25 救助
「やっぱり途中で追いつかれたか。まぁこれもこれで問題ないけれど」
ふっ、と笑いながらラインハッシュはミレーヌの肩を抱きながら馬車を降りる。
「ミレーヌ!!」
「無事か!」
「ラインハッシュ!テメェ!」
アルフォンス、クリス、シャルドの三人が剣を構えて馬車の前に立ちはだかっている。近くに馬がいるのでどうやら馬で追ってきたようだ。
「よく俺たちの居場所が分かりましたね」
「悪いが俺は過保護なんだ。ミレーヌの身に何かあればすぐに駆けつけられるようにしている」
どうしてクリス達にミレーヌの居場所がわかったのか。
それは、ミレーヌが15歳の誕生日の時クリスがミレーヌへプレゼントしたピアス。
『このピアスはミレーヌのことをいつも守ってくれる。だから出かける時は必ずつけるんだよ』
その言葉通り、そのピアスには位置感知の魔法が施されており、発動すればミレーヌがどこにいるかクリスにはわかるようになっている。
ミレーヌは素直だったので、出かける時にはいつもこのピアスを身につけており、今回も運よく身につけていた。
魔法のことはミレーヌには知らされていないのだが、位置感知の魔法がかかっていると聞かされた時のアルフォンスとシャルドはなんとも複雑な顔をしていた。
「ミレーヌ、大丈夫か」
アルフォンスが切羽詰まった顔でミレーヌを見た。ミレーヌは両手を縛られており、隣にはミレーヌの肩を抱き抱えるようにして薄ら笑っているラインハッシュがいる。
「アルフォンス様、大丈夫です」
ミレーヌがなんとか笑顔を作ってそう言うと、隣のラインハッシュがヤジを飛ばす。
「もうちょっとでいいとことだったのに。邪魔しないで欲しかったですよ、アルフォンス様」
そのラインハッシュの言葉に、アルフォンスより先にクリスが食いつく。
「貴様、ミレーヌに何をしようとした。今すぐ地獄に落とす」
「こっわ!あなたは確か……ミレーヌ嬢の兄上、クリス様ですね。血が繋がっていないとはいえ、妹に対してちょっと異常すぎませんか。あぁ、血が繋がっていないからか」
「おいおい、煽るのはやめとけ。この人ミレーヌ様のことになると本当にやばいから。そんなことより、よくも俺を騙してくれたな。きっちり落とし前つけさせてやる」
シャルドが言うと、ラインハッシュはフン、と鼻で笑い、ミレーヌをアルフォンスの方へ突き飛ばした。
「ミレーヌ!」
倒れ込むミレーヌをアルフォンスが抱き止めると、ミレーヌはホッとした表情でアルフォンスを見つめる。
「アルフォンス様が無事でよかった……」
(こんなときまで自分の身でなく他人の身を案じるのか……ミレーヌ)
ミレーヌをそっと抱き抱えて起こし、ラインハッシュを睨みつける。
「お前ら全員ここで消すつもりだから、その女も返してやるよ。一緒に仲良く死ぬんだな」
ラインハッシュの言葉が号令だったかのように、アルフォンス達の周りにフードを被った見知らぬ男達が取り囲んだ。




