閑話休題02
■SIDE:姫野ユウリ
「なぁ藤堂」
「ん〜?」
ポッキン折れるアイスをかじかじしながら藤堂は生返事をする。
「ぶっちゃけ、クラスの女なら誰が一番顔が良いと思う?」
「わたしかなぁ」
オレはポッキン折れるアイスをパキッと割った半分を藤堂にもらい、かしかしとかじり始める。
「だよな。藤堂ってクソ美人だもんな」
本人が美人と言ってもなんの違和感も嫌悪感もない感じ。こいつはホンモノって感じがする。
「なら、男子にモテてるのは?」
「ナズナかなぁ」
二人とも校舎の屋上から柵に身を預けてぼうっとフィールドを眺める。剣戟の音だけが激しく伝わる。雲が速く流れる。
「そうなんだよ。わかる」
「それで、隠れ美人なのがシオン」
「わかる。お前オレかよ」
ぼうっとするふたり。
我ながら何の話してんだろという感じではあるが、屋上でアイスかじってるコイツを見つけて話しかけちゃった。
「それで、君が好きなのはスズカ」
「はは。お前はオレかよ……」
柵にだらっと上体を預けて項垂れるオレ。バレてるかなー、やっぱ。
「スズカはそういうの気にしないし、バレてないんじゃないかな。多分あの子すっごく純粋だから」
「あいつが純粋? そーかなー……」
こいつの方がよく知っていそうに振る舞うなぁ。
女子同士にしかわかんねぇなんかがあんのかな。
「君はよく道化を演じて恋多く自分を見せるけれど、それはなんでなの?」
「わかんね。気を引きてーのかもよ」
「意外。素直なんだね」
「あの『藤堂』相手に隠しても意味ねーし」
「ああ。姫野のルーツって屯田兵だもんね」
「ご存知で」
フィールドの出来事がどこか遠く見える。だが、本当はあそこに立っていなければならないのはオレだった。
「オレは好きな女ひとり守ってやれねぇ」
「仕方がない──とは言わない。でも、君にもきっとできることがあるよ」
「俺にできること、か」
「お姫様の目を覚ますのは王子様に任せよう」
「浅倉が王子様なら、オレはせいぜい七人の小人ってとこだな」
「知らないの? ひとりぼっちのお姫様の心を解したのは小人だよ」
ふっと笑うと、平生と変わらぬ顔でニヤッと笑ってみせる藤堂イオリ。
言ってら。
「あの子は今変わろうともがいているんだよ。それでも変化が怖くて、抗って抗って抗って──。気がついたらこうなってた」
「イヤイヤ期の赤ちゃんみたいだな」
藤堂はんーと言って、続ける。
「似てるけど、少し違う」
「?」
「それはね、思春期って言うんだ」
あはははっ。
十三獣王に身体を乗っ取られたのが思春期か。
確かに、それはなんともスズカっぽいわ。
「なんか、ちと気が楽になったわ」
「そ。なら良かった。アイス代、五円」
「取るのかよ……」
フィールドではまだ王子様が反抗期のお姫様をぶっ飛ばすために戦っている。
それが終わった時に、側にいてやれるよう、オレも準備をしておこう。
なんてったって、オレはあいつの侍従なんだ。
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