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異世界版でデスゲーム  作者: 妄想日記
第二章 学園編
51/83

第41話 十二才 綺麗なお姉さんは死にそうです

 ボクたち個人の登録手続きはすぐに終った。


「こちらが冒険者証になります」


 ステータスカードのようなカードを受け取ると、そこには冒険者としてのボクの情報が書かれていた。



冒険者証


登録番号 0004249308

名前 ヴァレリア

種族 ダークエルフ

性別 女

年齢 12歳

職業 サマナー

冒険者ランク F

戦闘ランク F

クエスト実績 受注0回 達成0回 失敗0回

クエスト達成率 0%



 ふむ。ステータスカードに比べたら書かれている内容が実に簡素だ。

 名前とかステータスで確認するわけじゃないから偽名でも作れそうだし、冒険者の管理は登録番号で全部やってるんだろうな。


「皆様はまだ冒険者としてクエストを達成していないので冒険者ランクと戦闘ランクはFとなります」

「これって何でランクが二種類に分かれてるの?」

「冒険者として優秀な者が戦闘においても優秀であるとは限りません。だから安全のためにギルドでは二つのランクで冒険者の管理を行っております」

「なるほど」

「冒険者ギルドでは依頼のことをクエストと呼んでいますが、冒険者ランクはどの種類のクエストを達成しても上がっていきます。しかし戦闘ランクは討伐や護衛など戦闘行為を含んだクエストを達成することでしか上がらないようになっています。そして自分のランクより上のクエストを受注することはできません」

「じゃあボクたちはFランクの依頼しか受けられないってこと?」

「基本的にはそうなります。ですが、パーティーを組んでいただければ冒険者ランクはパーティーメンバー全員の平均値、戦闘ランクはパーティーメンバー上位3人の平均値プラス1となりますので、冒険者ランクF、戦闘ランクDのクエストを受注することが可能となります。パーティーに関しては登録の必要はなく、クエスト受注時に各々のギルドカードを提示し、パーティーを組む旨を伝えていただくだけで構いません」

「へ、へぇ。そうなんだ」


 冷静を装ったもののボクは酷く動揺していた。


 がっかりだよ!せっかく姫の作った『イージスの楯』の名を世界に知らしめようと思っていたのに!


「最後に注意事項をお伝えします。勘違いされている方も多いのですが、冒険者ギルドと言うものは冒険者の組織ではありません」

「え、違うの?」

「はい。冒険者ギルドとはクエストを依頼するお客様とそれを請け負う冒険者の皆様とを繋ぐ、云わば仲介屋のような存在です。つまり我々の主な仕事はその事務処理となりますので、我々冒険者ギルドの職員と冒険者の皆様で一つのギルドを組織しているわけではないのです」


 つまり冒険者登録をして冒険者になったとしても、そこに仲間関係はないということなのか?


「だからランクによる上下関係等も存在しませんので、そういったものを利用した詐欺には十分ご注意ください」

「そ、そうだったのか……」


 冒険者ギルドって完全に冒険者たちによる大きな組織のことかと思ってた。

 それがまさか単なる事務屋だったとは……ちょっと……いや、かなりイメージが……。


「それと冒険者たちの組織するギルドへの仲介も行っておりますので、いつでもご利用ください」

「あ、はい。でも今はいいです」


 とりあえずボクたちはまだ学生だし、今のところどこかのギルドへ入る予定もない。


「ではクエストを受注しますか?」

「はい、ボクたちが受注可能なクエストを見せてください」

「畏まりました。こちらが受注可能なクエスト一覧になります」


 そう言ってお姉さんが大きな紙を一枚取り出すと、そこには様々なクエストが書かれていた。

 討伐クエスト。採取クエスト。配達クエスト。お手伝いクエスト。などなど。

 しかしそこでどんなクエストがあるのか眺めているうちに、紙に書かれていた『薬剤宅配』クエストが白文字から灰色文字へと変わっていった。。


「これは……?」

「この用紙には当支店で受注可能な全てのクエスト情報が常に更新される仕組みになっています。ですので、誰かがクエストを受注すると重複して受注することができないように選択不可能となります」

「凄いな。そんなことまでできるのか」

「冒険者はみなリーゼたちのように気性の穏やかな人ばかりじゃないんですから、クエストの重複やらどっちが先に受注したかやらは揉める原因にもなりますし、そこに力を入れるのは必然というものですよ」

「お前このメンバーを見てよくもいけしゃあしゃあとそんな嘘が吐けるよな」


 リーゼが改めてベルタを見てバリスタを見てボクを見る。


「残念ながら短気さんばっかりでしたね。リーゼ以外」

「いきなり受付の人に斬りかかったリーゼロッテにだけは言われたくないですね」

「気性がどうこう以前にお前ら常識がねぇだろ」

「「「お前が言うな!」」」

「ってボクたちはコントをしにきたわけじゃないだから。早くクエストを選ばないと!」


 そうだ。今日はシルフィードの生徒たちが大勢ここに来ているんだ。

 みんな冒険者ランクは同じだろうから、早くクエストを選ばないといいのがなくなってしまうじゃないか!


「で、みんなどんなクエストがいいんだ?」

「「「討伐」」」

「脳筋パーティーかよ!」

「そういうお姉様だって討伐がいいんですよね?ですよね?」

「う……それは否定できないけど……」

「じゃあ、この中で一番難易度の高い討伐クエストを糞ビッチさん、あなたが選んでください」


 そういってリーゼは受付嬢さんを見た。


「わ、私がですか?というか、糞ビッチ……私が……」


 リーゼの酷すぎる言動に受付嬢さんがショックを受けてしまったようだ。こいつ完全に歩く公害だな……。


「そう、あなたです。ビッチ職なんだから気に入らない相手に碌でもないクエストを宛がったり、気に入った相手に美味しいクエストを提供したりする『ビッチ』スキルはカンストしてますよね?」

「し、してません!というかそんなスキルありませんしビッチ職でもありません!」

「と申しておりますがベルタさん、判定は?」


 受付嬢さんが半分涙目になっている。

 女の人の涙を見るとついつい助けたくなっちゃうのは男のサダメ。


「リーゼ、お前もそのくらいに……」

「はいアウトー!この方はビッチ確定ということで」


 ベルダによって無慈悲な判定が下される。


「そんな!?」


 受付嬢さんが涙目でこちらを睨んでくるが……か、可愛すぎる!


「どこまでビッチなんですかこの盛りのついた発情狐は……。禁欲させたインキュバスと一緒に屋敷の檻の中にでも放り込んでやりましょうか」

「おいおいお嬢ちゃんたち。さっきっから後ろで話を聞いてれば」


 突然後ろに並んでいた男がリーゼの肩を掴もうと手を伸ばしてきた。

 しかしその男がリーゼに触れようとした瞬間天地がひっくり返る。


「俺の仲間に気安く触れんじゃねぇよ」


 男がリーゼを掴む直前にバリスタが男を空気投げしたのだ。

 そして反転した男の鳩尾みぞうちをベルタの盾の先が正確に穿つ。


「ぐふっ」


 そして男は完全に沈黙してその場でぐったりとなった。


「またつまらぬものを伸してしまいました」


 そう言って盾の先をハンカチで拭くベルタ。

 一瞬辺りを沈黙が支配するが、男の仲間らしき人たちの怒りによって再び空気が揺らめき始めた。


「て、てめぇら……」


「いい加減にしろ!!!」


 しかしボクの怒りに任せた一声で辺りが再び沈黙に包まれる。


「ボクたちはクエストを受けに来ているんだぞ!それをお前らと来たらこんなところで戦いも知らないような善良な市民相手に喧嘩売って!」


 あーもう!考えれば考えるほどムカムカしてきた!


「ボクの欲求不満は誰が受け止めてくれるんだ!?お前らか!?」


 早くモンスターと戦いたいっていうのにこんなところでいつまでもゴタゴタゴタゴタゴタゴタゴタゴタゴタゴタゴタゴタゴタゴタゴタゴタゴタゴタゴタゴタゴタゴタゴタゴタゴタゴタゴタゴタゴタゴタゴタゴタゴタゴタゴタゴタゴタゴタゴタゴタ!!!!!


 怒りに任せてカウンターに手を叩きつけるとカウンターが粉々に粉砕された。

 無意識のうちに『殺刃』スキルにより具現化された殺意が右手に宿っていたらしい。

 しかしなおも身体から溢れ出る怒りはとどまることを知らない。


「お、お姉様!冷静に!クールダウンです!ほら、深呼吸して。ヒッヒッフー、ヒッヒッフー」

「それはラマーズ法だー!!!」


 怒りに任せて具体的な矛先を指定されていない『殺意』は武器に宿ることもなく、辺り一帯を威圧感として包み込んでいく。


「ヴァレリア、落ち着け!そいつは洒落になってねぇ!」

「そうですよヴァレリア!さすがにそれはやりすぎです!」

「お前らが言うなあああああああああああああああああ!!!!!」


 バリスタとベルタの言葉についにボクの怒りは爆発した。

 『殺刃』スキルの効果に拍車がかかり、威圧感が衝撃波となって周辺に放たれる。

 しかしそこでトントンと肩を叩かれた。


「お姉様」

「あ゛あ゛?」

「あれ」

「あっ……」


 リーゼの指差す方に目を向けると、綺麗なお姉さんもとい受付嬢さんが生まれたての子鹿のようにカウンターの片隅かたすみでぷるぷると震えていた。

 しかもその綺麗だった顔を恐怖に引きつらせ、声を殺してガン泣きしてしまっている。

 え…………えっと、もしかしてボクの所為?

 我に返ったことで怒りがしぼみ、それとともに『殺刃』スキルの発動が収まっていく。


「……ゴホン。つまりボクが何を言いたいかと言うと、みんな良識は守ろう」


 ボクの言葉に冒険者ギルドへ来ていた者たちが一斉に頷いた。

 受付嬢さんのようにガタガタと震えながら。

 完全にどん引きされている。

 うぅ……、これじゃあ完全にボクが癇癪を子供じゃないか。とほほ……。

投稿が滞ってしまい申し訳ありません。

最近どうもにもキャラ立ての仕方がよく分からなくなり、話の勢いにも不安が出てきたので、初心に返るべく前作の改稿作業を行っておりました。

その作業も現在半分まで終っているので、出来るだけ早く終らせて本編を更新していきたいと思います。

今しばらくこちらの方はお待たせしてしまう事になってしまいますが、よろしければ「【迸る妄想で】リメイク版でデスゲーム~ヴァルキリーヘイム編~【リメイクしてみた】」の方に目を通しながら、長い目でお待ちいただければ幸いです。

せっかく改稿してもあまり読んでもらえないのは淋しいものなので(ノД`)シクシク

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