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77 君とテレビ電話

「そっちのご飯ってあんまり美味しくないって本当?」

『美味しいわよ。味付けがなんというか……まあ、ともかく美味しいわ。ユウリは文句垂れてるけど』

『オレは美食家なんでな……』


 パジャマ姿でベッドに寝っ転がってイギリスにいるスズカとテレビ電話をする。ちなみにテレビ電話と言ったら「言い方古っ」と笑われた。泣きそう。


 時差はこちらが8時間進んでいるので──サマータイムなことをギリギリで思い出した──あっちはまだお昼だ。


「というかなんでスズカの部屋に姫野がいるの? 寂しいの?」

『ちげーよ。寮で同室なんだ』

「!?!?!? このスケべ!!!」

『安心して。このチキン男に何か出来るわけないでしょ』

「それもそうか」

『おい!!!!!』


 これが普通の健全な男女なら何も起きないはずもなく……だが、姫野はチキンだしスズカのガードはカチカチだから安心安全。


 まあでもふたりの元気な顔が見られて良かった。スズカが「ちょっとホームシック」とだけメッセージくれた時はかわいすぎてゲロ吐くかと思った。


「それで、例のエクスカリバーの人とは会えたの?」

『残念ながらすれ違ったみたい。アイスランドで仕事してたみたいなんだけど、その後イギリスに戻って、今は日本に向かってるって』

「そっかー。え、じゃあ日本にエクスカリバー来てるの?」

『そうらしいぜ。しかも面白いのがさ、その人がエクスカリバー使ったとこ誰も見た事ないんだってよ』


 魔剣師の実力者が最高峰の魔剣を使わない……?


 そんなことあるのか?


 そこで私は少しだけ違和感に見舞われた。


 魔剣を使わない魔剣師なんて、それって不刃流アンワイズじゃないのか──?


『しかもその人がやるはずだった仕事の穴埋めでホストファミリーが忙しくなっちゃって──こっちは来訪者リークが割と野放しだから──孤独狼ウルフ型の討伐で割と放置されているわ』

「えっ、せっかく留学したのに」

『でもいい物見られてる。日本なら特異点ゲートの近くじゃないと見られないような対魔戦を間近で見学できるんですもの』

『やっぱ抜刀術の限界っつーか、エリート街道登るには良い技術だけど、実戦に弱いなっての感じるわ』

「なるほど……」

『あと、マジでモノホンとヤんの怖い。目の前にしてみるとさ、ああ、これは人間とちげーわっての感じる』

『ユウリは後衛だから銃後で銃握って参加してんのよ』

『んで、それにスズカちゃんが拗ねてるってワケ。かわいくね?』

「かわいい。推せる。写真送って」


 もうっ! とユウリを殴るスズカ。


『その関係で帰国がちょっと早まりそう』

「そっか、少し残念だね」

『いいえ。締め切りが決まっているから、やるべきことが明瞭になった。帰ったらまた手合わせしてよ。アタシ、ちゃんと強くなってるから』


 そんなこと言われたらぶちのめしたくなるじゃん!


「おうともよ! へへっ。楽しみだな──」


 はっ。


 帰国が早まるということは、……間に合うのでは?


「ね、二人は浴衣持ってる? お祭り着てくやつ」

『ユウリ、持ってきてたっけ』

『──ん? あー、浴衣なぁ。あったと思うぞ。お前なら成長してないからまだ余裕で着られ──』


 向こうで打撃音が響き渡る。


『あるわよ。それがどうしたの?』

「魔刃学園でね、夏の終わりに夏祭りがあるんだって!」

『祭り?』

『祭り行きてー!』


 姫野が思ったよりテンション高めだった。


『ごめんなさいね、うるさくて。アタシたちお祭りって行ったことないから』

「え!?!?」

『家が厳しかったからなー』

「そ、そういえば私もお父さんと一度しか行ったことないかも」

『アンタのとこも厳しかったの?』

「や、クラスメイトが私以外の友達全員でお祭りに来てたの見て、やになっちゃって……」

『……』

『……』


 あっ、気まずっ!


「やや、でも今年は友達いるし! ね、だからもし良かったら一緒に行かない?」

『おう! 行こうぜ! オレ達友だ──』


 その姫野の言葉をスズカが手で止めて、カメラにグイッと可愛い顔面を近づけた。


『アタシらより先に誘う相手が居るんじゃないの?』


 どきりとした。確かに、私はちょっと逃げてた。


「……はい、そうれす」

『アタシたちは逃げたりしないから。先にプラプラしてるあっちを、ちゃんと捕まえときなさいよ』

「あっちょっ、姫野に聞かれる!」

『お前……バレてないと思ってんのか……』

「ぅえっ?」

『多分お前の気持ち気づいてないのあのバカだけだぜ』

「!?!?!?」


 何その情報恥ずか死ぬ!!!!!


『まっ、せーぜー頑張れや! これ、オレの内側にズケズケ入ってきた仕返しな!』

「ねぇスズカ! アホがいじめる!」

『ごめんね。でもアタシもこのアホと同意見よ。アタシの心にズケズケ入ってきたおかえしっ』


 じゃーね、と通話が切れて、そこにはピンチな私の顔が映されていた。


「……腹、決めなきゃね」


 自分の太ももに剣を刺すのは迷いなかったのに、こんなことで迷う理由がない!


 ちょっくらがんばるか。


 私はスキンケアをして、明日に備えた。

「ちょっと面白そう」と思っていただけましたら……!


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[一言] やべぇなぁ、波乱の夏休みになりそう二重の意味で(;'∀')
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