Chat.03 Vacant Room
【Chat Room Vacant Room】
◎迦楼羅天さんが入室しました
01:Keyser Söze
丁度来たな
02:理解屋
カルラ。遅いよ〜
03:迦楼羅天
この部屋なんですか?
招待がないと入れない部屋って──
04:Keyser Söze
学内ネットワークの隙間に作った
外からの干渉を受けない
05:理解屋
まあ、じゃ、本題から行こうか
なんでスピカの眷属が現れた?
06:迦楼羅天
その理由についてはさっきも言った通りですよ
僕にもわからない
07:Keyser Söze
理解屋が、知らないことがあるのを極端に嫌うということを忘れたのか
08:理解屋
とか言って、あんたも別にわたしに味方する気ないくせに
09:Keyser Söze
私は中立だ
今回の騒動は学内で起きた
ならば、生徒会が動かねばなるまい
10:理解屋
もしスピカに人質でも取られているのならわたしらは味方になれる
11:迦楼羅天
違う。スピカはそんなことをしない
12:Keyser Söze
それはお前が十三獣王と何らかのつながりを持つという自白と取っていいのか?
13:迦楼羅天
学内チャットでの書き込みは証拠として使えないはずだ
14:Keyser Söze
その通り。だがそれはあくまで決まりごとの話だ。その事実を裁判で扱うのと、私達が把握するのとでは話が違う
15:理解屋
でもさ、この反応を見るに、アレを出したのスピカとかカルラでは無さそう
16:Keyser Söze
証拠がないことについて私が意見を述べることは無い
17:理解屋
ぶっちゃけ、テミス級のリークが奥多摩の感知をすり抜けて突如現れたってのもきな臭いよね
18:Keyser Söze
学外のものが何かを仕掛けていると?
19:迦楼羅天
何かって……
20:理解屋
戦争だよ
21:迦楼羅天
なんだよそれ……
22:Keyser Söze
私は学内の規律を守ることにしか興味が無い
実際に学生の負傷があった。応援が間に合わなければあのひな鳥たちは死んでいただろう
罪の意識がないのならば、この部屋を去るがいい
23:迦楼羅天
……──
24:理解屋
仮に君があの太ももちゃんを気にしているのなら心配ない。わたしが面倒を見ているから
25:Keyser Söze
太ももちゃん?
26:迦楼羅天
太ももちゃん?
27:理解屋
ああ、浅倉シオンのことね
28:Keyser Söze
何故あだ名が太ももちゃんなんだ
すごいからなのか?
29:迦楼羅天
いや、どちらかと言えば細身だ
30:理解屋
気持ちは分かるけどそのキモ会話は外でやって
で、あの子にちょっかい出したらしいじゃん
証言は姫カットちゃんから貰ってる
31:Keyser Söze
姫カットちゃん?
32:迦楼羅天
姫カットちゃん?
33:理解屋
あ、その子はマジで姫カット
34:迦楼羅天
ああ。確かに接触した
だが、力を使うなと忠告しただけだ
なのに──
35:理解屋
タイミング良く、その力を使わざるを得ないような危機が訪れた、……って?
36:迦楼羅天
……そうだ
あれはスピカの眷属だが、スピカが呼んだものじゃない
第一、眷属だからといってゲートを通過せずにその場に召喚されるなんて話聞いたことないだろ
少なくともあの事件に関しては僕とスピカは関わってない
37:Keyser Söze
待て、十三獣王の一柱であるスピカとつながりを持っているのか?
38:迦楼羅天
端的に言えばそうだ
39:理解屋
今この場で問い詰めても意味が無いよ。あの幼女学長の権限でカルラはフェニックスに居る
40:Keyser Söze
学長が……?
待て……
ブラックミザリーに継ぐ十三獣王の2体目が既にこの世界に在るだと?
信じ難い──
41:迦楼羅天
信じ難いから、言わないんだよ
42:理解屋
まあわかった。今回のテミス騒動に関してはあんたの管轄外ってことね
43:Keyser Söze
乙女カルラ。信じ難いと言ったのを取り消そう。そうした因子は生徒会として把握しておきたい。この後でいい、聴取をさせてくれ
44:迦楼羅天
それは……構わないけど
生徒会の権力に屈するつもりは無い
45:理解屋
生徒会にwww権力www
46:迦楼羅天
え?
47:Keyser Söze
魔刃学園の生徒会はあらゆる学内規律を守るために活動している
それは、私自身誇りを持って取り組んでいる
だが、権力などない
第3掃除用具入れの鍵なら持っている
48:理解屋
草wwwwww
49:Keyser Söze
草に草を生やすなァッ!!!
50:迦楼羅天
でも裏で学園を操る生徒会の噂は色々聞いているけど……
51:理解屋
そりゃあれだね、生徒会長の影響だ
52:迦楼羅天
生徒会長
53:Keyser Söze
第50期生徒会長──折紙カナン
54:迦楼羅天
折紙……ってあのラタトスクのアンワイズ?
55:理解屋
それの兄貴だよ
今この学園で、最もパラディンに近い男
56:Keyser Söze
それはお前じゃなかったか?
57:理解屋
わたしは最も近い女の子( ơ ᴗ ơ )
58:迦楼羅天
あっはい
59:理解屋
ま、大枠わかったよ。問題は2つ
・テミスが唐突に出現したこと
・太ももちゃんの中に何か居ること
60:迦楼羅天
その問題を僕は解決したいと考えてる
61:理解屋
いいけど
浅倉シオンが万が一死んだら──
わかってるね
62:迦楼羅天
ああ。殺すつもりはない……
だが、アレが暴走すればその限りじゃない
十三獣王の力は生半可に使っていいものじゃない
63:理解屋
ああ、それも問題だね
今回の騒動で
厄介な問題が出来た
64:Keyser Söze
そうだな
──2人目だ
魔刃学園のアンワイズは
***
八神ライザという女は常識というものを軽視する節がある。
そのせいか、深夜1時に教員棟に忍び込むことも、学長の部屋に開錠魔剣を使用することも躊躇しない。
すぴーすぴーと気持ちよさそうに眠る、まるで見た目は幼女のような学長。
一説によると、強大な魔剣との契約において、老化を代償に取られたとの話がある。あくまで街談巷説の域は出ないが。
八神ライザは幼女学長のベッドの横のひとりがけソファに座り、少し彼女を見つめると、窓の外を眺めた。
「起きてるんでしょ、先生」
「狸寝入りがバレたの初めてだよ!」
瞬間、声の位置が変わる。いつの間にか八神ライザの向かい側のソファに腰掛けている幼女学長。ふぁと欠伸をするが、それすら本物かはわからない。いくら剣聖に最も近いと言われようが、学長のことに関しては何も知らないのだ。
「ね、幼女学長」
「ん〜?」
「あのテミス。先生の仕業?」
「違うよっ! なんでそんなことしなきゃなんないのさ!」
「あはは。かまかけてみただけ」
「いじわる」
「じゃあ一体、誰の仕業だと思う?」
「外部だろうね。──魔刃学園に仇なす何か。知らないけど!」
「適当な人だなぁ」
「適当くらいが丁度いいのさっ」
「仮の話。もし戦争を仕掛けられたら、やり返す用意があった方がいいと思いません?」
八神ライザはサイドテーブルに置いてあったグラス製のチェスの駒を手に取り眺めた。ナイトだ。
「それは、学内で軍事力を保持するということ?」
「そうは言ってないですって。仮の話」
「せんせい的にはナシ! 魔剣師は専門職従事者だけど、兵隊じゃないからね!」
「じゃ、幼女学長個人的には?」
「わたしは学生の主体的な活動を阻害するようなことはしない。それがモットー!」
八神ライザはそこで笑った。
邪悪とも純粋とも取れる、そんな笑顔だ。
「あっ、でもでも、ルールは守ってね! 校則に違反するようなチャットルームを立ち上げたり! ダメだよ〜っ!」
「──っ」
この女はどこまで知って──。そう考えたところで、これ以上は無駄だとし、八神ライザは部屋を後にする。
理解屋こと八神ライザは自室に戻る前に、ラタトスク寮の他の棟の屋上からメイン棟の屋上を眺める。
そこでは、手先が黒く変色し、大怪我を負ったばかりにも関わらず木刀を素振りする少女がいた。
諦めの悪い子だなぁ。頑張り屋は好きだけど。
浅倉シオン、彼女の中にある何か──。その不確定要素が今後何をもたらすのか、八神ライザは気にしていた。
これは、まだ深く検討していない考えだったが、ふと思い出す。
そういえば、終始、乙女カルラは浅倉シオンのことを「蛇使い座」と呼んでいた。
──蛇か。……まさかね。
そう内心で呟いて、彼女は寮の自室へと帰っていった。春期定期考査まで、時間が無い。
「さーて、お勉強でもするかな」
「ちょっと面白そう」と思っていただけましたら……!
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