297 黎明|顕現
「そうか──、あいつは前のループに居なかった、唯一の人間だ」
呟いて、ふっと笑い、ぴょんと宙へ跳ねるラウラ。
『全員、地面から離れてくれ。地上に居たら、殺してしまうかもしれない!』
その言葉は、時空断層を伝って、外からも聞こえる。
カウント、3、2、1──。
「ブランクタイム10000%」
SHINIIIIIIIIIIIIING──!!!!!!!!!!!!!!!!!!
空前の光が一体を包んだ。薄桃色のベールが地面へと引き戻され、浜辺の砂が波に引き寄せられるように、ある一点へと集う。
つま先から足の先までを超高濃度のノルニルに包まれたロアは、一帯に存在する総てのマギを吸収した。地面に接地していた者からも当然。フロイトは反応を起こすためのエネルギーを喪失し、不発。臨界ゼレーナの使役した蛇も停止──。黎明旅団員は、全員、跳んだ為、逃れる。全員が全員を信じたが故の、ロアを信じたが故の、成功。
魔剣──エクスカリバーはロアの方を向いてふと動きを止めた。そして、カランという音を立てて、落ちる。それは何を意味するのか。エクスカリバーが、それを斬れないと判断したのだ。斬れないなら、オリガの命令も止まる。
空気はぴたりと止まり、振動をやめた。誰もがその白い人を見つめた。そこに居るのは果たしてロアなのだろうか。哀しくも、シリウスの疑念は当たっていた。
純白に薄桃色の差し色が入ったシーカーコートに包まれたロアは、地面に落ちている魔剣を拾い上げた。セナだけが気づいた。逃げなければ、と。
「あれはロアくんか?」
「そのはずだけど……様子が──」
旅団員はまだ気づかない。セナだけがそれはもうロアじゃないと理解しているのだ。前に身体を乗っ取られた時に見た──。
「……魔王」
セナは全速力で逃げ出す。だが、ロアのさっと振った一振りで彼女の近くの空間が断絶し、戦場に一瞬で巨大な渓谷が現れる。
破壊的だ……。だが、前の時は偽典ネグエルが乗っ取ったのではなかったか? セナは思う。そして同時に、通信がつながる。
『Legionより通達! 偽典ネグエルは別世界線にて補足! 干渉はない!』
エニグマだ。計算部門がやったんだ。じゃあ、これの中身は……?
「嗚呼」
その声には驚いた。
「……現世は……久しぶりか」
たった数言話しただけで、その中身が何なのかは分かった。
身体が勝手に、頭を下げたくなるような、生命の根源的な恐怖。
──それをきっと私たちはそう呼んでいるのだろう。
冷帝、と。
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