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異世界版でデスゲーム  作者: 妄想日記
第二章 学園編
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第27話 十二才 入学試験(筆記試験)

 そしてついに入学試験当日の朝がやってきた。


「ハンカチは持ちましたか?」

「セフィが服に入れてくれてたよね」

「筆記用具は持ちましたか?」

「セフィが鞄に入れてくれてたよね」

「替えの下着は持ちましたか?」

「セフィが鞄に入れて……いやいや!必要ないから!そんな試験ないから!」


 そう言ってセフィが何気なく忍ばせていたボクの勝負下着(訓練用)を鞄から取り出して床に叩きつけた。

 替えの下着が必要な試験ってどんな試験だよ!

 ……ダメだ。想像したらちょっとどきどきしてきた。

 そんなボクにセフィが追撃をしかける。


「完璧な仕事をこなす優秀なメイドにいってきますのキスは済みましたか?」


 いつも無表情なセフィがなぜかちょっと誇らしげにそんなことを言う。

 いや、そんなドヤ顔されても……というか……


「今まで一度もそんなことしたことないよね!?」

「ほら、お姉様。遊んでないで早く行きますよ」


 リーゼが呆れ顔でこっちを見てくる。


「え、今のボクの所為?ボクが悪いのか?」

「大丈夫ですよ。お姉様は何にも悪くありません」


 そう言ってリーゼはにっこりと笑い、言葉を続けた。


「起床が遅いのも、セフィが手伝ってくれているというのに準備に手間取るのも、玄関で十分以上待たされているのも、全てお姉様の所為ではありません」

「すいませんでした!」


 コンマ一秒で土下座が完了する。

 それを言われるとぐうの音も出ないのは事実だった。

 確かに起きたらもうご飯が出来てて、セフィに着替えまで手伝ってもらって、全部準備してもらっているにも関わらず、リーゼを随分と待たせてしまった。

 この世界に来てセフィに世話されるようになって、ますますボクはダメ人間になってしまったかもしれない。

 生活能力で言えば、最底辺。世間知らずの王侯貴族のように世話をしてくれる人がいなかったら一日で干からびてしまうことだろう。

 あれ?そういえば今は王族だったか?

 何というか、毎日ボクがイメージする王族とは掛け離れたことばかりしてたから、自分が王族ってこと時々忘れてしまうのは仕方がないことだと思う。

 というか、むしろ覚えていることの方が少ない……。


 壁にかかっている時計を見るとそろそろいい時間だ。

 おかしい……、かなり早めに準備を始めたはずなんだけどな……ははっ……ハァ……。


「それじゃあ、いってきます」

「いってきます。シャルも頑張ってお勉強するんですよ」

「はい。いってらっしゃい、リア姉さま、リゼ姉さま」


 ボクたちはシャルと母さんたちに見送られて真新しい屋敷を後にした。

 そう、今回の引越しに際し、父さんがボクたちのために学校の近くへとでかい屋敷を超特急で建てさせたのだ。

 ここへ引っ越したのは母さんとボクとリーゼロッテとシャルロット。そしてメイドはテラとセフィリアとセルフィに他数名だけである。


 ボクたちがこれから向かう学校機関『シルフィード』は、かなり広く門戸を開いている。

 シルフィードは自由都市協定に参加している全ての国から援助金が入るため、入学金、通学費は必要なく、身分や種族に関係なく入学が認められる。

 しかし当然のことながら入学希望者全員を受け入れていたら、それだけ教員や施設の手が届かず、教育の質が落ちてしまう。

 だから人員を絞り込むために、毎年厳しい入学試験が行われているというわけだ。


 入学に必要なものはただ一つ。能力のみと言われている。

 王族であろうと、どれだけお金を積もうと、能力がなければ入学することはできない。なぜならば、各国からの援助金によりお金には不自由していないこともあり、特定の王国に対して媚を売る必要がないからである。それは一国や二国が援助を打ち切ったとしても全く問題にならないほどに。

そしてその厳しい実力主義に各国も同意している。

 シルフィードに求められているのは大陸全土の技術向上。

 最高の教育機関にして最高の研究施設。

 それがシルフィードの実態である。


「緊張してきた」


 学園が近づくごとに胃がキリキリと悲鳴を上げはじめてきた。


「ヴァレリア様が落第するならば今年は入学者が出ることはないでしょう」


 いつもならセフィの全幅ぜんぷくの信頼にツッコミを入れるところだが、生憎と今そんな余裕はない。

 そんなボクの隣でリーゼがボソっと不吉な言葉を吐き出した。


「落ちたら一年間ニート」


 ビクッ!

 や、止めてくれ!落ちた時のことなんて想像させないでくれ!


「リーゼロッテ様。ニートとは何でしょう?」

「言うなれば自宅警備員(しろをまもるきし)のようなものです。栄誉職ですが」


 おい!


「そんな……。ヴァレリア様に屋敷をお守りいただくなど恐れ多いことをしていただくわけには……」


 止めて!せめて家を守ってるという自負だけは奪わないで!


「お姉様。そのときは私が一生養ってあげますからね」

「ぐぐっ……だが断る!」


 それ以前にもし落ちるようなことがあれば母さんの母さんによる母さんのためのオシオキが待っていることだろう……。

 いざとなったら学園を消滅させて今回の入学試験をなかったことにしなければ……。


 そうこう言っているうちにボクたちは学園へと到着した。

 入り口は当然のように人で溢れ返っている。

 一体この中からどれだけ落第者が出ることだろう……。


 ボクたちが受けるのは当然魔法学科だ。

 人だかりを何とか擦り抜け、案内板のところで自分たちの試験場を確認する。

 確か試験内容は午前中に筆記試験、午後に能力測定と実技試験があったはずだ。

 ボクたちは案内板の示す通り、筆記の試験会場となっている教室へと向かった。


 ボクたちが到着してから程なくして教室に二人の試験監督員が入ってきて、ついに試験が開始された。

 筆記試験では魔法に関する基礎的な知識から少し応用を利かせた理論まで幅広く出題されていた。

 過去の知識を総動員すれば分からないことはなさそうだ。

 走り出したペンが止まらない!

 そして気が付けば最終問題に入っていた。


Q:あなたは魔法を使って将来何を為したいですか?


 え、何だこれは?こんな問題に点数が付くのか?

 それともアンケート調査のようなものなのか?


 まぁ、当然ボクの答えは決まっているわけで。


A:いちゃらぶ


 これでよし。

 自分の完璧な解答に満点をあげたいくらいだ。

 ふふっ、これで受かったも当然だな。(注:これは魔法学科の試験です)


 全ての試験を解き終わり、何度も見直しを繰り返し行ったが、特にミスらしいミスは見つからなかった。

 と思っていたが、終了間際になってふと最後の解答に疑問を持つ。

 本当にこれでいいのだろうか?

 自分としては完璧な解答をしたつもりけど、他人から見たらこれはどうなんだ?


 マズイ……考えれば考えるほどこの解答じゃダメな気がしてくる。

 だが、今から解答を直して時間は足りるのか?

 いや、ボクはこんなところでつまづくわけにはいかない!

 足りるかどうかじゃない。足りさせるんだ!


 解答を書くために右手を加速させていく。

 獲物が大鎌からえんぴつに変わったとしても使う技術は変わらない。

 手を動かし始める瞬間に力を込め、動かし始めたところで力を抜き、線を曲げる(インパクト)の瞬間再び力を込める。(注:これは魔法学科の試験です)

 それにより、力強く、出来うる限り最速で文字を書きあげていく。

 教室に一際大きく鉛筆の音が響き渡る。

 これで────終わりだ!

 ボクはカッという心地の良い響き立てて最後の一文字を書きあげた。



A:いちゃらぶ(愛を以ってむつまじくたわむれ合うこと)



 そしてちょうど最後の一文字を書き終わったところで試験の終了が告げられた。

 よかった。これでご年配の方が採点をしたとしてもきっと大丈夫だろう。

 それにしても我ながら満点どころか200点くらいもらえそうな惚れ惚れとした解答だな。

 間に合って本当によかった。(注:これは魔法学科の試験です)


 こうして筆記試験は終了して昼食の時間となった。


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