Chat.07 Open chat
【Open Chat Room 12】
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浅倉ってあんなに攻撃的だっけ
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あの子の試合っていつも受けでカウンターでドカンか隠し球でドカンなイメージあるから、あんままともに戦ってるとこ見た事ねーな
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耐久が得意とかって聞いたわ
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それがまたなんであんな火力勝負を
藤原って反射持ちだろ?
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それもかなり高い練度の反射ね
入試、不倒門に触れただけでぶっ壊したって噂あるよ
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リヴァイアサンらしくて好き
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みんなどっち推してます?
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あんま強い奴は応援したくねーなー
だから浅倉……と思ったけど、あれは流石に考え無しも良いとこじゃね?
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大火力はあの反射量で分かるな。吹き飛んでるのが上空だからいいが、方向が横ならとっくに終わってる
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めっちゃ打ち上がってんな。あれを耐えてる手首とかすげーわ
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あれ?
そういえば理解屋いなくね?
珍し
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そらルーム12になんておらんやろ
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や
理解屋は基本的に複窓だからどこにでもいる
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怖いでやんす
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それにこんな大事な一局、見逃すわけないんだけどなぁ
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急用かトイレでしょ
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あね
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試合始まって一時間半か
これが持久戦なのか読み合いなのかもわかんないな
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でもよく考えたら、今まであの火力の反射食らって場外に吹き飛んでない時点で、それは策なのでは?
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まあ、そうか
でも火力対反射ってミスマッチ過ぎるよな
重力の任意操作ならとは思ったけど、それを使う様子もないし
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え、あれ魔剣だけに付与されるタイプでしょ?
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あ、そーなの?
だとしたらやっぱ、火力しか武器はねーのかぁ
***
八神ライザはそのルームの会話を単純思考だなと切り捨ててスマホを閉じた。
「ねー、先生はどう思う?」
屋上からふたりでフィールドを見下ろす。眼帯教官は紫煙を吐いて呟く。
「終わりのない衝動が鍵になる。だがそれを引き出すのが誰か、或いは何なのかは分からない」
「先生はあれがどんな能力か見当ついてるってかんじ?」
「ああ、当たりはついている。浅倉がそれを自認しない限りは空論に過ぎないがな」
ライザは「衝動」が浅倉シオン本体由来の能力であり、重力操作「Gravity」とは別のものであるという仮説は既に立てていた。
だが、浅倉シオンが不刃流とGravityを使うにあたって、「衝動」がそれらにどのような影響をもたらしているのかは皆目見当がついていなかった。
「教えてよ」
「お前にはたぶん、一生かかっても分からないものだよ、それは」
「なにそれ。なんかヤダな」
「お前は何でも完璧を求めすぎる」
「その何がいけないんすかー」
煙草くさいっとライザが文句を言うと眼帯教官はそれを携帯灰皿にしまった。
「あ、わたしがそれを引き出す係になりたい」
「お前じゃ無理だな」
「なんでさー!! 剣聖に最も近い女だよ?」
「……相性の問題だな」
「相性?」
自分より先の思考を持つ眼帯の男を八神ライザは嫌っていた。それでも、婉曲な言い回しで先生らしく導くところは好きだった。
まるで自分が子どものように扱われているみたいで、新鮮なのだ。
「繰り返すが、お前は何でも完璧を目指すだろ。ひとつの曇りもない無菌室で作られたダイヤモンドみたいな」
「変なたとえだねー」
「その点浅倉は違う。あれは弱さを認めることが出来る強さを持っている」
弱さを受け入れるという強さがお前の中にはないんだよ。ライザは暗にそう言われたように思って、それは言われたのかもしれないし言われてないのかもしれなかった。
ライザは校舎の手すりにもたれて、速く流れていく雲を目で追った。
「わたしは弱いって言いたいの?」
眼帯教官は変わらず真顔だ。でも少しだけ慈しむような目をライザに向けた。
「ああ。お前は剣聖にはなれないよ」
言ってくれるじゃないか。八神ライザのエンジンは常に水素爆発を起こしているが、この時ばかりは燃料が多すぎたのだと思う。
「じゃ、わたしが剣聖になったら叙々苑奢ってね」
「剣聖の方が給料良いだろうが」
ふたり笑って校舎の屋上。ひとりはフィールドを見て、もうひとりは空を見上げた。
黒髪のショートヘアが、なびく。
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