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82 アイスランドより

 帰り道のこと。何もかもテキパキとこなし、私の思考の外側なことをしてくる先輩のことがやっぱり私は怖かった。

 だからここも正直に、先輩のことが若干怖いと伝えた。


「あるある。わかる~。その業界に先にいる人って、手際が良くてちょい怖く見えるよね……。私もあそこの魔剣師さんたちの研究姿勢に慄くもん」


 怖いなんて言って、気を悪くさせるかもしれないと悩んだけど、先輩はその程度ではなびかない。


「──でもね、ちなみに私は好きでもない子に経験を踏ませてやろうとは思わないよ。あの定期試験で見せた君の瞳なら、きっと何もかもを無駄にしない、そう思ったんだ。隠してたのは、めんごだけど」


「──……っ」


 この人は私に期待してくれている?


 その日初めて出会った先輩に、何だか抱きついて泣きたくなった。


 先輩たちには、最近訓練でボコボコにされてばかりだったから……。


「そう言った気持ちを吐露できるのがあなたの強みだね」


 そう微笑んで移動魔剣パラレルを取り出した先輩の微笑みは、やっぱり温かかった。


 すると先輩は思い出したように言った。


「あ、そう言えば例の彼……折紙カナンの弟くんだっけ? 青春&イチャイチャするために具体的なプランは立ってるの?」


「ええーと。とりあえずは夜の自習時間に勉強見てあげようかなとか、パンとコーヒーの差し入れとかしてなんでアレンのこと知ってるんですか先輩????」


「え、ラタの決闘カップルってチャットじゃ割と有名だよ? 校舎の掲示板に罰当番名簿貼り出されてるのが拡散されて」


「それ誰が拡散したんですか」


「え? そんなことするのライザしかいないよ〜」


「ちょっと待っててくださいね。絞め殺して東京湾に沈めてきますから」


「私、自分よりあなたの方が怖いんだけど……」


 私と零戦マリサの間には、恐らく想像できないほどの「経験」という溝がある。

 それでも、剣聖パラディンになることを志した以上は負けたくない。


 私は基本ネガティブだけど、根性と耐久力だけはある。あとは視野だ。


 やれることはなんでもやろう。バイトも、勉強も、訓練も、そして恋だって──。


 そう決意して、移動魔剣(パラレル)をくぐった私は、極短期時差ボケによりぶっ倒れることとなる。


「あはは。なんでか帰りだけはこうなるんだよね」

「オロロロロロロロロ」


         ***


 保健室と言えば私、私といえば保健室。


 もはやaka保健室と言っても過言。


「最近はぶっ倒れなかったんだけどなぁ」


 先輩はそのうち慣れると言っていたけど、バイトをする以上は早く慣れないと。


 そうして起き上がろうとした時、私はふと異国の香りを隣に感じた。


 ……ん? なんだこれ……。


 そう気がついた瞬間に、誰もいなかったはずの空間に、ひとりの女の人を見つける。


 その人は目をぱちくりさせ、私のことをじっと見つめていた。え? どこから出てきた……?


「君、もしかして私のことが見えるの?」

「えっ、幽霊ですか……?」


 ぶっと吹き出す女の人。え、変なこと言ったかな……。


「魔を司る魔剣師でも幽霊は怖いんだね」

「ヒトコワ系は苦手ですけど……あの、お姉さんは一体──」


 お姉さんはかしかしと頭を搔くと参ったなといった。


秘匿魔剣ステルスを看破するなんて、珍しい。猫とかにはバレるけど、ヒトにバレるとは」

「はぁ……」


 あれ? このノリと声──。どこか覚えがある。それも最近のことだ。


一式(狂化)は使いこなせるようになったかい? にゃんこちゃん」

「え、教授!?」


 一式という単語と何となく覚えがある雰囲気の点と点がつながった。


 その人は、何故か見た目が全く別人だけど、リオン先輩が私に紹介してくれた、不刃流アンワイズ研究者の先生だ。


分身魔剣(シェイプシフター)。知ってるかな? 一年生じゃ習わないか。ともかく、君が教授と思ってたのは私の分身ってわけ」

「は、はあ」

「私は降神オリガ。秋学期から魔剣実習を担当する先生さ」


 先生は先生なんだ。


「どうして分身でいたんですか? あと、なぜ私に不刃流アンワイズを……。それとオリガミって──」


「ふふ。質問が多い学生はいいね。まあ、追々分かるよ」


「あの、じゃあひとつだけ、今すぐに」


「んー?」


「なぜ、寿命を削る一式を私に教えたんですか?」


 そう訊くと降神オリガはニッと笑った。


「君が本物なのかを試すためさ」


 その時、バリバリっと音を立てて空間に亀裂が入る。それは、断層を開いた時にも似ているけれど、もっと巨大な力だ。


「あははは。もう来たのか。さすが名家のご令嬢は筋がいい──」


 ──BACHIBACHIT!!!!!


「降神オリガァアアアアア!!!」


 その空間の裂け目から現れたのは──東雲スズカだった。


「スズカ!?」


「だけどがら空きだ」


 降神オリガは自らの左手にツーっと爪を走らせ、血を滴らせる。ボタボタっと血が落ち、それは自然に魔法円を組む。


「Summon──EXcalibur」


 それは、見ただけでわかる。きっと、触れれば最期。魅せられ、死ぬ。


 聖剣とすら呼ばれる、魔剣の中の魔剣、魔剣の王たる魔剣。


 王庭十二剣を統べる、魔剣の皇帝。


 エクスカリバーだ。


 てかめちゃくちゃ使ってるじゃんエクスカリバー!!


 でもなんでそんなものが、それとなんでスズカが???


 ああ、もう今日一日めちゃくちゃでわけわかんない……。


 でも、なんか、戦ってるの、いいな。


 私も、エクスカリバーと戦ってみたいな。


 それで、私はたまたまBlack Miseryを持っているわけでして……。


 私が抜刀をしてふたりの剣が交わるところに当てると、ふたりともが驚愕の目を向けてくる。


「あははは! ──なんてやつだ」


 そうして私たちの殺し合いが始まる。

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― 新着の感想 ―
[一言] ついにシオンちゃん、ゲロインの仲間入りか(ォィ でもってもう何が何やら(;'∀')
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