168 二項対立
自分の中から、光のエネルギー、そして正のエネルギーがあふれていることを感じる。これは何を元にしているんだろう。刹那、私は考えた。そして合点がいった。無限に近い有限の試行に於いて私が経験した全ての思い出だ。
魔刃学園には楽しい記憶しかない。怖いことも辛いこともあったけど、楽しい事がそれを全部覆い隠した。私は魔刃学園が好きだ。たとえ牡羊座が手駒を養成する場所だったとしても、構わない。私には仲間がいた。
その事実だけで、私は立ち上がることが出来た。私の強みは何かを壊す強さだけじゃない。何かを守るために耐えることが出来ること、それが強みだ。
石頭で、岩みたいに頑丈で、私は負けないことが出来る。
最期まで立ち続けることが出来る、それはつまり、必勝だ。
『何か色々と考えているようだが、我に勝つ算段でもつけたか?』
そういうミーちゃんは私を淡々と見つめた。何か様子が変だ。ミーちゃんはもともとROOT-1999、私達の世界を破壊するために作られた存在だ。だが、彼女が真にそれを望んでいたかというと違う。六年前の災害も、操られてやったことだ。だとしたら、私を魔王に仕立てようとしたのだって──。
『気が付いたようだな、娘』
「あなた今、《冷帝》に操られているの?」
『気軽にあれの名を呼ばぬようにせよ。気分次第では我が粉微塵にされる』
「やっぱり、あなたの本心じゃなかったんだね」
『勘違いするなよ。我はお主を気に入っている。お主を使って世界征服でもしてやろうかとは半分本気で考えておった』
「じゃあそのもう半分は、後ろにいる人なんだね」
『それがもう「ヒト」と呼べるものなのかはわからないがな。アレはもう根源的な悪心に近い』
「私は今からあなたをたぶん、倒さなきゃいけないんだよね」
『純白のお主と漆黒の我、こんなに分かりやすい二項対立もあるまい』
「……本当はあなたを自由にしてあげたかった」
『ああ、我も、何にも咎められず、空を飛んでみたかったな』
──彼岸には、空が無いんだ。
そう言ったミーちゃんは私に向けて静かに腕を伸ばし、詠唱する。
『膨大質量──霹靂』
──PAAAAAAAAAAAAAAAAAANNNNNNNNNNNN!!!!!!
耳を引き裂くような音がして、耳朶に血がにじむ。一瞬にして膨張した彼女の腕が極大の質量を持って私を永遠図書館の壁に打ち付ける。
「がはっ……」
『まだ終わらんぞ──軋轢』
重い、そう感じた次の瞬間には身体が全方向から圧縮されているような感覚に襲われた。永遠に落下してゆくような身体の感覚に恐怖する。
そして、情報の檻たる、永遠図書館の壁が壊れ、荒野に投げ出された。
『もう終わりか。それで《冷帝》に勝とうなどと──』
「いつから私がそれを食らったと、思ってた?」
『……ほう』
極大に膨れ上がった大質量の腕と私の間に展開した永遠が、それを阻む。まだ未完成だけれど、防御には役立つ。
「戦いは、これからだよ、ミーちゃん」
『──かかか、小娘が』
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