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53話 移動

ゆるりと再開(^^)/

~前回までの無人島パラドックス~



 田中一郎だ。 問題が発生した。


 家族に行きだけの航空券を貰った俺は無事に無人島に漂着した。

まともな食料は底をつき、飲み水すら無い状況。 数日が経っても一向に救助の来る気配は無かった。

 

 くそぉ、これは奴らの呪いか? 


 しかしここが試練の島だと気づいた俺。

圧倒的カリスマ性を誇るおっさんにフライング土下座で弟子入りを果たす。

 目指すはおっさんのような肉欲ハーレム。

俺もあんなギャルとイチャイチャしたい!!


 しかし現実は残酷だ。

元々ニートでぽっちゃりな俺。

当然サバイバル能力も人並みの体力も、根性すらもない。


 だがしかし、俺は諦めない。


 たとえ巨大な蜘蛛を食べさせられたり、謎の生物に謎の臭い液体をぶっかけられようとも、大蛇に絞殺されそうになろうともだ。 


 試練を乗り越えた先には――ご褒美が待っているのだからッ!



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 

 うちのミツバチちゃんが可愛すぎる件について。


「はーい、イチロウさん。 ここ? ここ、気持ちイイ??」


「ふぁぁ……!」


 俺のコリコリの部分がマリちゃんの細い指でニギニギされている。

 恐ろしい。

圧倒的テクニック。 俺は自然と声が漏れた。


「だいぶ溜まってるね。 マリが癒してあげる」


「ほあああああっ」


 過酷な無人島生活で溜まった疲れが癒されていく。

マリちゃんの匂い、それにマッサージするたびに聞こえる僅かな声。


「んっ、ふぅっ、はっ」


「…………」


 イカン、イカン! これはただのマッサージ。

今はうつ伏せで背中をマッサージしてもらっている。

サゴのハチミツ塗りが好感触だったから、お肉もあげてみたら最高のご褒美にありついたのだ。

 はっはっは。 また自分で獲った肉だと見栄をはっちまったけどな……。

最低だと分かっている、だけど気づいたらついてしまったよ。


「気持ち、イイ?」


「いいれふぅ……」


 マッサージは終わったが起き上がれない。


「どうしたのぉ? イチロウさん??」


「……」


 どうしたもなにも、俺の息子が元気になり過ぎてベットを貫通しそうになってるよ!

天使のようなマリちゃんに、こんな姿見せられないぜ……。


 しかし最高だ。 もちろんベットに擦りつけるナニから伝わる快感の話ではない。

これが試練のご褒美。


(だけど、もう食料はほとんど無いなぁ……)


 おっさんから貰ったハチミツはもう無い。

サゴや肉も分けてもらった分は消費してしまった。


「……やるしかないぜ」


 もう一度あの森へ。

おっさんに頼み込むしかないな。


 ベットから起き上がれない俺は、寝たふりを決め込む。

明日の朝、移動を希望する人達と共にまた水辺に戻る。

 今度は迷わずに帰れるといいのだが。



◇◆◇



「こんなに……移動するのか?」


 その人だかりに、俺は思わず呟いた。


「相当キツイみたいだな、浜辺の生活は。 それに、かなり連中は弱ってるから、ゆっくり行こう」


 移動組は二十名ほど。

思っていたよりも多い。

 もちろん、マリちゃんも移動組だ。


「じゃあな。 おっさんにもよろしくな」


 ヤンキーは残るようだ。

サーファーみたいな奴だし、やっぱり海が好きなんだろうか?


「本当に行かないのか?」


「ああ。 海に行った奴らが帰って来るかもしれねぇ。 そしたら、馬鹿野郎って言ってやらねぇとな」


「そうか……」


 良い奴かよっ。 と思っていると、ヤンキーが近づいて来た。

なんでしょうか? お金は持ってないっす。 食料もないですううう。


「……お前、マリには気を付けろよ? あいつは危険だぞ」


「?」


 何が危険なのか?

ひょっとして、あの襲撃してきたストーカーみたいなやつのことを注意してくれているのかな?


「まぁ、俺がとやかく言えることでもねぇか。 ……忘れてくれ」


「はぁ……?」


 RPGのNPCのような意味深なセリフを残して去っていくヤンキー。

それと同時に、出発の時間になったようだ。


「よし、じゃあ行こう。 暗くなる前にはつかないと危険だからな」


 浜辺からついてくる人達はみんな緊張しているようだ。

あまり森の奥には行かなかったんだろうか?

 俺たち水辺組は先頭に立ち、みんなを先導する。

今回は迷う訳には行かない。 相談しながら慎重に道を見極めていく。


「!」


 蛇だ、大蛇だ!

前回と同じ場所。 この岩肌が見え始める場所に大蛇がいた。

 大きさは同じぐらい。 そして俺の体は締め上げられた恐怖を思い出し震え始めた。


「おっ! また蛇だな」


「この辺に巣穴でもあるのか?」


 大蛇を食料としかみない水辺組と違い、初めて見る生きた大蛇に移動組から悲鳴が上がる。

俺はその中からマリちゃんの姿を見つける。 不安そうな彼女は俺を見つめていた。

 その不安な瞳の中には、期待の眼差しが含まれているような、そんな気が確かにしたんだ。


「っ!」


 男は単純。

可愛い女の子を見るだけで――ヤル気は漲る。


「おらぁっ! 捕まえるぞぉおお!!」


「うぉっ!?」


「馬鹿っ。 大声だしたら逃げるだろっ!?」


 震えを跳ね飛ばすように。

俺は咆哮を上げて、大蛇に立ち向かう。


「うおおおおおおおお!!」


 岩陰に隠れようとする大蛇。 前回と同じだ。

こいつらは基本、臆病なんだ。 

だけど。


「――ッ!」


 首元を押さえつけようとした俺に、大蛇は襲い掛かる。

どんなに臆病でも危険を感じれば抵抗してくるはずだ。

無様に転がり逃げれば前と同じく絡まれ絞めおとされる。

 そんな醜態、見せる訳にはいかないぜ!


「っああああ!!」


 この大蛇。

よく見れば動きは遅い。 胴体が太いからだろうか?

 小さな蛇の鞭のような俊敏さは無い。 大きい分圧力は凄いが。

サイドに回り込み上から押さえつける。


「おおおお!」


「よくやった!」


 柔らかい。

押さえつけた蛇はゴムのように弾力があり、なんだか変な感じ。

 蛇皮はツルツルひんやり。

記念に財布にしたいなぁ。


「オラッ!!」


「っ……」


 マリちゃんとペアで、なんて考えていると近づいた男が蛇の頭を石で叩き潰した。


「フン……」


 あのストーカー男だ。

日焼けした体格のいい男。 こいつも移動組だったのか。

男は大蛇を叩き潰した時の目のまま、睨みつけて去っていく。

頭を潰されても動き続ける大蛇が気持ち悪い。


「ふぅ……」


 前途は多難。

早くおっさんに護身術を習おう。



◇◆◇



「マジデ……!?」

 

 おっさん追放。

ついでにイケメンも追放らしい。

 無事夕暮れまでに水場の拠点へと戻ってきた俺は、その言葉に呆然とした。

きっと素晴らしく変顔であったろう。


「どうしよう……」


 おっさんたちの寝床はもぬけの殻だ。

丁寧な作りのベットと覗き防止の木製の壁。

 ヤシの葉で編んだ帽子が一つ、木製の椅子の上に置かれていた。


「まずいぉ……」


「ここイチロウさんの場所? 凄くいいねっ!」


 おっさんの帽子を指でクルクル回しながら、途方に暮れていると。

マリちゃんたちがやって来た。

 ギャルが三人もである。


「ちょうどベットも四つあるし! ……私たちもここに一緒でもいいかな? 慣れない場所だから、マリ不安なのぉ……」


「疲れた……。 ベットイーン〜〜」


「リサちゃんもいないのかぁ……」


 小悪魔ギャルのマリちゃんに、背の高いスレンダーなギャルとほんわかギャルが追加された。 


「……当たり前じゃないですか!」 


 俺はやるぜ。

例えおっさんがいなくとも、やってみせるぜ!








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