第60話 ??才 バトルロイヤル
ともあれこうして武器は決定した。
鋼鉄製である市販品のトンファー『スチールトンファー』をお嬢様より与えられた俺には一部の隙すらもなくなった。
防具はお嬢様の奴隷印でもあるダークの執事服。そしてアルマ様からは回復アイテムとともに話題性を呼ぶようにと変な黒いバタフライマスクを押し付けられた。
そして一ヶ月間にも及ぶ修行の末、トンファーキック以外の奥義を会得し、大会の準備は万全とも言えるほどの完成度を誇った。
ここまでしてもらっては無様な姿を晒すわけにはいかない。
そして俺は遂に戦いの舞台へと降り立った。
七国決戦グランドハイド王国出場予選。会場は当然超巨大闘技場コロッセオ。総勢300人近くからなる生き残りを賭けたい戦いの始まりである。
まずは一グループ十八人に分けられ、バトルロイヤル戦が開始されることとなっている。抽選か主催者が勝手に決めたのかは分からないが、俺はGグループへと割り振られた。
一人。また一人とバトルロイヤル戦の勝者が決まり、遂には俺の出番が回って来る事となる。
「シノ。勝てなくても構いませんから絶対に生きて私の下へ帰ってきて下さい」
「お嬢様のためにも死ぬなよ」
「御前様!全員ぶちのめしてくるのじゃ!」
「心配は無用です。必ずやお嬢様のために勝利を持ち帰ってみせましょう」
三者三様の声援を受けて俺はリングへと足を踏み入れた。
参加者の中には戦士に魔術師、そして魔物使いまでいる。
そのうちの何人かが怪訝そうにこちらを伺っていた。
無理もない。こんなところに執事服を着て変なマスクを付けて、武器も持たずに立っているのだから。
場違いなこと甚だしいだろう。
「それではこれよりトーナメント出場を賭けてGグループによるバトルロイヤル戦を開始する!」
魔法により拡張された司会者の声がコロッセオに響き渡る。
「一回戦第七試合……はじめ!」
開始の合図とともに俺はすぐに駆け出した。
最初に狙うのは……そう、アルマ様……よりもずっと真面目そうに見える女騎士だ。
俺は開始前から既にこれはという人物に俺は既に狙いを定めていた。
なぜ一目見て真面目そうだと判断できたかというと、もう見た目がまさに教科書通りだったからだ。
片手でも扱いやすいロングソードに取り回しの利くカイトシールド。そして露出の多くない無個性の鎧と兜。さらにはその兜の下から覗く戦いやすいように編まれた短めの三つ編み。しかも序盤は守りに回ってやり過ごそうとする消極的かつ堅実なバトルスタイルは疑いようのないほどに委員長騎士と呼ぶに相応しいほどの真面目さが垣間見える。
だから俺はこの人に目を付けた。




