第25話 九才 ツン
「目の前の女を焼き尽くせ!フレイムアロー!」
場所は訓練場。目の前に迫り来る小さな炎がボクのサイズに薙ぎ払われて霧散する。
いや、さすがにそんな炎じゃまともに当たったとしても焼き尽くされるわけもないんだけど……。
しかしそれを見た相手が目を見開いて声を荒げた。
「ひ、卑怯者!当たりなさいよ!」
「え!その……ごめん」
「む、ムカつくぅ!死ね!死んで!死になさいよ!」
相手が怨嗟を撒き散らしながらもフレイムアローを何度も放ってくる。
ボクはサイズで薙ぎ払うことをやめ、仕方なく右へ左へと避け続ける。
すると再び呼びかけられた。
「ちょっと!」
「は、はい!」
お、怒った女の人って本当に怖いです……。
「動かないでよ!」
む、無茶を言うな!さすがに燃え尽きないだろうけど当たったらヤバイって!
こっちはまだLv1だぞ!
「ご、ごめんなさい~~!」
謝りながらもひたすらに避け続けるとすぐに相手の魔法が発動しなくなってしまった。
それはそうだ。相手はどう見たってボクと同じレベル1なんだから。
「う~~~~~~、もう!」
完全に癇癪を起こしてしまったようだ。
顔を真っ赤にして涙目の上目遣いで睨みつけてくる。
こんなときにはあの有名な言葉が相応しいだろう。
どうしてこうなった……。




