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16 兄の憂鬱Part2(クリス視点)

 建国祭が始まって3日目。一緒に店をいろいろ周ろうとミレーヌを誘いに来たら、なぜかまた知らない男が増えている。

 ブロンドの髪の眼鏡をかけた垂れ目の男。シャルドとかいうらしく、まぁ随分と胡散臭い。なんだろう、すごく気に食わない。しかもこいつも見栄えが悪くないのが余計に癇に障る。

 実はアルは旅芸人の息子で、シャルドは突然行方不明になったアルを探していたらしい。記憶喪失のまま戻っても親方が許してくれないかもしれないから、記憶が戻るまでここにいさせてくれと言う。


 はぁ?こいつら馬鹿なのか?なんで見ず知らずの旅芸人の息子とその仲間を匿ってやらなきゃいけないんだ?しかもミレーヌの側に見ず知らずの男が増えるなんて本当に耐えられない。


「断る」

「お兄様!」

 はっきり断るとミレーヌが慌てている。なんだよ、こいつらの味方をするのか?ミレーヌは優しいからな。放っておけないのだろう。気持ちはわかるが俺は嫌だ。


「クリス様、こちらの方々は旅芸人とだけあって珍しい品をお持ちです。今回の建国祭に合わせて訪れたそうなので、ミレーヌ様も興味津々のご様子でした。せめて建国祭の間だけでも置いてあげてもいいのでは?記憶が戻り次第お帰りいただければ問題ないでしょう」


 私めもおりますし、ね。

 ジェームスがにっこりと微笑んで言う。あのジェームスがそう言うのであれば、まぁそれでもいいかという気持ちになってしまうな。


「……わかった、いいだろう…だが、記憶が戻ったらすぐに立ち去ってくれ。あと、ミレーヌに必要以上に近寄るな」

「かしこまりました。ご慈悲に感謝しますよ」

 シャルドとかいう男が微笑みながら言った。微笑んでいるけど本当に胡散臭い。何考えてるかわからない感じがする。俺はこういう人間が一番苦手だ。


「そんなことよりミレーヌ、建国祭なんだから一緒に街を歩かないか。色々な店が出ているし、建国祭でだけ見れる舞台なんかもあるようだよ」

 にっこりと微笑むと、ミレーヌは少し困った顔をしている。いつもだったら嬉しそうに笑ってくれるのに。


「いえ、でも……」

「お嬢様は最近少々ご気分がすぐれないようなのです。今日も早めにお休みになられた方がいいかと」

 言われてみれば確かに顔色が悪い気がする。


「風邪でもひいたのかい?心配だな、ゆっくり休んで早く元気になってくれ。建国祭はまだまだ続くんだ、元気になったら一緒に街を回ろう」

「はい、ありがとうございます。お兄様」

 ようやくミレーヌが私の顔を見て笑ってくれた。最近はよくわからない人間のせいでミレーヌとよく話をできていなかったから、こうして笑顔を向けてくれることが本当に嬉しい。


「お二人はとても仲がよろしいんですね」

 シャルドの言い方がまるで嫌味ったらしく聞こえるが、無視した。





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