152 リメンバーユー①
■SIDE:綾織ナズナ
なに、ここ。
あたしは身体中に目の前の折紙アレンからコピーした不刃流を張り巡らせたはずだ。基礎体力と耐久を上げ、そして飛んできた攻撃を眼前数メートルに三重展開した藤原イズミのアーツで反射しようと思った。
でも、意識が一瞬でぶっとばされた。
あたしが目の前の折紙アレンの最新の不刃流を解析する前に、あたしはどこかに飛ばされた。
意識が飛ばされたと思った。
でも、今自分がどこにいるのかわからない。
と、思っていたけど──はっと気が付いた。今自分は荒れた町の真ん中にいる。火炎と粉塵でむせてあたしは咳き込んだ。ふっと吐いた息が黒い霧になった時、これが現実でないとわかった。
でも、これが不刃流? こんな広域の幻影操作なんて、妻鹿モリコの機械仕掛けの神様くらいしか知らない。しかもあれだって魔剣の多重使用によるものだ。
折紙アレン……成長し過ぎでしょ。
でもって本人はどこにいる? ここって何をモチーフにした空間なんだろ。わからないのが唯一の不安だ。でも、この場所、見たことがある気がする。
見たこと……、何で見たんだろ。古い記憶で見たんだ。
小さい時。小学生の時だ。あれは、テレビの中──……。
あたしが自分の記憶の奥底に沈んだその光景に気が付き始めた時、視界の端に闇が通った。暗闇だ。あれは、見間違えるわけがない。
六年前、東京を半壊させた災害、龍王。真の名を千里行黒龍。
ここは六年前の西東京だ。
「いんやー、っぱ、でかいよねぇ」
そんな軽い調子であたしの隣に人が立った。濡羽色のショートヘア。頬に傷。パーカーにサルエルパンツというラフな格好。それに似つかないほど巨大な剣。その剣はさっきまであたしと喋っていたダーインスレイヴだ。
ダーインスレイヴを過去に所持していたのは一人だけだ。ヴァチカンの地下から封印を解いて直接引き抜いたその人。
「降神、マユラ、さん」
呼びかけるとそのお姉さんはふよっとこちらを向いた。
「おや? こんにちは少女。君は魔剣師関係者?」
「あ、いえ。その、有名人なのでテレビで観ました」
あたしはふいに嘘を吐いてしまった。魔剣師かどうかを問うときに目が一瞬ギラついた。もしもあたしが魔刃学園の、しかも牡羊座の味方なのだとすれば、消されるかもしれないと一瞬で察知した。例えそれが幻影だとわかっていても。
その返事に、降神マユラは、快活に──笑った。
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