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異世界版でデスゲーム  作者: 妄想日記
第三章 喪失編
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第63話 ??才 決着

 爆発的に加速を見せる踏み込みから大振りの剣を力の限り叩き付けた。

 男が咄嗟に二刀をクロスして防ごうとするのが見えたが、それでこの勢いが止められるとは到底思えない。

 同じ両手であれば速度と重量のあるこちらの方が断然有利なのだから。

 勢いに任せて振りぬかれた両手剣が刀とぶつかり合い、まるで抵抗をものともしないかのように刀を弾き飛ばした。


「シェイハッ!」


 さらにそこからステップによる回転力が加わり、流れるように二太刀目を放った。

 スキルを使った覚えはないが、スキルが発動している感覚はある。

 発動していたのは剣技スキルではなく、『ダッシュ』と『ターンステップ』。

 これら一連の動作が思考することなく勝手に身体が動いた。

 そして自分が何をしたのかを理解した瞬間、目の前を鮮血が咲き誇った。


「やる…………ねぇ…………」


 男の胸元を大きく袈裟懸けに切り裂いたのだった。

 男の身体がぐらりと動いたかと思うと、そのまま前のめりに倒れた。

 地面に血が染み込み、じわりじわりと広がっていく。


「け、決着です!勝者・シノ!!!」


 司会者が決着を宣言すると、男の下へとヒーラーたち駆け寄り、魔法を掛けて担架で運び出していく。

 そして司会者が矢継ぎ早に言葉を口を開いた。


「な、なんと瞬殺です!まさか、まさかの展開!誰がこの展開を予想できたでしょうか!勝負を決めたのは今まで使わなかったトンファー……ではなく、何の変哲もない両手剣!トンファーはこのために布石だったのかーーーー!!!まさに凄まじいの一言に尽きるでしょう!Aランク冒険者のガードをまるでものともしない破壊力!そして相手に立て直す暇すら与えない淀みない連撃!文句無しの実力を魅せつけ七国決戦への出場枠を勝ち取ったのはエーベルハイト家の擁する仮面の戦奴隷シーーーーーーノーーーーーー!!!」


 司会者が興奮したように会場を囃し立てる。


「必ずや!必ずや本戦でも人間の底力を示してくれることでしょう!では、ここで本戦への出場を決めたシノ殿から一言いただきたいと思います。今回の戦いどうでしたか?」


 そういって俺の向かって声量を拡張する魔道器を向けてきた。

 そうだな……、ここはやはりお嬢様のアピールをしておくのが得策か。


「今回の勝利は全てリリスお嬢様のおかげです。リリスお嬢様が私にこの剣を与えてくださらなければこの勝負、私は負けていたかもしれません」

「なるほど!確かにさっきまでの戦いでは使わなかったトンファーしか持っていませんでしたね!でも剣が使えるのであれば初めから使えばよかったのでは?」

「自分でもあそこまで扱えるとは思えませんでした。私の隠れた才能を見抜き、私の取るべき行動を示してくれるお嬢様がいるからこそ、今自分はこの場に立っていることができるのだと確信しています」

「何もかもが主人のおかげだったというわけですね!それではもちろん本戦も?」

「当然、リリスお嬢様の神算があれば必ずや皆さんのご期待に添える結果を出すことができると信じています」

「これは頼もしいお答えです!戦奴隷シノの底知れぬ戦闘力とエーベルハイト家秘蔵の才女、リリス嬢の神算!まさに一部の隙もない鉄壁の布陣がここに選ばれたことになります!!!今まさに我々の予感が確信へと変わろうとしています!彼ら、いえ、彼女たちはきっと証明してくれることでしょう!人間こそが世界に誇ることができる種族だということを!!!」


 こんなものでいいでしょう。

 それにしても……今回は本当に疲れました……ね。


 俺は鳴り止まぬ歓声を浴びながら会場を後にした。

 待合室に戻ると、お嬢様たちの笑顔によって出迎えられた。


「おめでとうございます、シノ!」


 しかし俺は……。


「申し訳……ありません、アルマ様……。後は…………」


 そこで意識を手放してしまった。

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