表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/372

47 VS妻鹿モリコ①

 ──Bブロック一組、第二回戦。


 その日の授業を終えた他学年の学生も第二校舎(オクタン)に集まり、観客も増えた。控室からも外の熱狂がわかる。


 コンコン。


 なんとなく想像できたけど、ドアの向こうにいたのは対戦相手の妻鹿モリコだった。お願いなので早く水道直して……。


「あなたが浅倉シオンですね?」

「そっちは妻鹿さん?」


 こくりと頷く彼女。ばっと顔を上げた妻鹿モリコは私をじっと見つめた。


「クヒ、美味しそっ♪」


 ゾワッ……。


 総毛立った。シイタケな目がギラついていて、ぺろっと舌なめずりしながら全身を見られた。なんなんだこの人……。


「じゃ、またあとでね」


 何しに来たんだと思わず言いたくなるほどの滞在時間で彼女はその場から消える。楽屋挨拶かよ。


「……さて、行きますか」


 調子を崩されたけど、まあいい。私はいつも通りにいこう……。


         ***


 ナズナにああ言われて元気は出たものの、具体的にどうすればいいかはまだ思いついていなかった。大火力を出せる魔剣──。きっとそれ自体が脅威だというわけではない。


 それを「どうやって悟らせず」にフィールドに持ち込んだのか。


 からくりが分からない以上、防ぎようのない火力より、そちらの方が脅威だった。


 ……だけど事前情報である程度は理解出来ている。単純魔力と式だけが乗せられた「使い切り魔剣」を多重に魔剣調律(チューニング)して特大の技にする。


 初戦の場合は増幅魔剣(アンプリファー)爆破魔剣(ボンバー)の合成。どうやったのかは見当もつかないが理屈は理解できる。

 ナズナの利己的な遺伝子エゴイスティックキメラに少し似ている所もある。つまりは技の掛け算だ。


 だけど、「何」が「どれだけ」重ねられているのかがわからない以上、やはり状況を打破しているとは言いづらいところがある。


 ナズナの技と違うのは、その発動にどうしても巨大な魔剣が要るということ。それだけは物理的に逃れられないはずだ。


 だけど、さっき何にも持ってなかったよね……?


 謎は深まるばかりだった。仕方ない。ぶっつけで行こう。頭で戦うのは分が悪いかもしれない。それでも、よく考えたら魔剣師はいつだってぶっつけ本番じゃないか。


 ──信じることを、忘れないように。


         ***


 さっきのシイタケ目な黒髪ロングの女子生徒は、相変わらずつなぎを着て、手には何も持っていなかった。


 フィールドにも持ってきてない……?


 噂に聞いていたでかい魔剣どころか、他の改造魔剣もない。それでも彼女は胸を張って仁王立ちしている。それだけが考えうる弱点だったのに──。


 いや、もしこれが既に術中なのだとしたら……。


「侮れないなぁ」


 動揺しても仕方がない。やろうッ!


 サイレンが鳴る。


「身長154cm、体重54.2kg。プラマイコンマ4。胸はシンデレ──」

「なんで知ってんだ!!!!!」


 先制攻撃にGravityを仕掛けようとした私はそう叫んだ妻鹿モリコに出鼻をくじかれた。全校生徒の前でてめぇ!


「その顔、とってもかわちいね」

「……うるせい」

「クヒヒ、鉄床かなとこ先輩が直々にオートクチュールだなんて、何事かと思ったんですよ♪ でも、なんとなくわかる」


 鉄床かなとこ……。あ、鉄床かなとこコタツ先輩か。キュクロプス十四年生の……。


「そ、それが今関係あるの?」

「ううん、関係ないわ!」


 関係ないんだ……。


「でもやっぱりあるかもだわ!」

「なんなの!?」


 突っ込んじゃったよ。


 なんなんだこの子……。盤外戦術なんてそう簡単に乗ってやるものかと思ってたけど私、意外と短絡的だからなぁ……。


 ただ、そういうやり方に負ける程自分が育っていないとも思わない。ナズナはああ言ってくれたが、本当は自分で気が付かなきゃダメだった。


 私は、私を褒めてあげないと。入学以来頑張ってきた。それは、事実なんだ。あっちこっち寄り道したり、馬鹿なこともした。でも、もう私は不倒門の前で無力さに泣く子どもじゃない。


 龍王に町を壊されて泣くだけしかできない、あの子じゃない。


 自分で言うのはほんとに恥ずかしいけど、それくらいの傲慢さはきっとあって然るべきだ。そうでないと、魔剣師なんてやってらんない。


「私は強い」


 そう自分に伝えて、私はBlack Miseryを構え──詠唱する。


前方向フォワード──Gravity 1 to 1000……」

「──機械仕掛けの神様デウス・エクス・マキナ


 え?


 ──KACHIT。


 ニヤッと笑った妻鹿モリコ。歯車のような音がした瞬間に、フィールドにザッと幾何学模様が広がる。


「なにこれ!?」

「ようこそ、私の舞台へ! クヒ」

「ちょっと面白そう」と思っていただけましたら……!


──下にある☆☆☆☆☆からご評価頂けますと嬉しいです(*^-^*)


ご意見・ご感想も大歓迎です! → 原動力になります!


毎日投稿もしていますので、ブックマークでの応援がとても励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブクマ・ポイント評価お願いします!

同作者の作品

黎明旅団 ─踏破不可能ダンジョン備忘録─

小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
[気になる点] >シイタケな目がギラついていて 食蜂さんみたいな(;'∀') [一言] そして……いきなりヤバい(;゜Д゜)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ