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異世界版でデスゲーム  作者: 妄想日記
第二章 学園編
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Side生徒Aを自称する者 世界観

 私の名前は……ここでは生徒Aと名乗らせてもらいます。

 もしシルフィード以外の学園に入学していたら、その学園のトップを張ることになるほどの能力を持っているのが私たちシルフィードの生徒です。

 現に私も幼い頃から神童と呼ばれ、本国の同世代には共に競い合える人すらいませんでした。

 その私がなぜ生徒Aなどと汎用エキストラのような名前を名乗っているかというと、この学園における自分の立ち位置を理解してしまったからに他なりません。

 悔しくはないかと?

 いえ、実はこの生徒Aという立場は意外と居心地のいいもので、若干病みつきになっていたりもします。

 周囲からの期待の篭ったプレッシャーから解放され、才能があるがゆえに異常者として認識されていたものが健常者として認識されるようになり、普通の人たちはこんなにも生き易い環境で生活していたのかと新鮮に思うほどです。


 私を生徒Aにしてくれた人との出会いはまさに驚きの連続でした。

 入学初日、私は当然の如く30分前には教室に到着し、常々使っている魔法の構成をもっと効率的なものにはできないか分析していました。

 年頃の娘がもっと他にやることがないのかって?

 ないですね(キッパリ)。

 どうせならクラスの男子を分析したら?

 そんな無駄なことに私の貴重な時間を割かせてどう責任を取るつもりなんですか?

 は?結婚しよう?頭が湧いてるんですか?ロリコンは殺しますよ?

 ……分かればいいのです。つまり私は朝早くから登校し、年頃の娘よろしく魔法の分析を行っていたわけです。

 分析を始めて20分くらい経った頃でしょうか。結構時間ギリギリになって二人の生徒と一人のメイドが教室に入ってきました。

 一目でメイド服と分かる装いのメイド連れてるなんてどれだけ甘ったれた貴族なのかとややげんなりしながら二人を見て息を飲みました。


 は?


 私はこのとき産まれて初めて思考が停止してしまいました。

 一人は同世代にしては長身のダークエルフの少女。銀の長い髪を携え、凛とした力強い目力はまさに美貌と形容されるに相応しい存在。

 可愛いとか綺麗とか美人などと言った言葉ではとても足りません。

 まさか同世代の少女に対して美貌なんて言葉を使う事になろうとはいくら神童と呼ばれた私の頭脳を持ってしても、完全に予測不可能な事態。

 そしてその隣には、半目の少し眠たそうな銀髪の美少女。こちらはまさしく美少女といった感じで、歳相応の愛らしさを宿しています。

 しかし驚いたのはそれだけではありませんでした。

 女の私でさえ思わず目が向き、ガン見してしまったたわわなそれ。


 どう……せ……だい?


 もしこれがゲームであったならばコントローラーを投げるレベルです。

 しかしあまりの美貌を目の当たりにしてそんな気持ちさえ湧きあがってきません。

 そしてようやくになって三人の特徴に気が付きました。

 それはダークエルフであること。

 ダークエルフ……他種族との交流の少ない残忍な戦闘種族。特にダークエルフの女は気位が高く、嫉妬深く、好戦的で残忍で好色であるという話です。

 かく言う私もダークエルフをこの目にするのは初めてです。

 噂ではエルフ、ダークエルフの者は見目麗しいと聞いていましたが、これは予想を遥かに超えています。

 それは今まで見てきた有名な美術品と呼ばれるものたちよりも遥かに美しいものでした。

 現に私以外の生徒たちも息をすることも忘れて少女たち、特に長い髪の少女に魅入っているようです。

 まるで神でも見ているかのように。


 しかし、その状況も突如として崩れ去りました。

 少女の顔が崩れるのと同時に。

 なぜかは分かりませんが、少女がまるで思い出し笑いを……いや、うーん、何でしょう。良く分かりませんが、それ以上の残念なだらしのない顔になっていました。

 な、なんて残念な……こんなに残念な顔は未だかつて見たこともありません。

 しかし、そのおかげで親近感も湧いてきました。

 最高級の芸術品のように思えていた彼女もやはり一人の人だったようです。


 そして残念な顔になった少女を半目の少女がハリセンを持って頭を……え!?どついた!?

 残念な少女から残念な表情が消え、頭から血を流しながら半目の少女に抗議しています。

 その血ですら美貌を彩る素材となってしまっていますが、なぜハリセンで頭から血が出ているのか理解できません。


 そんな馬鹿な……。


 そして少女たちはいくらか言葉を交わすと、自分の座る席を求めて歩き始めました。


 周りから噂声が聞こえてきます。


「あれって、確か能力測定でゼロを取った……」

「もう一人の子は百……」


 その噂は私も知っていました。

 何とダークエルフの姉妹が能力測定試験で立て続けにゼロ点と百点を叩き出したと言うのです。

 百点を出す生徒は十数年に一人くらい存在するという話は聞きます。

 でもゼロ点を出す生徒は学園始まって以来初めてのことだったとのことです。

 ゼロ点などと言う点数は赤子か、もしくはよほど低級な種族でない限りあり得ません。

 そしてダークエルフは比較的尖ったステータスをしているため、能力測定試験では計算式の関係上有利になっているはずです。

 しかも能力測定でゼロ点だったにも関わらず、このシルフィードの入学試験を超えてきたという話です。

 どう考えても普通ではありえません。

 どうやらこの少女は完全に私の想像の範囲外にいる存在のようです。


 その後、噂話をしていた生徒たちの声がすぐに鎮まる事になりました。

 先生が入ってきたのです。

 ランドワーズ先生はこの魔法学科の担任だという話ですが、どう見てもそうは見えません。

 あの目は絶対に堅気の目ではありません。

 それに服の上からでも分かるよく引き締まった身体。

 軍隊出身者と言われたほうがまだしっくり来きます。


 ランドワーズ先生の言うことは思っていた通り厳しく、ぐうの音も出ませんでした。

 もしかしたら私は自惚れていたのかもしれません。

 いえ、この時点ではまだ自惚れていました。

 なぜならば自分よりも優秀な人を未だに見たことがないです。

 先ほどのダークエルフの少女たちにしろ、他人から聞き及んだ情報でしか知りません。


 先生に言われてクラスメイトが自己紹介を始めました。

 ああ、もうあんなに緊張して……とても見ていられたものではありません。

 よくあんな人が入学できたものです。

 ひとり、またひとりと特に面白くもない自己紹介が進んでいきます。

 つまらない……そう思っていたところに例の美貌の少女の番になりました。

 実はこの美貌の少女がどんな自己紹介をするのか……興味津々でした。


 しかしなんと美貌の少女は立ち上がって先生を睨みつけています。

 しかもその後にクラスメイト全員にガンを飛ばし、私までも威圧されてしまいました。

 思春期特有の自分以外はみんな敵とかいうやつでしょうか。

 近づくものはみんな傷つける刃物みたいな自分格好いいとか思っていたりするのでしょうか。

 それにしても美しい人の怖い顔というものは本当に凄味があるものですね。かくいう私も背筋が凍るもの思いをしました。


「ヴァレリア・ヴォルドシュミット」


 美貌の少女が自分の名前を告げます。

 あ、きちんと自己紹介はされるんですね。てっきりクラス全員に喧嘩でも吹っかけてくるのかと思いました。

 って、ヴォルトシュミットって確かディープブラッドの国王の家名じゃありませんでしたっけ!?


「趣味は戦闘全般。近接戦闘、魔法戦、集団戦、殲滅戦、撤退戦、戦いであれば嫌いなものはないけど、チェーンデスマッチとかのタイマン戦が特に好きだ。腕に覚えのある者がいるならばいつでも相手になろう」


 は…………え!?

 だ、ダークエルフのお姫様ですよね!?

 チェーンデスマッチ!?タイマン!?はっ?ちょっ!うえええええええええええええええ!!!!!

 お姫様が挑戦者求む?!


「学園に入学したのは魔法を極め、世界に手を掛けるだけの力を得るため」


 そしてまさかの


 世 界 征 服 宣 言 !!!!


 知っていますよ!こういう人を真性って言うんですよね!


「ボクの障害は全力を以って排除する。以上」


 しかもボクっ娘!この美貌のお姫様がまさかのボクっ娘!夢は世界征服!?

 いや、ある意味世界征服できてしまいそうな美貌は確かに持っていますけど!

 とてもではありませんが、自分の美貌を利用するような人には全く見えません。いえ、それ以前にこんなところで夢は世界征服発言なんてとんでもなく素直で、真性のアレなのだろうことは容易に想像がつきます。

 どういう教育をすればこんな方が育ってしまうのでしょうか。

 是非参考にさせていただいてものです。反面教師として。

 それにしても不思議と庇護欲を掻き立てられるのはなぜでしょう?

 今のやりとりに庇護欲を掻き立てるような内容はなかったはずなのですが。

 これがもしかして世に言うダメな子ほど可愛いというやつでしょうか。

 私などに母性などという感情があったことに些か驚きを禁じえません。

 この子は第一種絶滅危惧種のユニコーン並みにクラス全体でもって温かく保護すべき対象でしょう。

 異論・反論は認めません。サーチアンドデストロイです。

 ああ……、やり遂げてやったぜみたいなどや顔で座る姿すら可愛らしい。

 大丈夫。きっとあなたの想いはクラス全員に伝わっていることでしょう。


 そして次は半目のダークエルフの少女が自己紹介を始めたようです。


「リーゼロッテ・ヴォルドシュミットです」


 やはりヴァレリア様のご姉妹の方でしたか。

 分かります。この人も普通じゃないんですね。


「好きなものはヴァレリアお姉様。好きな言葉は略奪愛。そう!リーゼはお姉様を愛しているのです!」


 いきなり身振り手ぶりを交えて大舞台に立つ大女優かのように言い放っちゃいましたよこの人。

 しかも略奪愛って。もしかしなくても王族であるヴァレリア様には既に婚約者がいらっしゃるとか?


「もちろん性的に・も!」


 性的ですか、そうですか。ぶっ!せ、性的!?

 し、失礼。年頃の乙女に『ぶっ』はなかったですね。今のは失言です。忘れてください。忘れられないのなら、忘れさせてあげることも可能です。

 そしてもちろん性的の意味を知っているのは私が耳年増なのではなく、神童であるがゆえです。


「学園へは当然ヴァレリアお姉様と離れたくないから入学しました」


 出ました。どうだ参ったかと言わんばかりのどや顔です。

 まじですか。それだけのためにシルフィードに……しかも能力測定満点て。

 この人どうみても自分の言っている事に寸分の迷いすら持っていませんよ。言っていることは明らかにおかしいと言うのに。


「フフッ、そしてあわよくばここにいる間にお姉様の貞操を……」

「お前は何を言っているんだ!」


 突如ヴァレリア様が席を立ち、リーゼロッテ様の頭に向かって側面からドロップキックを放ちました。

 大きな打撃音が教室中に鳴り響いて、リーゼロッテ様が教室の端まで飛んで行きます。

 あらら、教室の壁にぶつかって振動がこっちまで響いて来てますよ。

 って、あれ普通に死にませんか!?


「ナイスツッコミですお姉様」


 しかしリーゼロッテ様はけろりと起き上がって、まるで何事もなかったかのように……。


「ですがツッコムならお姉様の猛々しいソーセージをといつもいつも……」


 下ネタを口にしました。

 あの、あなたもお姫様ですよね?

 もしかしなくてもそれだけの可愛さを持っていながら、変態ストーカーですか。自分の姉限定の。

 な、なんとも残念な……才能の無駄遣いにも程があります……。


「下ネタは禁止だ!今すぐその口を塞いでやる!」


 一方ヴァレリア様は大変迷惑していらっしゃる様子です。例え変態だったとしても、これだけ可愛い子に慕われたら、女の私でも思わずコロっといってしまいそうですが、そういうところは無駄に良識人なのかもしれません。


「ふふっ、お姉様に出来ますか?もちろんお姉様の猛々しいソーセージにならいつ塞がれても抵抗しませんが」


 それでも下ネタを止めないリーゼロッテ様。その表情はとても生き生きしています。


「くっ!まだ言うか!『召喚魔法!デスサイズ!』」


 ヴァレリア様が魔法を唱えると、ヴァレリア様の右手に死神の象徴……巨大で無骨な大鎌が現れました。

 召喚……魔法!?

 しかもサモンアイテムなんて少なくともスキルレベルが20以上ないと使えないはずですが!?


「お相手しましょう。『氷結魔法、セツゲッカ』」


 リーゼロッテ様が魔法を唱えると、美しい刀の形を模した氷の武器がその両手にそれぞれ生み出されました。

 今度は氷結魔法グラシアルウエポンの改良型ですか。

 確かスキルレベル40を超えた魔法だったはずです。

 スキルレベル40といえば、そこそこ才能のある冒険者が30歳くらいにしてようやく辿り着く領域。

 とてもではありませんが神の加護からようやく解放された私たちが使える魔法ではありません。

 もしかして二人とも見た目通りの年齢じゃないとか?

 いえ、それはないはずです。確かエルフやダークエルフといった長寿な種族も成人するまでは人間と成長速度が変わらなかったと記憶しています。

 となれば、二人の才能が凄まじいのか、ダークエルフの英才教育が凄まじいのか……恐らく両方でしょう。

 現に今目の前で繰り広げられている攻防は、並みのランクの闘技場の試合よりもよほど見ごたえがあります。

 はっきり言って、ヴァレリア様の一太刀目すら捌けるものはこのクラスにいないでしょう。

 いえ、シルフィードの戦士学科にさえいるかどうか怪しいレベルです。

 これで能力測定ゼロ点だと言うんですか。


 私はこのとき初めて真の天才というものと目の当たりにすることになりました。

 やはり天才は天才。私たち凡人とは何ひとつ共有する部分が見当りません。

 神童などともてはやされていた私のなんと凡庸なこと。

 私にはあんな美貌はありませんし、世界征服に夢見ていませんし、戦いなんて好きではありませんし、変態ストーカーにはなれませんし、こんな大衆の面前で愛の告白も下ネタも口に出来るわけありませんし、あまつさえ戦闘を始めるなどという暴挙に出ることなんてその発想すら浮かぶことはあり得ません。

 だから私は生徒Aでいいのです。

 この物語の主役は彼女たちであって、私はそれをほんの少しだけ彩るエキストラの一人になれればそれでいいのです。

 そう、ヴァレリア様の世界征服を温かく見守る会『ラヴ・ヴァレリア』ファンクラブ会員ナンバーゼロとして。

感想にて要望があり、考え始めたら妄想が止まらなかったので書いてみました。

第三者から見た主人公たちはこんな感じになります。

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