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異世界版でデスゲーム  作者: 妄想日記
第一章 幼児編
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第23話 八才 顕現

 ボクの身体は『戦神化』したときと同じように闇に包み込まれ、肥大化していく。

 『戦神化』ならば闇が徐々に実体化していき、黒い翼のファッションアバターを形成していくのだが、その現象は起こらなかった。

 『戦神化』と同じように、闇の中で自らの身体が変貌を遂げたのは感じられた。

 翼は実体化していないが、背中に感じる翼という器官が存在している感覚。

 だが俺の身体は未だに闇に包み込まれたままだ。

 『戦神化』したときに形成された翼を開くのと同じような感覚で背中の何かを広げていくと、視界が一気に晴れてきた。


 なんだこれ……。

 黒い闇……漆黒のオーラが背中から消えることなく絶えず噴出していた。

 それが黒い炎のようにゆらめきをつくり、翼を模している。

 不思議な事に触れても熱さも触感もないのに、自分の思った通りに動かすことができる。

 自分の姿を振り返ってみると、手足が『戦神化』したときのように長く伸び、黒く長い髪になって、相変わらず左眼が見えていない。

 これはよく分からないけどファッションアバターが変質したのか?

 頭に生えた悪魔の大角に触れてみるが、ファッションアバターのように取り外しができる気配がない。

 身体に刻まれた刺青も取り外しができないし、真紅の魔眼も外せない。

 ま、まさかくっついたのか!?

 慌てて眼帯やら髑髏のついた指輪やピアス、そして足首に付けられた足枷を外そうとすると、それらはあっさりと外れていった。

 しかし身体が変化するタイプのファッションアバターが外せる気配が全く感じられない。

 どうやら身体と一体化してしまったらしい……。

 別に気に入っているからいいんだけど、この翼は何でこんなになっているんだろう?


「お姉様。その姿は……?」

「『戦神化』からスキル名が変わったみたいだけど、なぜか見た目も変わったっぽい?」

「……りあねえしゃま?」


 シャルが不思議そうにこちらを見ている。

 そういえば、シャルの前でこの姿になるのは初めてだった。

 いや、それ以前にシャルが産まれた時以来この姿にはなっていない。

 この姿は客観的に見たら、子供が見たら泣き出すくらいには怖いだろう。そうなるように格好良くデザインしたのだから仕方がないといえば仕方がないんだけど、シャルに怖がられるのはかなりショックかも……。


「シャル。こんな姿になっちゃったけどリアお姉ちゃんだよ?ほら、怖くないよ~?」


 そう言ってシャルに何とか笑いかけてみるものの……。


「お姉様、笑顔が不自然すぎて逆にキモ怖いです」


 う、うるさい!これでも精一杯なんだ!


「お得意の性奥義スキルで笑ってみてはどうです?」

「これでも使ってる!」

「ぇぇー…………」


 リーゼが残念なものでも見ているような視線を向けてくる。

 オマエな……スキルレベルが高いからって全部が得意になっていくわけじゃないんだぞ!

 なぜか俺は技巧の方はどんどん上達していったが、色目や無邪気な表情を作って相手を虜にする方はさっぱりだった。

 これでもスキルレベルが上がってマシになった方だ。

 これもコミュ障だった前世の弊害なのか……。

 それなのになぜか、獲物を見つけた肉食獣のような獰猛な顔と、ドSな人の嗜虐心を煽るような怯えながらも快楽を目に滲ませるような表情や、傷ついて失意に暮れることで相手の注意を惹く表情はいつも満点を貰う結果になってしまっている。

 これも母さんの教えがいい所為だろう。

 前者では全力を出せるような強敵を見つけたイメージをして、後者では姫からお叱りをもらうイメージをする。

 これだけでよかった。

 とはいえ、そんな表情をシャルに向けていいはずがない。もしそんな奴がいたら、その場で八つ裂きにしても法的に許されるはずだ。

 しかし、色目を使ったり笑顔で笑い掛けたりなんていうのは、全然うまくいかなかった。

 リーゼが言うように不自然に張り付けたような顔になってしまう。

 母さんは、自分の中のイメージをイメージしようとしているからダメなのだという。

 もしそうであるのならどうしようもないと思うんだ。

 そんな状況前世どころか、現世ですら体験していないんだから……。

 相変わらず王宮内で友達できないしね……。


「……りあ……ねえしゃま…………」


 いけない。落ち込んでる場合じゃなかった、今はシャルに恐怖心を与えないようにするのが先だ。

 ぷるぷると震えてすっかり怖がってしまっているじゃないか。

 ほーら、怖くないよ~。と両手を広げて無害さをアピールしてみると……。


「りあねえしゃま!」


 突然シャルが飛びついてきた。


「ええ!?」


 その顔を見ると恐怖心など全く浮かんでいないことが伺える。

 予想外の反応にこっちが驚かされた。


「俺がリアお姉ちゃんだって信じるの?」


 シャルは満面の笑みで頷くとボクの右目を指差した。


「だってしゃるとおそろい」


 そう言ってシャルが今度は自分の真紅に輝く瞳を指差して笑った。

 シャルの左眼は生贄スキルによって再生された左眼だ。

 なぜか俺の眼がそのまま移植されたかのように紅い輝きを放っている。


「そうだ。お揃いだぞう?」


 俺はそのままシャルを抱き上げるとベッドに座ったまま肩に乗せて、肩車をした。


「わぁ……」


 肩車をされたシャルが嬉しそうに喜びはじめたと思ったら、今度は不思議そうに俺の角を掴んで引っ張ったりしはじめた。


「ヴァレリア。身体の方は大丈夫なの?」


 加護を失いスキルが変質して、姿までちょっとだけ変わった俺を心配して母さんが尋ねてきた。

 加護を失ったと言っても、特に体調が悪くなったり、身体能力の低下などは感じ取れない。

 いや、それどころか、気分がすっきりしている分、体調はいいくらいだ。


「うん、絶好調みたい」

「ヴァレリア様、その翼は……」


 セフィが疑問を口にする。

 この翼に関しては俺もさっぱり分からない。


「なんだろうねこれ?特に違和感はないんだけど……触っても感触とかないし」


 そう言って翼をシャルの目の前にもっていくと、シャルが手を伸ばすが翼を掴むことができないようだ。

 自分で掴もうとしても当然無理である。


「さわれない……」

「もしかして何かのスキルでは?」

「そうなのかな?」


 リーゼの言う通り何かのスキルなのだろうか。

 俺は再び手に持ったままのステータスカードに目を落した。



名前 ヴァレリア・ヴォルドシュミット

種族 ダークエルフ

性別 女

職業 戦神Lv315

 筋力 33(+15)

 体力 6(+1)

 器用 11

 敏捷 14(+4)

 魔力 13

 精神 12

 魅力 5

スキル

 覇王剣Lv312

 大鎌Lv24

 轟脚Lv301

 スキルリッパーLv318

 受け流しLv26

 戦舞いくさまいLv314

 ブリングLv23

 ダッシュLv343

 回復魔法Lv4

 心眼Lv120

 罠察知Lv20

 神隠れLv120

 追跡Lv24

 元素魔法Lv1

 回復魔法Lv1

 補助魔法Lv1

 生贄Lv1

 性奥義Lv37

 Exチェンジウェポン

 Ex死を司る女神の慟哭

 Ex始祖巨人の残滓

 Exヘルブレス

 Ex殺刃(さつじん)

 Ex人我顕現じんがけんげん

 Cs戦神の加護



 どうやらスキルではないらしい……。ないらしいが。

 ベルセルクだった職業が戦神になってるし……。しかも称号項目が消えた?

 職業のところにタッチするものの、称号を追加することができない。

 クラススキルの戦神の加護ってあるし、加護っていうのは、精神操作系の呪いだったりステータス補正だったりするあれだったはずだ。

 戦神の加護がクラススキルにあるってことは戦神の加護を得て、戦神になったってことか?

 いや、ちょっとまて。そもそも俺は棄教によって加護を失っているはずだ。それに加護っていうものは、与えられているのが当たり前で、ステータスカードには表示されないはず。

 ということは、もしかしてこれは戦神の加護を得たんじゃなくて、戦神の加護を与える力を得たってことか?

 つまり忍は神様になって神の加護を与えることができるようになったと?

 称号も与えられる側から与える側になったからなくなったと?

 いや、まてまて。

 いくらなんでも発想が飛躍しすぎだ。

 漫画の主人公じゃあるまいし、僕は新世界に神になる……なんてドヤ顔で言えるわけがないじゃないか!そもそも忍はゲームのキャラだし!


「お姉様、これ神になってますよ?」


 リーゼがステータスカードを覗きこみながら言う。


「気の所為だろう」


 俺は明後日の方向を向いて答えた。


「リーゼロッテ様。ヴァレリア様は産まれた頃から神であらせられました」


 昔を懐かしむかのような表情をするセフィ。

 こいつらはしれっと過去を捏造しようとするから恐ろしい……。


「まるで見てきたかのように捏造するな!セフィに初めて会ったのは一才の頃だぞ!そして俺は産まれた頃からダークエルフだ!」

「まぁまぁお姉様、せっかく神様になったんですからけちけちせずに一つ願いを叶えてください」

「いや、そういう神様じゃないから!……ちなみに聞くが、何を願うつもりだったんだ?」

「願いを五つに増やし……」

「却下却下却下――!!!」


 なんて強欲な奴なんだ。小学生ですら思いつく悪魔の無限ループ。どんだけ神様を扱き使う気なんだよ……。


「冗談はともかく、もしかして自分でヴァレリアの方に加護を与えられるんじゃないですかこれ?」

「マジで?」

「だって、ヴァレリアはもはや加護のないただのダークエルフの王女ですよ?」

「そ、そうか。そう言われるとそうかも……」

「それにもし加護を与えることができたら、本当に神様になったっていう証明にもなりますし」


 なるほど、神様だから加護が与えられるんじゃなくて、加護が与えられるから神様か。確かにそういう考え方もできなくはない……か?


「ではさっそく……こほん」


 咳を挟んで喉の調子を整えてスキルを発動した。


「『戦神の加護をヴァレリア・ヴォルドシュミットに与える!』」

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