変わらぬ思い
「やべーよ! 逃げんぞ!!」
「おい!! 何寝てんだよ!? ウゲ! こいつ白目むいてやがる!?」
マー君のジャーマンスープレックスが決まってすぐに、不良達が戻ってきた!
あの慌てようだと、ユリが無事に先生に合流できたようだ……よかった。
「ぐっ……うぅ……」
2人に揺さぶられ、白目をむいていた不良が意識を取り戻しだけど、まだ朦朧としている。
そりゃそうだろう、整備されたリングではなく硬い地面に叩きつけられたのだから。
「とにかく立たせろ!」
「てめーら! 覚えとけよ!!」
「ふん、誰が覚えとくもんか!! 早よ行け!!」
失神していた不良の腕を肩に担ぎ、二人掛かりで運んで行った。
マー君は仁王立ちで、不良達が武道館裏から見えなくなるまで見張っていてくれた。
その後ろ姿はとても小さくて可愛らしい背中だけど、私にとってはとても大きく最高にカッコいいヒーローの後ろ姿に見えた。
「みなっぴ、大丈夫? へへ、やっと約束守れたばい」
ちょっと顔にアザができていたマー君は、振り返って照れ臭そうに、ニコっと笑った。
「あ……」
ドキン!!
マー君の『約束』と言う言葉と笑顔を見た瞬間、私の胸は大きく跳ね上がり、ある日の事が鮮明にフラッシュバックした!!
* *
あの日、私は近所のいじめっ子に眼鏡豚星人と揶揄され、いじめられていた。
おかっぱ眼鏡でふくよかで引っ込み思案だった私は、反論もできずに、ただただ泣くだけだった……。
そんな時、マー君が助けに来てくれた。
『みなっぴば、いじめるなぁ!!』
『うわ! マコトの来たぞ!!』
『へへ〜ん! いじめてませ〜ん!』
『あいつ、絶対この眼鏡豚星人好きとばい!!』
『せからしかぁ!』
…………。
『クソ! めんどくさか!!』
『もうよかさ! 行こうよ』
『ムキになって恥ずかしかー!!』
『マー君!! 大丈夫!?』
『いてて……おいは、まだまだ弱かなぁ……』
『そがん事なか!! かっこよかっ……たで、す……』
『!? ……お、おい!! ちゃんと強ーなって、みなっぴば守るけん!! 好きな女の人ば守れん男は大人になれん、ってお父さん言っとったもん!』
『え?』
『……あ』
『……』
『……』
『じ、じゃあ、私はマー君の為に可愛くなる……見た目でいじめられないように頑張る!』
『なら、おいはもっと大きくなって、強くなるごと頑張る!!』
『わ……私も、頑張る!!』
『僕がぁ……』
『私が……』
* *
そうだ……今、完全に思い出した。
幼い日の約束と互いの思い……。
あの日、私は心に誓ったんだ……。
小さくて
優しくて
カッコよくて
責任感が強くて
頑張り屋で
無鉄砲で
がむしゃらで
そんな私のヒーローだったマー君に負けないよう、自分を変えると誓ったんだ!
それから、私は自分を変える為に努力するようになった。
髪型を変え、視力を矯正し、ダイエットも始めた。
初めて心から自分を変えようと思った。
でも、不思議と辛くはなかった。
むしろ変わる自分を想像して嬉しくもあった。
でもそんな時、父の転勤が決まった。
引っ越しで離れる時、お互いに泣いた。
凄く悲しかった……マー君が忘れられなかった……。
だから小さい子を見てはマー君の姿を重ねて、寂しい思いを押さえてきたんだ。
私が成長するにつれ、小さい頃の記憶がぼやけてきて、ショタを愛でる事だけが残った。
忘れていた……私の原点の想いを。
ショタ好きと言うのは、私が自分を押さえ込み、想いを守ろうとした結果の副産物だったのだ。
ポロポロと溢れる想いが、目から涙と共に溢れ出してくる。
「みなっぴ大丈夫?」
マー君が慌てて駆け寄ってきてくれる。
何も変わっていない。目の前には純粋でカッコいい、あの頃のままのマー君がいた。
「ふぐぅ……う、うゎあああああん!!」
「え!? みなっぴ!?」
思い出した……自分の想いを隠し、ショタ好きと言う嘘を自分につき、偽りの自分を演じていた私はマー君の前では必要無い。
私は流れ出る涙を止められず、泣きじゃくりながらマー君に思いを伝える。
「マー君……私、思い出した……あの日の……やぐぞぐ……思いだじだよぉおおお」
「え? あーあーかわいい顔がぐしゃぐしゃばい……タオルでよかかな?」
腰にに下げたハンドタオルを差し出して、ちょっと照れながら私の心配をしてくれるマー君。
その仕草も表情も優しさも、全てあの頃のまま……。
でも中身はあの頃より、ずっとカッコよくて優しくて素敵な男の人だった。
もうだめ、抑えきれない。
長年の想いを隠し、堰き止めていた枷が外れ、全ての想いが爆発し、溢れ出てくる。
私はその場に崩れるようにへたり込み、マー君の肩を掴んで思いっきり引き寄せた。
「え?」
だって、目の前の小さな男の子は、私がずっと思いを寄せた大切な人だから!
「マー君!! 大好き!!」
「んむぅ!?」
もう、自分に嘘つかなくていい。
だって私が本当に大好きで、小さくてカッコいいヒーローが目の前にいるんだから。
書いていて思ったんだけど、最初のショタ萌えガチガチの勢いだけの雰囲気どこいった!?
もっとこう……ゴリゴリのコメディだっただろうが……。
そんな葛藤と共に書いていた作品となりました。
こんなのみんな受け入れてくれるのだろうか!?
現実恋愛の読者の皆さんはこんな変態的かつ、熱い物語は好きなのか?
うるせぇ!!大好きだよ馬鹿野郎!!
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作者が。
よろしくお願いします!




