ましては後継者が他に誰もいなくなればなおさらだ。


「お前はまずここで死ぬ。逃げ込んだ隣国で出会った美しい令嬢を気に入って連れ去り、一緒に逃亡を図ろうとしたところをレンブランドの追っ手に殺されたことにする。そうすれば隣国の、ましてや伯爵家の御令嬢を巻き込んだと言うことで王もレンブランドもティムール王国の王家として責任を果たさなければいけない。そうしなければこの国との戦争は免れなくなるかもしれない。失脚させるにはもってこいだ」


「そんなに簡単にうまくいくとは思えませんね。レンブランド様はともかく、王は狡猾なお方です。なんとしてでも食い止めるでしょう」

 シャルドが静かにそう告げるが、ラインハッシュは動じない。


「別にうまくいかないならそれはそれで構わないさ。元々の計画も違うものだったしな。どっちにしても王やレンブランドの信頼は落ちる、王家内が混乱すればそれでいい。自分の子供が兄弟を手にかけ陥れる様を見せつけられる王の気持ちを考えただけで胸が躍るさ」


 ニイッと笑うラインハッシュの顔に躊躇う様子は見られない。


「本気なんだな。お前にはガッカリだよ」

 シャルドが言うと、ラインハッシュは意外そうな顔をして曰う。

「お前は本当に俺のことをかっていてくれたんだな。ご期待に添えなくて申し訳ない」


 ラインハッシュの話を聞いていたアルフォンスがおもむろに懐から鉱石を取り出すと、口の中に放り込み、齧った。

「!!」

 アルフォンスの体内から黄金に輝く光が発せられその光は体を包み、それはすぐアルフォンスの体内に戻っていった。


「へぇ、食魔鉱石に魔力を封じこめて魔力を隠していたとはね」

 アルフォンスの魔力が戻ったことに気づいたラインハッシュは冷ややかな目をしながら言う。


「お前の目的がどうであっても、俺達はここで殺されるわけにはいかない」

 ミレーヌを守ようにしてアルフォンスは剣を構える。


「やれ」

 ラインハッシュの一言が号令になったかのように、一斉にラインハッシュの仲間がアルフォンス達に襲い掛かった。





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