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異世界版でデスゲーム  作者: 妄想日記
第二章 学園編
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第35話 十二才 ぼっちどもが夢のあと

「というわけで落ち着きましたか?」

「はい、ご迷惑をおかけしてすいませんでした」


 ローブの少女が礼儀正しく謝ってくる。

 こうやって見ると見た目が怪しいだけで普通の少女にしか見えない。

 いや、むしろ実に礼儀正しい少女だ。見た目以外は。

 さっきの光景は一体なんだったのだろうか?悪い夢だったとしか思えない。


「ダメなんです。男の人に触られると。すぐにカッっとなっちゃって」

「な、なるほど……」


 何かトラウマでもあるのだろうか。

 むしろこっちがトラウマになりそうな光景であったが。

 それにしてもアレはカっとなるというレベルを逸脱していたのではないだろうか。

 むしろ呪われていたと言う方が適切な気がする。

 つまり意訳するとこういうことだ。


 男の人に触られるとすぐ呪いが発動しちゃって、テヘッ。


 ボクの生存本能が激しくアラームを打ち鳴らしている!

 触らぬ神に祟りなし。昔の人は実に良いことを言った!すぐにこの場を離れるのが最上の策。そう、これは戦術的撤退であり敵前逃亡ではない!

 そう思って口を開こうとした瞬間、隣から信じられない言葉が発せられた。


「それならリーゼたちとパーティーを組みませんか?」

「「(う)え!?」」

「おい」


 ボクと少女の声がハモる。

 しょ、正気か!?


「いいんですか?!」

「おい……」


 ローブの中から滅茶苦茶嬉しそうな声が零れてきた。

 ローブの中で物凄い笑顔になっているところが容易に想像が付く。。

 くっ!迷惑そうならあっさり引くこともできたのに、これじゃあ断れないじゃないか!


「もちろんですよ。例えあなたが豹変したとしてもリーゼとお姉様がいれば簡単に治せますし」


 簡単じゃない!全然簡単じゃないぞ!


「嬉しいです。私こんなだからパーティー組むのは諦め……」

「おい!無視するんじゃねぇ糞が!」


 さっきからおいおいおいおい五月蝿いと思ったら、ローブの少女に喧嘩を吹っかけていたDQNが何やらボクたちの会話に割り込んできた。


「何ですかリーゼと愉快なお猿たちの前衛アタッカーナナシーノゴンベーニョさん」

「あぁ?嘗めてんのか?」


 疑問を持つまでもなく、嘗めていることは確定的に明らかである。

 むしろこの嘗めた態度はこいつのデフォルトと言って過言ではない。

 あれ?それ以前に今聞き捨てならない言葉が聞こえた気がするんだけど……。


「ちょっと待てリーゼ。リーゼと愉快なお猿たちって何だ?」

「ああ、パーティーリーダーはお姉様ですよ」

「そんなこと聞いてねぇ!?しかもパーティー名だったのかよ!」


 そのパーティー名からは悪意しか感じられないぞ。


「何で俺がてめーらのパーティーに入る事になってんだコラ」

「いいじゃないですか。どうせあなた『も』友達いなさそうですし」

「は?!ば、馬鹿じゃねーのか糞が!と、友達のい、一国や二国くらいいないわけねーだろうが!」


 ちょっ、こいつ動揺しすぎだろ!しかも友達の単位が国とかどんだけ嘘のスケールがでかいんだよ!

 そして地味にこちらを攻撃してくるなよリーゼ……。


「パーティー名は『ぼっちーず』とかどうですか?偶然にもリーゼ以外友達いなさそうですし」


 リーゼがニンマリと笑ってこちらを見回すと、ボクとローブの少女とDQNの少年はみんな気まずそうに目を逸らした。

 なんでこいつは執拗にボクのウィークポイントを突いてくるんだ?

 敵か?こいつは敵なのか?

 いや、でもボクはぼっちなんかじゃないと思うんだ。

 この世界に来て十数年『たまたま』友達がいないだけで、ネットゲームの世界じゃギルドのみんなとかいっぱい友達になったし?まぁ言ってみればリア充ってやつ?


「今このチャンスを逃して全員ソロプレイでやっていくか、ここで手を取り合って正式にパーティーを結成するか二つに一つですよ。ちなみにリーゼはパーティーに困ってないのでどちらでも構いませんが」

「ボ、ボクは別に友達には困っているわけじゃないけど、このメンバーでパーティー組むのは反対じゃない……かな?」

「お、お前らがそこまで言うなら入ってやってもいいけどよ……」


 DQNの癖にちょっと嬉しそうに言うとかツンデレか?ツンデレなのか?


「なぜか皆さんに避けられているのでよろしくお願いします」


 一人だけめちゃくちゃ素直だ!しかもこれだけ怪しい格好をして呪われているのになぜ避けられてるのか気付いてないだと!?

 天然か?天然なのか?

 ここは突っ込んでおくべきだろうか。


「パーティーを組むのはいいけど、なんでえーっと……」


 そう言えば何って呼べばいいんだろう?


「あ、ベルガッタです。ベルタで構いませんよ」

「そうか。ボクがヴァレリアでこっちが妹のリーゼ。で、あんたは?」


 ボクとリーゼの名前を告げてDQNに自己紹介を促した。


「バリスタだ。好きに呼べ」

「分かりました。バリリン」


 などといきなり悪意全開のあだ名をつけようとするベルガッタ、もといベルタ。実はこいつ、かなりいい性格をしているらしい。


「おい……」

「気に入りませんか?ではステイシーで」

「女の名前じゃねぇか!もういい!呼び捨てにしろ!」

「最初からそう言えば良かったんですよ。よく知りもしない他人に自らの権利を委ねるなど自殺行為であることを理解すべきです」


 あ、あれぇ……そんなに難しい話だっけ?

 さすがシルフィードの学生。一癖どころか三癖も四癖もあるらしい。


「えっと、話は戻すけどベルタは何で入念にローブで身体を隠してるんだ?」

「何のことですか?私はローブなんて着ていませんよ」


 ベルタはそう言って両手を広げ、とぼけたような態度を取った。


「いやいや、それは無理があるから!むしろベルタの本体がローブかよってくらいローブきこんでるから!」

「……これは。アレです。宗教的な問題になるので理由を口にすることはできません」


 とことん誤魔化そうとするベルタ。しかし隠されれば隠されるほどあばきたくなるのが人のさが。そしてその本能を隠そうともしないリーゼがついに動き出した。


「甘い、甘いですね。まさかリーゼのパーティーメンバーが『お姉様からベロチューで飲ませていただいた唾液』のように甘い人だったとは」

「何その捏造!?」


 その言葉を聞いた周りの生徒たちが顔を赤くしている。

 思春期の少年少女たちにはどう考えても刺激が強すぎである。

 ここはダークエルフ領ではないのだから。


「ちなみに糖度は50度でした」

「それもうジャム並みだから!生活に支障が出るレベルだから!」


 糖度50ってどんな唾液だよ……。

 普段からそんなものを分泌してたら味覚がデスペナ食らうぞ。


「宗教を出せば全てが許されると思っていたとしたらそれは大間違いです。そのローブの下に何が隠されてるのか……、ついにダークエルフ秘伝の『よいではないか』を披露する時が来た、と言うわけですね。ふふっ、うふふふふふふふふっ」


 まさかアレをここで!

 『性技』スキルの中でも秘伝中の秘伝。嫌がる相手に対して確定でクリティカルダメージを叩き出すと言われているアレをここで使うと言うのか!こんな公衆の面前で!

 手をわきわきとさせながら少しずつベルタの傍へとにじり寄っていくリーゼ。

 こ、このままいけば……じゅるり。


「あ?何で嫌がってんだよ」


 そう言ってバリスタがベルタのローブを剥ぎ取った。

 ごく自然に。ごく何気なく。

 な、なんて空気の読めない奴なんだ!

 絶望した!空気の読めないパーティーメンバーに絶望した!



 しかしてなんとローブの下から出てきたのは絶世の美少女!

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