151 開戦
■SIDE:綾織ナズナ
『この魔剣は「本物」というものの信奉者だ。この魔剣に本物を捧げられるのならそうせよ。次にこの剣を引き抜く者が、最も真価を発揮した状態でその所有者となることが出来る』
獅子座が続く。
『本物とはつまり真実だ』
魔剣が言う。
『真実を見通す目を持たぬものでも持つ、唯一の真実。それは愛だ』
門が言う。
『愛を捧げろ! さあ! さあ! その剣で愛の為に──』
ダーインスレイヴは嘆く。
『──心臓を、貫け』
獅子座がそう言った。門と剣が交互に話している最中、あたしが見つめていたのはただひとり疲れ果てて眠る少女だった。それからふと折紙アレンを見ると、彼も同じ目をしていた。そして目が合う。
ああ、あたし達ってバカだな。おんなじこと考えてる。
瞬間、折紙アレンがあたしに目にも止まらぬ速さで体当たりをする。あたしはそれに対応が間に合わず、不倒門まで吹き飛んだ。
「っ──」
「すまないな。俺はシオンの為なら何でもすると誓ったんだ」
彼は臥せるあたしから虚構剣を奪う、だけどあたしは即座に千原ロナンの竜変化をコピーし、足だけを竜にして、質量膨張により折紙アレンを吹き飛ばす。
流石に不刃流の使い手、着地は綺麗だ。虚構剣も彼の手中。
「お前に真実の愛を証明できるか。シオンの親友を無駄死にさせるわけにはいかない」
「黙ってよ。あたしは真実の愛を試されてもそれを果たせる。その自信がある。無駄死にって勝手に決めないで。あとあたしだってアレン君の事親友だって思ってるんだから!」
ふたりともが、同時に思っていた。虚構剣で自らを貫き、真実の愛を供物として捧げ、最高の状態でこの魔剣を目覚めたシオンに託したいと。そして、ふたりともが、相手に生き残って欲しいと思っていた。
これが悪魔の甘言であったとしても、この愛だけは、証明しなければだめなんだ!
「……ならこうしよう。模擬戦のルールで勝った方がこの剣を使っていいことにする。生き残った方は、死力を尽くしてシオンを支えると」
「うん、いいよ。あたし、乗った。──試験以来だね」
ふたりともが腕を構える。剣のない二人の魔剣技勝負。
これがあたしたちの、最期の喧嘩だ。
「幻影への変身。形態移行──鮮烈なる記憶の執行者」
これまで出会った総ての魔剣技を以て、勝つ。
「不刃流無限式──終わりのない舞踏会」
こうして、あたしと彼の未来を決定づける闘いの幕が上がった。
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